くるみさんの不運な一日

くるみさんの不運な一日

プロローグ

　恋愛って片想いの時期が一番いいって言うじゃない？

　あれ、マジよ、マジ。

　本当に片想いの時が一番いいんだってば！

　だってさ？　片想いしてる時は、ほら、何て言うの？　ほら。あれよ、あれ。「恋は盲目」？　だっけ？　正にそれ！

　どんな相手でも良いように見えちゃうのよ。

　良いように見えちゃうのか、悪いとこを見ないようにしてんのかは分かんないけどさ？

　どっちにしても片想いの時は、相手の悪いとこなんて見えないのよ。

　けど付き合うと違う訳じゃん？

　どんだけ好きな相手と付き合っても、嫌なとこが見えちゃう訳じゃん？

　そりゃ、最初は見えないかもしれないけどさ？　付き合いが長ければ長いほど、嫌なとこが見えてきちゃうのよ。

　見たくなくても見えちゃうのよ。

　で、許せなくなるんだよね。

　寛大じゃなくなるっての？

　そりゃ、男も一緒でしょ。

　女だけじゃないでしょ。

　だからさ？　片想いの時期が一番いいんだって。

　あたしもそう思うもん。

　昔の恋愛で思い出すのって片想いの事が多かったりしない？

　あたしは初恋の先輩よく思い出すんだよね。

　中学の頃、一個上の先輩が好きだったのよ。

　それ、初恋。

　え？　名前？

　名前は……何とか竹？　何とか木だったかも。

　ってか、名前はいいんだって！

　要は片想いしてた時の気持ちを思い出してるんだから！

　やっぱ初恋って特別じゃない？

　特別だと思うんだよね。

　何か初恋の淡い想いって何年経っても忘れられないっていうかさ？

　その先輩と特別仲良かった訳でもないんだけど、未だに忘れられない――って、ちょっと！　あんた人の話聞いてんの!?

　枝豆ばっか食ってんじゃないわよ！

　あたしの話聞けっつーの！

　何の為に今日集まったと思ってんのよ！

　あんたに枝豆食わせる為に集まってんじゃないんだからね！