閑話 胃がんの名医


(昼休み。杉原、竹中が休憩室で雑談している)


杉原

「竹中さんって、なんで消化器外科になったんすか?」


竹中

「なんだよ。藪から棒に」


杉原

「や、聞いときたいんですよ。後学のために」


竹中

「……財前に憧れてな」


杉原

「財前? それって『白い巨塔』の?」


竹中

「ああ。名医になりたかったんだよ」


杉原

「財前って確か食道がんの名人でしたっけ」


竹中

「原作だと主に噴門部の胃がん手術の名人だったけどな」


杉原

「胃がんっすか? んなもん誰がやっても変わらんでしょ」


竹中

「今は端々吻合も自動で出来ちまうもんなぁ」


杉原

「胃がんの名医ってのは流石に無理っすね」


竹中

「医療技術は日進月歩。時代が変わったんだな。その内、なんでも機械で治せちまうようになって、名医なんかいなくなっちまうかもな。つーか、外科医がいなくなっちまうかも」


杉原

「かもしれないっすね」


竹中

「でも、ま、の名人ってのはもうしばらく健在だろうけどな」


杉原

「憎たらしいっすよね……」


竹中

「いや、別に僻んじゃいねぇよ……」


(昼休みが過ぎてゆく……)


(終)

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