第2話 胃管という名の拷問器具
【10月5日(土)】
15時頃から入院生活は始まりました。
救急病棟からベッドに寝転がったまま入院病棟に移動した私は、面会制限があることからその場で妻と離れ離れになります。
未だにコロナの影響は色濃く残っているのですね。
現在義母が大腿骨頸部骨折で別の病院に入院していますが、その病院は特に面会制限がないので病院によるとは思いますけど。
妻と離れ離れになる瞬間の、涙を拭う妻の表情は一生忘れません。
逆の立場だったらどれほど心配だろうかと考えると、腹痛は続いていましたが、それより妻に対する申し訳なさが込み上げてきました。
それと同時に、『絶対直して早く退院してやるぞ』と意気込むこともできました。
入院が始まると、服を入院着に着替えたり点滴をしたりと少しだけ忙しい時間を過ごし、そこからしばらくベッドで寝転がっていました。
この時点で丸1日飲まず食わずの状態でしたが、入院中はもちろん絶飲食のため、飲むことも食べることもできません。
先が思いやられるとは思いながらも、点滴のおかげか空腹感はありませんでした。
そして17時頃、地獄の胃管挿入の時がやってきます。
突然ひょこっと私のベッドにやってきた医者と看護師。
何事かと思っていると医者が、「ちょっとこの管を鼻から胃に通して減圧しますね〜」なんて軽いノリでやってきました。
腸閉塞になった患者は保存的療法として、胃管を胃まで挿入し、胃腸の内容物を排出(吸引)することで減圧を行うらしいです。
そうすることで、腸閉塞が改善されることがあるようです。
医者の話を聞いた私は思いました。
(……ん? その割と太めの管を鼻から胃に?)
え、だってそれもう胃カメラと同じちゃうん?
そんな軽いノリでやってええやつなんそれ?
そんな不安を抱えながらも、まあ採血と同じくらいのノリでやってきたし大丈夫か、と胃管の挿入にチャレンジしました。
そして鼻から胃管が挿入されてビックリ。
え、めちゃくちゃ辛いやんこれ‼︎‼︎????
「まずは喉を越えないといけないですからね〜。ゴクンと飲み込んでくださいね〜」
呑気にそんなことを言う先生に若干苛立ちながら、頑張って飲み込もうとするのですがどうしても上手くいかず、その時は失敗。
医者と看護師は一旦撤収していきました。
これはヤバいやつや、成功せんかった上にまた今の苦しみを味わわなければならんのか、と絶望しました。
そして追い打ちをかけるように別の看護師から伝えられる衝撃の事実。
胃管は一度挿入したらしばらく抜かないと言うのです。
え、だって喉を通って胃まで行く管がずっとそこにあるって吐き気とかヤバいんちゃうん?
そんなん拷問、地獄以外の何物でもないやんどうしてくれるんそれ、とプチパニックになってましたwww
てかもっと説明してくれよ医者、いやまあ説明されたら怖すぎてチャレンジできんかったかもしれんけども。
そして時刻は23時頃、医者が別の患者の手術を終え再び私の部屋へやってきました。
先程はベッドの上で胃管挿入を試みましたが、私の嗚咽が酷すぎたのと、時間が時間で大部屋に入院していたこともあり処置室に移動しての胃管挿入となりました。
それから10分以上は胃管を挿入する決心ができませんでした。
これは本当にバンジージャンプ飛ぶ前と一緒だなと思いましたねw 飛んだことないけど。
医者からは「また10分後くらいにしますか? その間に気持ちを整えて--」と言われましたが、ここでビビってはもう挿入できないかもしれないと考え、意を決して胃管挿入をすることにしました。
そして今回も中々喉を越えてくれない胃管、必死にゴクンと飲み込もうとするもそれを拒む私の喉、何度もゴクンを繰り返し、ようやく喉を越えました。
この間、2度程吐きました。
吐くだろうと思っていたので手に容器を持って望んでいたので胃液を撒き散らすことはありませんでしたが、普段からどれだけ気持ち悪くても吐くのが大嫌いでできるだけ吐きたくない私が2度吐くというのは相当なことです。
吐きながらやっとの思いで挿入した管を、そこからずっと入れたままにしなければならないというのは精神的にもかなりきつかったです。
そこから1日半程胃管を挿入したまま過ごし、その間にまた3回くらい吐きました。
まだ若いということもあって、年配の方よりも嘔吐反応が強いことも原因だったようです。
挿入中の生活は本当に地獄でしたね……。
お腹を切る手術を控えていましたが、胃管が苦しすぎて手術に対する恐怖を感じている暇も無く、とにかく早く手術してくれと思ってましたw
手術が終わったら胃管は抜けているという話だったので。
⇨次回、最終話、全身麻酔の手術へGO⭐︎
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