4th Season
爆発
第48話
年も明け3年生になろうというのに、シンは相変わらず新聞配達のバイトを続けていた。
本音ではそんなことをやりたくはなかったが、家族みんなで美味しい食事をするには仕方がないと諦めていた。
ユウや友達に、バイトのことはまだ内緒にしていた。
しかし、そんなシンの我慢の限界を超える事件が起きる。
春休みのある日のこと。久々にユウと2人、できたばかりのショッピングモールに遊びに行った。
2人でチャリに乗りながら、楽しくくっちゃべっているとき。
ふと通ったパチンコ屋の前で、シンは親の車を見つけてしまう。
毎日見ている車。見間違えるはずもない。
その当時、シンは毎日新聞配達をしながらも、まともにお小遣いなんて貰っていなかった。
そんなシンに、親がパチンコ屋に行っているという事実は信じられないものだった。
貧乏だし、家族みんなで頑張っているなら仕方がない、と思っていたシンには許せないことだった。
怒りと虚(むな)しさが襲ってきた。
「シンどうしたの? 恐い顔して?」
「んっ? なんでもねぇよ」
とっさに笑顔を作って、ごまかした。
ユウには関係ない。シンは遊んでいる最中は気持ちを顔に出さないようにした。
それでも、ユウにはいつもと違うシンを見破られていた。
家に帰る前に、いつもの白い橋に向かった。
真ん中のベンチに座り、景色を眺めていた。
「シン…」
ユウはシンの肩に寄り添った。
「私には言いにくいのかもしれないけど、悩みがあるならいつでも言ってね。頼りにならないかもしれないけど、私はシンの彼女なんだからさ」
シンは少しうつむいて言った。
「…ありがとう」
「ほらっ、元気出して。こんな美人の彼女が隣にいるのに、そんな暗い顔してるなんて失礼だよ」
ユウは立ち上がり、ほっぺを膨らませた。
「そうだな」
シンはユウの顔を見てニッコリした。
しかし予想外の答えだったのか、ユウは顔を真っ赤にして後ろを向いた。
「なっ、なに言ってんの? なんもでないからね」
「本音を言ったまでだよ」
シンはそっと立ち上がり、後ろから、抱きしめるでもなくユウの背中に顔を埋めた。
「いいよ」
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