告白

SINKA

第1話

カラン。

茶色く、少し古びた扉が開く。


「いらっしゃい。ん?アキトか?」


恰幅の良い店主が、顔見知りの少年を出迎える。

少年は少し俯いたまま、足取りは重くゆっくりと店主のいるカウンターに座った。


「シンさん、俺はどうしたら良いんだろう」


少年は、唐突に店主に言葉をぶつけた。

しかし、店主には心当たりがあった。


この少年は、近所に住む高校3年のアキトだ。

駅の近くにあるこの店は、一部の高校生の溜まり場にもなっていた。


アキトは、その中でも店主とよく話をする一人でもある。

アキトは、この数ヶ月ある少女に恋をしている。


店主は、毎度その相談をされていたのだ。

しかし、今日はそんなアキトの様子がおかしい。


明らかに落ち込み、表情は絶望に包まれていた。


「はいよ。アイスコーヒー。っでどうした?最速フラれたか?」


店主はいつものように、アキトにアイスコーヒを出す。

その表情から、察するに、思い切って告白して破れたのだろうと予測した。


アキトは出されたアイスコーヒーを、一気に飲み干した。

そして、店主にゆっくりと事情を話し出した。


「今日さ、たまたま彼女の家の近くを通ったんだ。そしたら、大きなトラックで荷物を運び出していたんだよ」


店主はすぐに察した。

高校生にとって、ただでさえ隣街の高校に通う女の子の存在は遠いに違いない。


それが、さらに引っ越してしまうとなれば、今までにほとんど接点がなかったのなら、それは永遠の別れにも感じるだろう。

しかし、アキトはその少女とこの喫茶店で出会っている。


店主もその女の子の存在を知っている。

それもあって、アキトは店主に相談を持ちかけていた。


「あの子、高3なのに引っ越すのか?」


店主は、そのまま質問を投げかけた。


「詳しくわわからないよ。この前来てた時も、シンさんにもそんな話ししてなかったろ?」


アキトの目は、真っ直ぐに店主に向けられていた。

それは、もしも知っていたら今にも店主に飛びかかりそうな迫力があった。


店主は、実際にその子から話は聞いていなかったが、もしも知っていてもこの迫力では言えなかっただろう。

それほど、アキトの目には凄みがあった。


「アキトは、何も聞いていなかったのか?」


店主は、素朴な疑問を投げかける。

アキトは、軽く頷きながら話しはじめた。


「直接は聞いてないよ。でも、あくまで噂だしそんなの関係ないと思ってるけどさ」


アキトは、どこか話しずらそうに店主に話しはじめた。


「ユキちゃんの父親がさ、あくまで噂だけど、どうやらあっち系の人らしいだ」


「まじか」


店主は突拍子もない話しに、いささか驚いてしまった。

ユキちゃん自体は、どこにでもいる普通の女の子だ。


もちろん、親がそうだからといって本人には関係はない。

店主自体も、そう思ってはいる。


世間は、なかなか難しい一面がある事もある。

アキトが、数ヶ月告白を悩んでいた根幹はもしかしたらその噂が一因だったのかもしれない。

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