僕をフッた美少女がなぜかついてくる

妄想殿下

第1話

「一目惚れです。ぼくとお付き合いしてくれませんか。」

「いやよ。私、あなたの事、何も知らないんだから。」


ぼくは高校に入って、学年一の美少女と言われる園山そのやま風香ふうかさんに一目惚れした。

中学のときにも誰かと付き合ったことのないぼくだが、勇気を出して告白したのだ。


園山さんは、身長165cm、体重550トン、巨体がうなるぞ空とぶぞとこういうわけである。

いや、そんな訳はない。

女性の体重はきくべきではないが、ストレートロングヘアの黒髪は荒れ一つなく、

目は少しツリ目だが、切れ長で美しいし、鼻立ちもはっきりしている。

グラマーではないが、全身バランスが取れたスリムな人である。


でもまあ、フラレたわけだが……。

噂によると、4月の始まりからこの5月中旬まで園山さんが受けた告白はおよそ50人。

平均1日で約2名。瞬間最大風速は1日に5名が撃沈したと言われている。

アイアンサウンドボトムでももう少し手心があったのではないだろうか。


しかし、言われてみれば、園山さんのおっしゃることもわかる。

自分のことばかり考えて、相手の気持ちを考えないのはよくない人間のやることだろう。


「わかりました。お時間を取らせてすみませんでした。」

「はい。じゃあね。」


まあ、初恋というにはあまりにもぼんやりしていたが、この失敗を糧にさらなる成長をしよう。

そう決意して、教室に帰ろうとする。


まって、なんで一緒に歩いてるのこの人。

今、ぼくのことフッたばっかでしょ。気まずくないの。


「あの、なんで一緒に教室へ帰ってるんですか。」

「何言ってるの、私だって教室に戻らないといけないでしょ。」

「そうだけど、今フッた人と一緒に歩くことになって気まずくないの。」

「フラレたのは貴方の都合であって、私が気にする理由がないわ。」


そうかもしれない。

ここはぼくが気を遣うべきなんだろう。

じゃあ、園山さんが先に行ってから帰るか……。


なんで止まってるの。早く帰れよ。

気まずいなんてもんじゃないよ。

意味不明空間が誕生した。意味不明空間では、混乱モンスターのパワーが3倍になる。


「あの。」

「何してるの、早く帰りましょう。」

「先に帰っていただいてもいいのですよ。」

「なんで。」

「なんでって……。今、私、あなたにフラレましたよね。」

「そうよ。当たり前じゃない。」

「じゃあ、一緒に歩いてたら気まずいでしょ。」

「それはあなただけでしょ。」


何いってんのこの人。全然、話が通じてない。

日本語喋れてる?


「I wish you that you will go classroom first, Please Leave me here.」

「なんで英語で話し始めたの。」

「いや、こっちのほうが通じるかと思って。」

「ふうん、日本語モードのときに英語で話しかけられると戸惑っちゃうわ。」


あきらめて歩き始めると、また横を歩いてくる。

なんなんだ、こいつ!こええよ!


「あの、フッた人といつもこうやって校舎に戻っていたのですか。」

「いいえ、そんなことするわけないでしょ。」


なんでなんだよ!

なんでそこだけ常識的な回答が来るんだ!

なんで、この人なんでそんなこと聞くの。フッた相手と一緒に歩いたら気まずいじゃない

みたいな顔してんの。

It's me!ぼくがフッた相手でしょ。記念すべき51番目でしょ。

栄光の背番号だよ。


「え、ぼくもフラレましたよね。」

「知ってるわよ。だって、断ったの私ですから。」

「え、会話の流れ読めてる?」


急に会話の流れが破綻しない?なんで?

全体除去?


ぼくがずっと頭の上に?を出しながら教室に帰ると、園山さんは何事もなかったかのように

自分の机に戻って座った。

ぼくも、自分の席に帰ってくる。

前の席の友人、陽田茂通ようだしげみちが話しかけてきた。


「お、帰ってきたか。それで?首尾はどうだ。と言っても、その様子じゃ、フラレたようだな。」

「いや、うん、普通にフラレたと思う。」


そのはずなんだけど、おかしいな?

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