おまけ

「お前、何やってんだ……」


 帰宅寸前、路地裏で変なおっさんに絡まれた。

 何って、車を盗んで逆走して橋から落ちて警察とカーチェイスして子供を連れ去って人を二人殺しただけだが。

 

「はは……」


 てへぺろでは許されなさそうな雰囲気。冗談。


「深くは聞かないが……。噂通りだな。佐才麻衣さんは」


 あーあー、聞こえない。

 なんだかめまいがして、口の中にすっぱいものがこみあげてくる。寝不足だろうか。


「娘さんは無事でしたよ」

「そりゃあ、見ればわかる」

「へ……?」


 一瞬固まってしまったが、この人なら見ていてもおかしくはない。


「いや、そうじゃない」


 九条さんが私の後ろを指差す。そこには窓しかないけど。

 窓の外に、娘ちゃんが立っていた。相変わらず表情に乏しい顔で、こちらを見つめている。

 という訳で、お話タイム。さっき綺麗にお別れしたはずなんだけどなぁ。


「えっと……私についてこなくてもいいんですよ? 自由、というか、家に帰りたいなら帰ればいいし、行きたい場所に行ったらいいんです」

「そう……」


 なら、ここに居るといわんばかりの表情。


「私、あなたの両親を殺しましたよ」

「……両親って、×と、×のこと?」


 そう、おじいちゃんの息子とおばあちゃんの娘のこと。大正解。


「いたんだ。そっか」


 娘ちゃんは淡白に言葉を紡ぐ。まだ声を出すことに慣れていない様子だ。


「だから、私とは……」


 娘ちゃんは首を横に振る。

 ここに住み着くなんて、私に親代わりでもさせるつもりか。


「私、みやこ


 親という役割は、私にとって神聖なものだ。神格化してすらいる。だからこそ、私にできる訳が無い。あんなのの娘だし、私がずれているのは自覚しているし。


「——とりあえず。中、入ってくだ……。入ろう。パーティー、するらしいから」


 でも、過去から逃げるためには、その認識も塗りつぶさなきゃいけないのかな。

 どこまでもネガティブな動機だけど、精一杯やってみようと思う。


 翌朝、枕元にメガネが置いてあった。六花さんからのクリスマスプレゼントらしい。


 


 


 

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