第2話 幼なじみは超優等生
それには彼が持って生まれた特徴と性格とが影響していた。
例えば、華奢で小柄な体格。少女のような顔立ち。それらをからかう人間は後を絶たなかった。
適当に受け流せばよいものを、毎回自分より大きな相手に挑みかかってはボコボコにボコられた。
その頑なな性質は、やがて幼なじみに対しても発揮された。
「円巳、お疲れ。……なんかすごいのもらっちゃったみたいだけど、デメリットスキルって珍しくないし、きっとなんとかなるよ」
授与式の終了後、肩を落とす円巳に声をかける女生徒がいた。
両肩に垂らした三つ編みとメタルフレームの丸眼鏡が、少し子供っぽいが、真面目かつ芯の強い印象を与える。
――
彼女と円巳は昔から家族ぐるみの付き合いである。
二人が幼い頃、冒険者であった円巳の母がとあるダンジョンでロストした。
母の遺志を継ぐことを目標とした円巳を、帆波はずっとそばで応援してくれている。
――しかし、成長するにつれ、二人の間には微妙な溝が生まれつつあった。
剣術も魔法も得意な帆波。
フィジカルはからきし、魔法に至ってはひとつも使えない円巳。
スキル授与式を経て、その差はさらに歴然となった。
優秀な剣魔両道スキル【神秘の
究極のデメリットスキル【
もはや、帆波の応援を素直に受け取ることは円巳にとって困難になっていた。
「はいはい、優等生サマは気楽でうらやましいよ」
「ちょっと、私はそんなつもりで――」
気遣いの言葉にも、つい刺々しく反応してしまう。
自分で傷つけたにも関わらず、悲しげな帆波の表情は円巳の胸を締めつけた。
――こんなはずじゃなかったのに。
――確かに、母さんのためでもある。
――けど、本当は――、
――本当は、帆波と一緒に冒険するのがぼくの夢なのに――。
そしてさらに、事態は決定的な悪化を迎える。
* * *
「誰ともパーティーが組めない……?」
翌日、教室の片隅にて。
円巳の言葉に、帆波は人差し指を唇に沿えながら、辛そうにうなずいた。
スキルを習得した生徒たちは、自主的にパーティーを組み、より実践的な授業に入っていく。 パーティーの結成自体が冒険者の資質に関わる試験なのだ。
しかし、【空白】の円巳はともかく、優等生の帆波が誰とも組めないというのは妙な話だった。
「イージャくんが、みんなに圧をかけてるのよ」
イージャは円巳たちのクラスメイトで、サイアーノ家の御曹司である。
彼の家がトーキョーエリアを仕切る冒険者ギルドに多額の資金提供をしていることは誰でも知っている。
要するに、イージャ・サイアーノに逆らうことは冒険者生命に直結する危険行為なのだ。
それをいいことに彼は横暴の限りを尽くしていた。
そして今回、その毒牙にかけられようとしているのは……。
「私を絶対に自分のパーティーに入れるって言ってるの」
正直に言うと、以前からイージャが帆波を狙っていることは知っていた。
あのヘビのような
「…………」
円巳はしばし黙っていた。
そして、帆波の眼鏡越しに見える不安げな瞳を覗き込み、言った。
「まだ答えは出すなよ」
「円巳……」
「明日まで……いや、今夜まで待ってくれ。ぼくに考えがある」
放課後。
イージャの姿が教室にないことを確認すると、円巳は走り出していた。
――考えがある、ねえ。
彼は自嘲の笑みを浮かべた。
宇路円巳のスキルは【
全力で行動あるのみなのだ。
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