第1話

「王子様…?」


「あはは、それは俺のことかな?」


閉じ切ったカーテンからは一切光が入らず、私はベッドが沈んだ重みで目が覚めた。


真っ暗な空間に人のシルエットだけが見え、穏やかすぎる声が聞こえて、私はやっと気がついた。


「あ…なんだ、芹…」


「なんだって酷いなぁ〜」


あははと笑って立ち上がると、ピッとエアコンの電源を消した。


ほんの些細な日常動作も魅入らせるのは、もはや才能と言っていい。


この男がいるということは朝、かな。


「起き、なきゃ…。あ、でもまだ眠…」


「起きて〜」


ユサユサと体を揺さぶられて、私は軽々しく芹に抱っこされて、部屋を出た。

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