Sの手紙

テトロドトキシン3.9

Sの手紙

昔付き合っていたSから手紙が届いてた。

ここで読ませてもらおうと思う。

[K君へ。]

彼女の癖のある文字。正直友人のおふざけだと思っていた。

[お久しぶりです。元気にしていますでしょうか。]

本当に久しぶりだ。最後にあったの数年前だもんな。Sも元気かな。

[こちらは元気にやらせてもらってます。K君がいないのは少し寂しいけど、頑張ってます。]

良かった、元気そうだ。もう新しい彼氏とかできたのかな。

[今回、謝罪のために手紙を書かせてもらいました。]

謝罪?なんのことだろう。もし謝るのならこちらの方だ。

[何も言わずに喧嘩別れになってしまったこと、そして今までのことです。]

そうだ、別れてほしいってSが言ったから別れたんだっけ。あのときは二人共が嫌い合ってた。せめて理由を聞きたい俺と、一方的に離れていくSがすれ違ってた。

[何も言わず、説明もせず別れようと一方的に言ってしまい、本当にごめんなさい。]

そんなことか、別に気に病むことはない。もう吹っ切れた。

[その時はどうしても言えない理由があって、やっと今すべて終わらせてきました。]

その理由とはなんだろう。やはりそこが今でも気になる。

[ほんとは今でも言いたくないのです。今よりも嫌われてしまうかもしれません。]

そんなことはない。いつまでも、どんなSでも俺は愛している。あのときはひどいことを言ってしまったが嫌いになんてなったことはない。

[それでも知りたいというのであれば、二枚目の手紙を読んでください。]

何だ、そんなに言いたくないのだろう。しかし勇気を出して手紙をよこしたのだ、

読まないわけには行かない。2枚目をめくる。


[多分K君なら読んでくれてると思う。優しいから。]

わかってた、と言わんばかりの一文。頭が上がらない。

[ここからは、硬い感じの言い回しも、やめようか。]

普段の口調に戻ってる。妙な緊張感が走る。

[実は振ったあと、海外へ行ってたんだよね。]

そうだったのか、留学かな、オーストラリアとか言ってみたいって言ってたもんな。

[留学とかじゃなく、家の理由だったんよ、言いづらくてさ。]

そりゃそうか。転勤とかかな。でも別に言いづらくはないよな。

[実はね、家に借金があったんだ。]

初めて知った。家にお邪魔したときもそんな感じはなかった。衝撃だ。

[おじいちゃんが残してったやつ。それでね、家族で出稼ぎに行くことになって。]

そんな事になってるなんて。相談してほしかった。何も知らない俺が憎い。

[私もね、色々働いたんだ。はじめは軽作業とか、事務とか。]

S、英語できたもんな。両親ともに教師だったっけ。だからか教えるのもうまくて。

[でもだんだん周りの雰囲気が変わっていった。]

不穏になってきた、続きを読むのが怖い。


[私の言ったとこ、少し治安悪くて。]

やめてくれ。


[強盗とかにもあった、店長とかがなんとかしてくれたんだけど。]

相談してくれれば。


[そのうちもっと稼げる仕事に、っていくうちに]

待ってくれ。


[自分の体を売ることにしたの。]

俺が気づいていれば。





















[助けて、って声が出た。]





















俺が気づいてあげられれば。





















[でもね、お金がいっぱい稼げるの。]


ごめん


[その御蔭で借金も返せて]


ごめん


[日本に帰ってこれた。]


ごめん


[でも私は壊れちゃって]


ごめん


[家に引きこもるようになっちゃって]


ごめん


[K君にあいたいって思っても]


ごめん


[外に出れなくって]


ごめん


[汚い自分が嫌になって]


ごめん


[何もかも嫌になって]


ごめん


[自殺しようとしたんだ]


ごめん


ごめん


.........


[それでもね、やっぱり会いたいって思うんだ。]


俺もだよ。


[だからね、迎えに来てほしいんだ。]


いくらでも、どこへでも行くよ。


[多分K君は汚くなった私なんか嫌だよね。]


そんなこと無い、ずっとずっと愛してる。


[それでもさ、期待してるんだ。]


......


[K君がね、来てくれるの。]


当たり前だろ。


[夢を見るんだ。]


...どんな夢だい?


[K君に嫌われる夢。ひどい言葉言われて、そのままどこかへ行っちゃう夢。]


...ひどいな、そんな事するはず無い。


[毎日、毎日見るの。]


...ずっと俺のことばっかだな。


[もう嫌になるくらい。]


...そっか。


[...だからね、そろそろ限界なんだ。]


......なにがだい?


[会いたい、って気持ちが抑えれれないの。]


......俺もだよ。


[汚くなった私でもいいなら迎えに来てほしいな。]


,,,どこに行けば...会えるのかい?


[昔よく遊んだ公園。ブランコの前。これから毎日、夜に待ってるから。]


...今は夜の7時半。今からなら8時にはつくだろう。


いかなきゃ。


[多分無理な話だよね、ひどい振り方して、喧嘩別れみたいだったもんね。もう嫌いになってるかな。]


そんなことはない、準備をしながら続きを読む。


[でも、もしこの手紙を読んですこしでもわかってくれたのなら、もし許してくれるなら、頑張って外に出て待ってるから。]


すぐに行くから。俺も誤りたいんだ。さんざんひどいこと言ってごめん、嫌いだって嘘をついてごめん、無理に聞き出だそうとしてごめん、何もできなくてごめん。

謝らなくちゃいけないことがたくさんあるんだ。だから。


今、行くよ。






[あのとき言えなかった言葉を、ここで言わせてください。]






[愛してるよ]






[K君、助けて。]






[いつまでも待ってるから。]






                                  [Sより]

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