世界最弱のSランク探索者として非難されていた俺、実は世界最強の探索者
木嶋隆太
第1話
静かな診察室。
白いカーテンが風で軽く揺れている中、一人の女性が大きく膨らんだお腹を優しく撫でながら、診察台に横たわっていた。
地方の病院にいた医者が、彼女のお腹にそっと機械を当て、いつもの定期健診を進めている。
「天草さん。赤ちゃん、元気そうですね。じゃあ、最後に魔力測定を行いますねー」
穏やかな空気の中。医者が測定器を操作し、モニターに目を向けた。
魔力測定。それは、ダンジョンが現れ、探索者という職業が一般化した現代ではごくごく当たり前の行われる測定だった。
まさにその時だった。
測定機に表示された数字は、100に到達する。
「……え? え!? な、なんで測定器の数値が上限に――!?」
ベテランの医者は困惑した声をあげる。それは彼だけではなく、看護師や女性も目を見開いている。
そして、その場にいた全員が驚いていたその時。
測定器から異常な音が響き渡り、測定器が大きく震え、ライトがチカチカと点滅し始めた。
「ま、まずい!? 測定器が耐えられない!?」
「きゃあ!?」
医者が叫んだ次の瞬間。
測定器が、火花を散らしながら煙を上げ、爆音を響かせた。
咄嗟に医者は女性を庇うように動いた。
「せ、先生、大丈夫ですか!?」
「は、はい……! す、すぐに探索者協会に連絡を! 最新の測定器を手配するように依頼をお願いします!」
医者が看護師に指示を出すと、慌てたように走り出す。
診察台の上にいた女性は困惑した様子で視線を向ける。
「せ、先生これって……どういうことですか?」
女性の問いかけに、医者はどこか興奮したように答える。
「探索者のランクは、公平を期すために魔力量で決まるというのはご存じですか?」
「は、はい……あまり詳しい数値とかは知りませんけど……」
「100、というのはですね。……現役探索者の誰も到達できていない領域……世界最高の数値、なんですよ」
医者は笑顔とともに女性に言った。
「……つまり――あなたの赤ん坊が、世界最高の……Sランク探索者ということです!」
その後、探索者協会から派遣された者によって、測定器の故障ではないことが確認されると、瞬く間にニュースは広がり、世界は驚愕に包まれた。
『世界初の快挙! 国内最強、いや、世界最速にして最高のSランク探索者爆誕!』
『これまでにない規模の魔力量! 日本の未来を担う英雄が、まもなく誕生!』
女性は都会の病院へと移動することになり、多くのメディア関係者や警備の者たちに囲まれる中で、その出産は行われた。
無事に出産が確認されると、探索者協会の幹部たちはまるで新しい時代の幕開けを告げるかのように、その興奮を隠すことなく語り始めた。
『我々日本は、未来を担う探索者を迎え入れました。これは新たな希望の象徴であり、世界に誇るべき瞬間です』
政府関係者もそのニュースに即座に反応し、記者会見が開かれる。
閣僚たちは神妙な面持ちでマイクに向かい、未来の英雄を支援するための国家的な支援体制の構築を発表した。
『彼が安全に成長し、日本、そして世界の平和を守る力となるよう、政府として全面的にバックアップしていく所存です』
日本中の熱気は止まらない。
著名な芸能人やスポーツ選手、インフルエンサーといった発信力を持つ人たちもSNSを通じて次々とメッセージを出していく。
様々な立場の人たちが、その誕生を祝っていた。
日本中、そして世界中が彼の存在に夢を重ね、無限の希望を抱いていた。
こうして、世界最速のSランク探索者――天草晴人(あまくさはると)が誕生した。
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