アホな高校生俺たち〜リア充が恋人持ちの人間こととか誰が言い始めたんや〜
千瀬ハナタ
第1話 接待オセロ
「接待ゴルフってあるやんか」
高校にて。
昼飯を食っていると突如ヤツはそう切り出した。春の陽気は若干汗ばむほどであり、四月だというのに桜はとっくのとうに散った。
「なに? 急に」
「あるやん?」
問いには返答せず、彼は繰り返す。
「……ある」
あらゆる反論をとりあえず飲み込み、そう返した。
「ある程度さぁ、その、相手立てなあかんやんか」
「まあ、そうなんちゃう、知らんけど」
しがない一般男子高校生の俺たちは接待ゴルフなんてしたことはない。イメージの話だ。
「話変わるんやけど」
「は? 変わるんかい」
「こないだ親戚で飯食ったんよ」
こいつの一族は結構親族で集まるタイプだったか。度々祖母の家に集まるとか、なんとか。
「ほお」
「オセロやってんな」
「……お前まさか接待オセロの話しようとしてる?」
「割とそう」
「感性終わってんな」
「いやまあ聞け」
ここまで来たらむしろ聞きたいまである。
「相手が親戚の女の子やったんや。七歳くらいの」
「あー……ね?」
「一番こう、ちょっと小学校入学してさ、全能感ある時期やんか」
「言いたいことは分かる」
「一回目普通にやって勝ってもて」
「ほん」
「めちゃくちゃ不機嫌なるやん」
「まあ、なる、か」
瞳を閉じて想像する。小学校一年生の女の子と、高校二年の野郎が正面に向き合ってオセロをする。
一戦目、ボケっとプレイしていたこいつはなんやかんやで勝ってしまう。女の子はなんかアホっぽい奴に負けて少しムキになる。
「おっけイメージついた」
「めっちゃ不名誉なイメージされてそう」
「続きどうぞ」
「ああ……いやほんでな? 二戦目するやん。まあちょっと手ェ抜くやんか」
「おん」
「ほんでオレ負けたんよ」
「なるほど?」
「女の子泣いてもて」
「ありゃりゃ」
「手ェ抜かんといてって」
なんじゃそりゃ……と思ったが、確かにさっきアホ
「オレはどないしたらよかったんや……」
「
泣いたフリをする三好の名を呼ぶ。彼の目が指の間からこちらを見た。
「ドンマイ」
文字で起こすなら『ドンマイ★』てな感じで言ってやったら首根っこを掴まれた。
俺は高校二年生、
俺たちはアホだ。
標準語なんかではアホという言葉はかなり傷つく言葉の部類だという。でも、アホって俺たちにとってはそんな意味じゃない。
青春の友情。
何気ない日常。
なぜか分からないけど笑えるもの。
それがアホな奴らの愛するものであり、そして愛されるものだと俺は思う。
これは、俺たちのアホな日常の物語だ。
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