ご近所付き合いって、難しいし、相性もある

白鷺(楓賢)

本編

ご近所付き合いというのは、思っている以上に難しい。特に、僕の両親を見ていると、その難しさがひしひしと伝わってくる。両親は渋々ながらも、なんとか周囲に合わせているけれど、本当のところはしんどいんだろうなと思う。特に悩ましいのが、庭の木の手入れ問題だ。ご近所からは「木が伸び過ぎている」と苦情が出ることがあるが、両親には力仕事ができないため、なかなか対応できない。


僕も、なんとかしたいと思ってはいるが、精神的に不安定な日も多く、体を動かすことができないことがある。たまに、枝を切るくらいはするが、それ以上のことは業者を呼ばなければどうにもならない。しかし、業者に依頼するにはそれなりのお金がかかる。両親は定年していて、持病の治療で通院が続いていることもあり、収入は限られている。少ない年金と限られた予算の中で、生活をやりくりしているので、木の手入れにお金をかける余裕なんてない。


そんな状況だから、時々ご近所から言われる「手入れをしてくれ」という言葉は、正直、僕たち家族には重荷だ。もちろん、自分たちができる範囲で対処したいと思っているが、実際にはできないことが多い。そんな状況を察してくれる人もいれば、そうでない人もいる。


さらに厄介なのは、外出時や庭仕事をしているときに、ご近所の視線や言葉を感じることだ。例えば、僕や両親が家を出るときに「また出かけるのか」とか「手入れが遅れているんじゃないの?」と言われることがある。何気ない言葉かもしれないが、僕にとっては重く感じる。時には、ご近所同士で話しているのが聞こえると、僕たちのことを話題にしているんじゃないかと不安になることさえある。


僕にはB型事業所に通うという仕事があり、精神障害も抱えている。でも、そのことはご近所の人たちは知らない。表面的には何も言われないが、時折見せられる鬱陶しそうな顔や、無言の圧力が苦しい。特に、僕が家にいる時間が長いと、「家にばかりいて、何をしているんだろう」と思われているんじゃないかというプレッシャーもある。


両親も僕も、病気や生活の困難さを抱えながら暮らしている。父も母も、定年退職してからは収入が減り、通院にかかるお金や生活費が大きな負担になっている。そんな中で、ご近所からの期待や要望に応えるのは難しい。できることなら、もう少しご近所が無関心でいてくれたら、気が楽になるのになぁと思うことがある。


でも現実はそう甘くない。僕たちが何もできないことで、周りに迷惑をかけているかもしれないという罪悪感もある。何とかしようとは思っているけれど、どうすることもできない現実がそこにある。精神的にも肉体的にも余裕がない僕たちにとって、何かを「する」ということが本当に難しいのだ。


ご近所付き合いというのは、単なる人間関係ではなく、生活そのものに直結してくる問題だ。自分一人の力では解決できないことも多い。何もかもが思うようにいかず、歯痒さを感じる日々が続いているが、それでも何とかやり過ごしていくしかない。


少しでもご近所が僕たちの状況に気づき、もう少しだけ寛容になってくれたら…そんな願いを持ちながら、今日も過ごしている。

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