キャラクターが振り返る 鵺一部一章

 蕾生らいお  めんどくせー

 

 はるか   ちょっとライくん! 初っ端からそんな態度でどうするの!?

 

 蕾生  お前のUMAの話がめんどくせーんだよ

 

 永   めんどくさいって何よ! UMAはロマンでしょうが!

 

 蕾生  それもキャラだったんだろ?

 

 永   ひどい! ライくんがそんなこと言うなんて!

 

 蕾生  だって銀騎しらきの爺さんのことはキライなんだろ?


 永   そうだよ、クソジジイは大っ嫌い! でもUMAに罪はないでしょうが! あんなに可愛いのに!!


 蕾生  か、可愛い……?


 永   可愛いじゃない! 河童も、人魚も、チュパカブラも! ツチノコがいたんだから、他の子達もいるはずだよねえ!?


 蕾生  ちょ……っと待て。まずは落ち着け。あれか? 銀騎のことを抜いても、永はUMAが好きなのか?


 永   うん、そう


 蕾生  あ、そう……なんだ。へえー


 永   確かに最初は銀騎しらき詮充郎せんじゅうろうを調べるついでだったけどさ。次第にホントに好きになっちゃったんだよね


 蕾生  ほ、ほお……


 永   UMAから派生して、UFOも、都市伝説も、陰謀論も! どれも面白くて興味深いんだよ、人間の「文化」としてもね?


 蕾生  そういうカッコつけはいらん。結局、オカルトをお前はエンタメとして楽しんでるんだな?


 永   うん、そう!


 蕾生  いい笑顔なのはいいけど、じゃあ昔から俺にそのテの話題を吹き込んだのは、俺達の運命に関係してるとかじゃなくて……


 永   やだなあ、こんなに楽しいの、ライくんにも知って欲しいからに決まってるじゃーん!


 蕾生  ああそう


 永   棒読みだ! もしかして、ライくんはオカルト嫌い……?


 蕾生  今更そんなこと聞いてんじゃねえ


 永   嫌い……?


 蕾生  ……好きとか嫌いとか思う前に、お前が色々吹き込んだせいで、なんかもう、何とも思わん


 永   ガーン! そんな、嫌われる方がマシじゃん! 無関心なんて、一番最悪じゃん!


 蕾生  お前の教育の賜物だな


 永   なんてこった……僕の有り余る情熱が、ライくんの関心を根絶してしまったなんて


 蕾生  UMAの話はもういいだろ。結局、銀騎研究所の見学会はなんだったんだ?


 永   あれはねえ、びっくりすると思うけど本当に公募のイベントだったんだよ


 蕾生  ……まあ、他にも客がいたしな


 永   ただ、あわよくば僕が釣れるってクソジジイが思ってた可能性はある。銀騎はあらゆる所に罠をかけるからね


 蕾生  ふうん。それってもっと前の転生でもか?


 永   そうそう。クソジジイはさ、基本、僕らのことは実験動物扱いしてんの。だからね、見学会もジジイの「実験」のひとつだったんだよ


 蕾生  そこにまんまと俺達は誘き寄せられたってことだな


 永   仕方ないよねえ、僕らにはあとどれくらい時間があるのかわかんないし。さすがの僕も十代後半になったら焦るよ


 蕾生  そんなもんか


 永   で、偶然リンに会った……と


 蕾生  それも偶然じゃなかったかもしんねえな


 永   今となってはね。でもさ、全てジジイの手のひらの上だなんて頭にくるから、あれは運命! ってことで


 蕾生  まあ、そうだな。あれは俺達の運命が作用した結果だと思った方がいいよな


 永   そうだよ! 僕らは若いんだから、ロマンティックに、ドラマチックにいかなくちゃ!


 蕾生  900年も生きてるのに?


 永   僕らは大人になった経験はないから! てか900年ずっと生きてたわけじゃないから! 33回死んでるから!!


 蕾生  こまけえなあ


 永   ところでさあ、僕がリンと温室で会った時、ライくんちょっと嫉妬したよね?


 蕾生  む


 永   僕とリンで君の知らない話をしたもんだから、嫉妬に狂ったよね?(ニヤニヤ)


 蕾生  狂ってない。あの時はそれよりも、あいつから感じるよくわかんねえ何かに混乱しただけ


 永   ふーん、ふうーん(ニヤニヤ)


 蕾生  お前、それよりもあの時に怪力を使わせたことを謝れ


 永   ああ……あれは、マジごめん。僕もリンの気配を感じて冷静でいられなくなっちゃって


 蕾生  ……


 永   あ、今、嫉妬したよね!?


 蕾生  しないっ!


 永   えー、認めてくんないの、つまんなーい


 蕾生  認めないっ!


 永   まあでも、無事に逃げられて良かったよねえ


 蕾生  そうだな(ぶすっ)


 永   (苦笑)それで、公園で僕の話を聞いた時、ライくんはどう思った?


 蕾生  あーそうだな……なんか昔の御伽話を聞いた気分だったな。実感はなかった


 永   ふむふむ


 蕾生  最初は永が漫画原作でも考えたのかと思った


 永   おお……ライくんの中の僕って結構イタイ感じ?


 蕾生  そんなことねえ、永ならやりかねない。だから話は「本気」なんだとは思った。「本当」なのかは別にしてもな


 永   複雑な気分なんだけど……


 蕾生  まあ、呪いとか、転生とかは、永から散々そういう話を聞かされてたからな。抵抗はなかったかも


 永   ほらあ! じゃあ、僕の教育の賜物だね! 君がそうやって冷静を保てるように、何年もかけて素地を作ったんだよ、僕は!


 蕾生  結果論だな


 永   ライくんのくせに生意気な言い方して!


 蕾生  何にしても、俺は永が「そうだ」って言ったら、信じるしかねえ


 永   ライくん……


 蕾生  だから、最初に全部言って欲しかったのに


 永   いやあ、それはちょっと。それで昔、失敗したこともあったしねえ


 蕾生  知らねえ女とお前だけが知ってて、俺が知らねえことがあるってのがよ……


 永   妬いたんだ?


 蕾生  ……


 永   やだ、もう、ライくんたら! リンに嫉妬なんかしたってしょうがないのに!


 蕾生  (むすっ)


 永   僕はライもリンも一番愛してるんだから!


 蕾生  ……


 永   僕ら三人はこれまでずーっと、そうやって生きてきたんだから!


 蕾生  ……もういい


 永   え!? ナニ? 何でまだ怒ってんの!?


 蕾生  知らん


 永   ライくん? ライくーん!







 ※蕾生は自分の他に「永の一番」がいたことが面白くないのです。記憶がないので仕方ないことです。

 お付き合いいただきまして、感謝申し上げます。

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自作「転生帰録(鵺)シリーズ」を振り返り解説し反省する 城山リツ @ritsu-shiroyama

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