ホロらいふ~白と金~~勇者アキと魔王ヤゴーの冒険譚~

@h1229ryo158

第1話

叫んだ。


魔王は闇の中にあって、光の照る無粋な気まぐれを叫んだ。


「己!白銀ノエル!!許さんぞ。貴様だけは絶対に許さん〜!!!!」


魔王城に木霊して行く最期の咆哮。魔王は今、完全に倒され、ノエルはそこに突っ立ったままだ。


そこに、西の踊り子アキ・ローゼンタール、雪花ラミィ、そして、天音かなたの四人が、全身全霊で勝利の雄叫びを上げている。


其の雄叫びは、魔王の断末魔を退け、世の中は平穏に戻った…のだった。


時は斯くして巧妙に覆い隠される。


無情にも、程々にも、光と闇の対比は、この世界の縮図其のものであったーーー。


〜〜時は遡る事、3年前〜〜


「どう言うことなのら!??ルシファーの裁判を始めるって!!???」


「どう言うことも何も無い。彼の小娘は、この国で唯一、姫殿、貴方の術式で守られたこの"第四の災厄"にあっても、倒れ臥したマリンの下にいた唯一の証拠。どう足掻いても、彼女が救済される未来は見えない。其の…言いづらい事なんだが、姫よ。偶には、お義父さんと呼んでくれないか。」


俯き加減に珍妙な間を取るルーナ姫と、其の義理の父親、魔王。


誰しもが絶句する内容の大喜利を考えては、永遠に暇着かないそんな絶望の終点駅。


そんな、終電すら逃した掛け替えのない恐怖ホラーの中で、確かに救いとなる主は現れる。


「やい!魔王!!ルーナ姫を離せ!!!お前の執拗な圧政には、民草はみな、うんざりして居るんだ。」


魔王「ほう…では、君が、今回の真犯人を知って居るとでも言う気かね。」


「この先、永い事関わる羽目になるネクロマンス事変について、知り得て居るのだろう。」


アキロゼ「人生半分次世代。私がやった。」


一瞬の沈黙。そして、城中に木霊する大きな笑い声が起こる。


魔王「まさか、光・の・皇・子・でも無いただの一介の踊り子である君が、一体どんな誘惑を重ねたと言うんだね。教えて貰おうか。其の身体と悲鳴で。」


「ちっ…野心家だと思って来てみれば、ただの変態か。これでは、まともな交渉もできそうに無いな。協会こっちは、頼みの綱であるルシファーへの魔力供給停止について、貴方方の魔力干渉障害ジャミングがあったと考えている始末。このままでは、埒が開かない。今すぐにでも、切り伏せてやろうか。」


躙り寄る魔王と、魔力で生成した光を、剣を取るアキロゼ。


両者、間合いを詰めて、いざ尋常に、勝負かと思いきや。

「ちょっと、待ったのら〜〜〜!!!!」


割り込みの一声。否。特筆すべき項目も何も無い純粋な静止の謳い文句だけがそこにあった。


「良い加減にしろ。ここはお城の中。やるなら中庭とか噴水広場とかにすれば良いのら!!もし、万が一、この城の浄水機能に支障が出たら、お前達の所為なのらね!!!!」


其の言が効いたのか、大きく項垂れる魔王とこれ未だやる気マンマンの西の踊り子アキ・ローゼンタール。戦力差は望外の程、圧倒的な迄の魔力を宿す魔王は、頭を垂れ、いかんせんまだまだ修行不足な女勇者アキロゼは背筋よく、下に睨み付ける態度だ。


「降伏するか。魔王とあるまじき醜態。今、ここで闘え!!」


カチンと胸に来る情動も去ることながら、何よりも、この小娘の不遜な態度を軽々しく思えないのも事実。この女性は、会った事もない女マリンについて、どこまで自分を曝け出す事ができるだろうかと、ふと疑問に思った。


魔王「そこまで言うなら、そうしようじゃ無いか。どれ、先ずは、場所を変えよう。何。特段面白い物ではない。ただ、先の災厄の際に、そらと力を合わせた賜物だ。」


言うと、魔王は、闇魔法で城の一室全体を覆い、時空を歪ませながら、中庭に移動する。


魔王「ほう。確かに姫の言う通り、日差しもよく通って居る。ここなら、ハンデもくれてやる必要は無い。思う存分、行儀をくれてやれると言うもの。」


「お前、今に後悔するぞ。」

アキロゼはそう言い放つと、持っていた光の礫を剣に変え、握り締めると、大きく上段に構え、こう詠唱する言い放つ。


「認めるは、闇。病みとし病まぬ世界の救済を此処にして、お前の断頭台は、今、光の中!!」


'''月光破断・天照の騎士アマテラスルーナイト'''


ピカーと光り、確実に剣から野太い光の束へと変える執念、斯くとあるまじきか。闇魔法を使う魔王に向けて、一直線に走る!!


光は、一直線に魔王を包み込むと、魔王の肉体、其の闇のコーティング武装の最外層を綺麗に取り払う…だけだった。


魔王「下らん。」

魔王が、これまた類稀なる闇魔法で繰り出したのは、大きな闇の掌。そして、アキロゼに平手打ちをぶつけると、そのまま極大の掌で握り締めてしまった…!!


「ふっぐぅぅぅぅぅぅぅ」


苦しそうに悶え苦しむ女勇者アキロゼ。

明らかに病原菌に侵されていると見られる斑点が身体の各所に滲み出る。


それもそうなのだ。闇魔法は言い換えれば病・み・。又、其れは、使う際のリスクを承知の上で、極々低音の有りと凡ゆる薄・い・層・を操る事になる。自身の絶対の自信と、医学的見地をもって、初めて十二分に操れる得意な属性なのである。


闇魔法は、西の踊り子アキ・ローゼンタールの身体に吸収されながら、其の勢いを、更に、圧縮して行く。


ボキンボキンと肋骨の数本折れる音がしながら、血反吐を吐く西の踊り子アキ・ローゼンタール。

次第に、闇は、小さくなり、病み程にも目に見えなくなった後、酷く不気味なオーラとして、西の踊り子アキ・ローゼンタールの周りに巻き付き始める。


全身をボロボロにされた女勇者アキロゼは、その場で跪き、両手で床に屈服すると、ぜーはーっ言いながら、それでも尚、キッと魔王に向かい居る。


決して負けない…そんな強い意志が伝わってくる様だ。だがしかし、魔王は余りにも強大だ。今のアキロゼでは、其の周りを回るだけならともかくとして、太刀打ちなどザラには出来ないレベルだった。


魔王「一撃。たった一撃。去れど一撃。どこが違うかな。私には、惜しい様な気持ちがして仕方ないのだが。」

魔王は斯く言うが、先程の攻撃でほんのりと暖まった身体が少し気持ち悪いのである。


魔王「さあ、起き上がり給え。こんなものでは無いだろう。」


其の時、一筋の白い光を帯びた騎士が登場した。


白銀の衣装に身を包み、これまた白銀の棍棒メイスを持った巨乳の聖騎士団長・白銀ノエルその人であった。


ノエルは、アキロゼの両の手の平をぎっしり掴むと、こう宣言した。


「団長は、アキさんの魔王に立ち向かう姿、感動致しました。これからは、後輩として、いいえ、一人の騎士として、貴方様をお守りしとう存じます。」


魔王「誰だ。こんなところにまで入って来るとは。何用か。名を名乗れ。」


魔王の一喝。場は尋常ならざる気配に包まれた。


「白銀聖騎士団が団長。白銀ノエルだ。これからは、お前の全ての誇りと執念を相手してでも、片手一本で光・の・皇・子・を守ってみせる。」

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