第8話 和解の先に……
一
文月も二十二日(陽暦八月二十三日)となったが、まだまだ夏日が続いていて朝から汗ばむ。
京に涼風が立つ日が待ち遠しかった。
三崎屋で療養していた浅太郎は、完治間近で浅葱に変化し、鬱々と〝雌伏〟の時を過ごしていたが、今朝になってようやく体を取り戻した
安藤の具合は、どうだろう。
重右衛門は安藤の療養先として妾宅の一部屋を提供し、お高に世話させている。
浅太郎は、重右衛門の妾宅へ出向いた。
池田屋の一件で、新撰組の勇名は京師どころか諸国に轟いた。
新撰組はもっともっと大きくなる。
近藤は禄位を辞退して浪士の身分のままだが、近いうちに、しかるべき立派な地位の幕臣として召し抱えられるに違いない。
商い第一な重右衛門のことである。
日の出の勢いの新撰組に恩を売っておけば商いに繋がると考えていそうだった。
浅太郎は黙って住み慣れた〝我が家〟に上がった。
磨き立てられているが少し軋む廊下を歩き、安藤が寝ている表座敷に向かう。
暑い最中なので、障子は、中庭に向かって開かれていた。
ぼそぼそとした口調で、安藤が誰かと話している。
相手は葛山だった。
足を止め、聞くとはなしに二人の話に耳を傾けた。
「まったくもって情けないことじゃ。一月半も経つというに、この態じゃ。ふふ。昏倒しておった沖田はぴんぴんしておるというに」
安藤の声は同じ人物と思えぬほど、小さく掠れていた。
声音の不自然さが芝居がかっていた。
安藤は、魂胆があって、弱った重病人を演じているのではないかと思えた。
「死闘の間、諸藩の兵を池田屋に寄せ付けず、新撰組単独の手柄にできたことは近藤局長の功績ですが……。『局長は鼻高々で、ますます天狗になった』と皆が申しております」
葛山は苦々しげな口調で吐き出すように語った。
「田舎の一介の撃剣師匠がここまで成り上がったのじゃから、無理もなかろうて。気持ちを汲んでやらんか」
安藤の締まりのない含み笑いが、浅太郎の耳をこそばゆくくすぐる。
池田屋において宮部ら有力浪士が討ち取られ、続く残党狩りでは多量の武器弾薬が発見された。
「お上より報奨金五百両を賜ったうえに、禁裏からも百両の慰労金が授けられるとのご沙汰だそうじゃが、聞くところによれば、まだ目録のみだそうだな。山吹色のお宝を、一刻も早ぅ拝みたいものじゃ。はははは」
豪快に笑いかけて安藤は激しく咳き込んだ。
咳の響きも態とくさい。
十九日に御所を巡って長州藩との戦いが始まった。
蛤御門で会津兵対長州の激戦が行われ、長州は敗退した。
「昨日は天王山に籠もる敗残兵の追討で我が新撰組は斥候を務め、真木和泉らの自刃を確認してまいりました。拙者は所用があり、本日いったん帰陣致しましたが、明日は摂津高槻における残党狩りに合流致します」
新撰組は六月二十四日に伏見の押さえとして九条河原に出陣して以来、そのまま屯所に帰陣していなかった。
「わしは得を致したな。このように寝ておる間に、あらかた片付いてしもうたのじゃからな。ははは」
安藤は枯れ木の空洞から響くような乾いた声を立てた。
労多くして手柄を立てにくい集団戦に参加しても益はない。
名誉の負傷をよいことに、だらだら養生を続けているのだろう。
「葛山といい三崎屋といい、世話になったのお」
安藤が急に殊勝な言葉を吐いた。
葛山から無心するための前振りに違いない。
「三崎屋には悪いことを致した。ここだけの話じゃがな」
安藤は声を落とした。
「虚無僧で京師を流しておった折、四条河原で小屋掛けしておった興行師に声を掛けられたのじゃ。『気味が悪いゆえ、この銭で供養して欲しい』とな。わしはその〝がらくた〟を、どこぞの川にでも捨てる心づもりであったが……」
浅太郎は聞き逃すまいと耳をそばだてた。
安藤は、またもごほごほと耳障りな音をさせて咳き込んだ。
「貰うた布施で酒を呑んでおった居酒屋で、三崎屋重右衛門と出会うてな。『子授けに霊験あらたかな品』と偽って売り渡したのじゃ」
安藤は嫌な含み笑いをした。
腹が立った浅太郎は、思わず柱の陰から飛び出そうとした。
だが、喜三郎に繋がる貰い子の話が出るのではと思い直して踏み留まった。
「一年ぶりに重右衛門と道でばったり出会うた。わしはいささか焦ったのじゃがな。意外なことに重右衛門は『子が授かったは、あなたさまの御陰』と申しおってのお。はは」
なんら目新しい真実は明かされなかった。
落胆した浅太郎が、安藤をとっちめてやろうと、柱の陰から身を現しかけたとき。
「そのような因縁がござったか。三崎屋といえば……」
今度は葛山がなにやら告白めいた色を見せた。
一言半句も聞き逃すまいと、耳をそばだてた。
「如月殿は、拙者の言葉に国の訛りを感じたゆえ、拙者のごとき詰まらぬ者に心を……」
しみじみした口調で語りかけて、突如そこで絶句した。
「安藤殿。いかがされた。誰か医者を! お高殿!」
葛山の叫びに、慌てて座敷に足を踏み入れた。
お高が台所からばたばたと走ってくる。
床に倒れ伏した安藤は、息苦しげに口をぱくぱくさせ、荒い呼吸を繰り返している。
小芝居だと決めつけたかった。
「おお。浅太郎か」
安藤は落ち窪んだ目を向けて声を絞り出した。
「すっかり……元気に……なったよう、じゃな。わしも、もうすぐ……床上げせんとな」
骨と皮になった安藤を正視できなかった。
「うちは安藤さまに、ええように利用されましたさかいな。報奨金をたんと貰はったら、うちに、う~んと礼をして欲しおます」
浅太郎の言葉に、土気色の顔をした安藤は、
「そうはいかんぞ。浅太郎」
突如、しっかりした口調に戻ると、
「その金子で島原へ繰り出さねばならぬ。馴染みの野路菊が、首を長うして待っておるゆえなあ」
歯を剥き出して嫌らしい薄笑いを浮かべた。
「誰にも言うておらんかったが、その金子でわしは……野路菊を身請けして……と、考えるだけで……。うほほほ」
皺くちゃな汚い笑顔を顔に貼り付けたまま大きく息を一つ吐き出した後……。
急に黙ってしまった。
葛山は膝に拳を置いたまま無言だった。
お高が「ひえっ」と短い悲鳴を上げた。
「安藤さま。うちをからかわんとくれやす。安藤さま」
浅太郎は安藤の名を連呼した。
二
安藤が鬼籍に入って一月余りが経った。
八月の末ともなれば、涼やかな秋の風が感じられる。
重右衛門の言いつけで五日ぶりに、壬生村の共同墓地を訪れた。
葛山さまは毎日ここに参っているのか。
安藤の墓には、いつやってきても、新しい花が供されている。
浅太郎は携えてきた小菊を、萩の花が手向けられた竹筒にぐいぐいと押し込んだ。
「浅太郎も来ておったのか」
桔梗の花を手にした葛山が、枝折戸からふらりと姿を現した。
花が溢れんばかりの竹筒と浅太郎の顔を交互に見比べて苦笑しながら、別の竹筒を探して桔梗を生けた。
「うちは葛山さまを誤解してたみたいどす」
じっと手を合わせる葛山の横顔を、ちらりと見た。
「如月の一件のほんまの事情を知りとおす。浅葱とうちにだけは、どないしても打ち明けて欲しいのどす」
浅太郎の懇願に似た問いかけに葛山は、
「その儀はやはり勘弁願いたい」と、目を伏せて立ち上がった。
「待っとくれやす。葛山さま」
浅太郎も葛山と並んで墓地を後にした。
壬生寺の南門から境内を抜け、押し黙ったまま表門方向へ歩を進めた。
一夜天神の辺りまで来たとき、つと葛山は立ち止まった。
「浅葱殿に伝えてくださらぬか」
訥々とした物言いで、重い口を開いた。
「如月殿とは浄いままに終わった」
葛山の一言が、浅太郎の胸の奥の空洞に反響した。
体のうちに住まう浅葱の心の琴線が、びんと弾ける音を感じた。
「あの晩『縁を切る前に一度だけ』と心に決めて如月殿を訪ねた。だが拙者は踏ん切りがつかなかった。いつものごとく差しつ差されつで盃を重ねるうちに珍しく酔うてしもうた如月殿は、三崎屋も知らぬ生い立ちを拙者に打ち明けてくれたのだ。『丹波国篠山で道場を営んでいた父――池田要蔵が乱心した一番弟子の橘武八郎に斬り殺されて非業の最期を遂げた』とな」
眉間に皺を寄せた葛山は、重く垂れ込めた曇り空を見上げた。
「風の便りに《三歳であったひとり娘は、どこぞに売られた》との噂を聞いて心を痛めておったが。池田先生の娘御が如月殿であったとは……。因果の巡りは誠に恐ろしい」
葛山は石造りの鳥居の柱に拳をつき、大きく息を吐き出した。
「拙者は『拙者の本姓は橘だ。父上の仇に相違ない』と明かし、『存分に』と如月殿の手に脇差を握らせた」
葛山の拳がわなわなと震えている。
湿り気を帯びた風が、目を細めた葛山の鬢のほつれ毛を嬲った。
雲はますます厚く垂れ込めて風が強まった。
「十二年前、拙者は十六歳であった。田舎道場のこととて、池田先生以下、たいした技量の者もおらぬ。若輩ながら拙者が師範代を務めておった」
何に驚いたのか、境内に舞い降りていた鳩が一斉に飛び立った。
「拙者が稽古を休んでおった日のことだった。武者修行の武家が他流試合を求めて参ったのだが、高弟だけでなく先生までもが散々に打ち負かされてしもうた。道場破りを生かしておけば、不名誉を吹聴され、悪評が立って弟子が激減する。死活問題と思われた池田先生は、二十余名の弟子を引き連れて男を闇討ちせんと謀られた」
一気に話すと葛山は息継ぎをして、またも語り始めた。
「若造であった拙者は『大勢で闇討ちなど武士にあるまじき行い』といきり立ち、一行の後を追った。宿場の外れで追いついて池田先生を諫めたのだが、激高された池田先生は、白刃を抜き放ち拙者に斬り掛かられた。真剣での戦いの験しなどなかった拙者は、無我夢中で応戦致した。……気がつけば、池田先生は草むらに倒れ伏して動かなくなっておられた。拙者は……弟子たちに追われ、着の身着のまま出奔致した次第だ。……拙者の親兄弟に迷惑がかからぬよう、姓も橘から葛山と変えていままで生き長らえてまいった」
ところどころ言葉を詰まらせながら語り終えると目を伏せた。
「如月は、弟子らが取り繕ろうた話を母親から聞かされて、すっかり信じてたわけどすな」
湿り気を含んだ生暖かい風が、浅太郎の頬を撫でた。
「先生は道場を守ろうと必死ゆえだったのであろう。普段の先生は誠実で良き師匠だった。子煩悩で妻をいたわる優しい御仁でな。面影を心の支えにしておる如月殿に、父御の恥となる所業を伝えるわけにはゆかぬと思うたが……」
葛山は目を瞬かせながら、悔しげに唇を噛んだ。
頬にぽつりと冷たい雨の滴が落ちた。
たちまち雨粒は、ばらばらと数を増す。
如月は、さぞかし混乱したに違いない。
父に孝ならんとすれば、恋い慕う葛山を憎まねばならない。
知らぬとはいえ、葛山を慕った我が身は、すでに不孝者であったと、自分を責めたに違いない。
「別れ際に如月殿は毅然とした表情で申された。『今さら仇討ちなどして何になりましょう。葛山さまが、《捨てる命》と仰るなら『良き機会』を見い出して存分にお使いください』と」
葛山は静かに微笑むと、しっかりした足取りで表門へ向かった。
壬生寺の伽藍が雨に煙る。
山門を潜る葛山の影は、いつにも増して端然として見えた。
降りかかる雨の思いがけぬ冷たさに浅太郎は、胸に両手を打ち合わせるように組んだ。
三
長月の声を聞き、いつまで続くかと思われた茹だるような京の夏も過去となった、ある夕暮れどき。
浅太郎は島原の角屋にいた。
無事に役目が済んでやれやれだ。
慣れてないので、何かしくじらないかと心配だったが。
太夫道中のおりに太夫に道中傘を差し掛ける〝傘持〟役の男衆が急病になったため、今宵は浅太郎が代役を務めた。
蕪村の筆になる《夕立山水図》の襖絵がある檜垣の間に睦月太夫を送り込んだ浅太郎は、箱階段をとんとんと足取りも軽やかに下った。
睦月太夫の座敷が捌けるまで随分な間がある。
配膳場で、忙しく立ち働く女中や男衆の姿を眺めて暇潰しするつもりになった。
今夜も角屋は賑わっていた。
廊下を客や仲居が行き交う。
新撰組からも幹部連中や古参隊士などが大勢が登楼しており、葛山武八郎の顔も混じっていた。
浅葱は葛山の話を、どう聞いたのだろう。
浅葱とは金輪際、面と向かって話せない。
不便でもどかしかった。
足を止めて、秋色に変じた中庭を眺めた。
石灯籠の奥に飾り井戸の滑車が見える。
二階の一番奥にある〝青貝の間〟は、近藤のお気に入りの座敷だった。
壁だけでなく、随所に青貝を散りばめて数奇を凝らした座敷では、美形で名高い木津屋の金太夫をはじめ多数の綺麗どころを侍らせてのどんちゃん騒ぎの真っ最中で、中庭まで喧噪が聞こえてくる。
羽振りがよくなったとはいえ、羽目を外しすぎではないか。
浅太郎はくくと小さく笑った。
池田屋事件の報奨として隊士全員に十両が支給されたうえ、さらに働きに応じて別段金子として五両から二十両が下賜された。
角屋のように格式が高い揚屋には幹部連中しか来られないが、敷居の低い揚屋や気軽に揚がれる茶屋、さらには茶屋の名を借りた女郎屋など、隊士の応分で登楼して我が世の春とばかりに遊び回っている。
隊士たちは明日の命もわからぬ身である。
金子が入れば、ぱっと派手に使おうという気持ちなのだろう。
報奨金が隊士の手に渡った日の光景をふと思い出した。
八木の屋敷の前で為三郎と二人して沖田と喋っていると、酔っぱらって真っ赤になった平隊士が『大名になった。大名になった』と大声で叫びながら、島原の方角へ坊城通を下って行った。
安藤も生きていれば先頭に立って島原の女郎屋に乗り込んだろう。
中庭の色づいた楓の葉が、はらりと苔の絨毯に落ちた、そのとき。
階段をどかどかと駆け下りる音に続いて、大勢の隊士たちが廊下に姿を現した。
副長助勤の永倉新八、斎藤一、原田左之助の三名に加え、尾関雅次郎、島田魁、葛山武八郎の諸士調役三名の計六名の隊士だった。
「まったくもって話にならん。尽忠報国の旗印も今や泥に塗れるどころか、滅してしもうたぞ」
鼻息も荒く先頭を切って向かって来るのは永倉だった。
「おい。永倉。おぬし少々声が高いぞ」
二十一という年齢の割に老け顔な斎藤が、ぎょろ目を光らせて諫めた。
斎藤は浴びるほど酒を呑むが、酔って乱れた姿を見た験しがなかった。
「二階まで聞こえはせぬ。聞こえたとて、真実を申すに、はばかりなんぞあるものか」
永倉は威勢がいい。なおさら声を荒げた。
「局長は蛮骨をもって鳴らしただけに、往々にして我が儘の挙動多し!」
原田が声を張り上げる。
「専制を欲しいままにして我々同志を家来扱いとは許し難い!」
普段、物静かで控えめな島田も、巨体を揺らし、廊下を踏み鳴らした。
「聞かずんば剣に訴えるとは何事ぞ!」
斎藤までが口調を一にした。
今宵の斎藤は、珍しく酒が回っているのか、よほど腹に据えかねるのか。
宴の途中で、六人とも座を蹴って飛び出したらしかった。
座敷に残された近藤や土方の唖然とした表情が目に浮かんだ。
井上はおろおろし、沖田はおそらく興味深げに見送ったのだろう。
「脱走するか反抗するか。今や隊士はなべて不平に囚われ、感情を区々に弄しておる!」
永倉は、わかったようなわからぬような難しい言葉を得々と吐いた。
「このまま座すれば、我が新撰組は、やがて壊裂をきたす」
音頭を執っているのは永倉だが、一同が揃って大きく頷いているところを見れば、同意なのだろう。
ひっそりとしんがりを歩く葛山だけ、終始、無言だった。
「新撰組瓦解は邦家の損失なり!」
原田が酔いが回った紅い顔をさらに猩々のように染めて吠えながら、先頭を歩く永倉を追い抜いた。
「おい、浅太郎ではないか」
原田が、廊下の端で佇んだままの浅太郎に気付いた。
六人の足が止まる。
「我らは今から他所へ飲み直しに参るところじゃ。一緒に来ぬか」
原田はからかい半分、本気半分で、浅太郎の肩をがっしりと掴んだ。
揉みしだくように指に力を入れる。
「痛とおますがな。やめとくれやす」
浅太郎は堪らず、体をひねって原田の腕から逃れた。
「ははは。浅太郎が酒の味を覚えるのは、まだ早かろう」
子供の時分から酒好きだった斎藤が、もっともらしく諫めた。
「おのおのがたに申し上げる!」
永倉は廊下の真ん中で、仁王立ちになるや、芝居がかった表情で残る五名を睨め付けた。
「今夜という今夜は、堪忍袋の緒が切れた。いかが致すべきか策を練るとせんか」
血走った眼差しの永倉は全員の顔を順に見渡した。
「そうじゃ、葛山。おぬしは筆が立つ。一つ、我らの意とするところをだな……」
目立たぬ位置に影のように立っていた葛山に視線を止めて問いかけた。
葛山の表情は、巨体を誇る島田の体の陰になって、浅太郎には見えなかった。
「そうと決まれば、飲み直しじゃ」
呆気にとられる浅太郎だけを残し、永倉らは次々に、刀を預けた帳場のうちに消えた。
大小を手挟んだ者から順に、角屋の者に見送られて玄関を後にする。
酔っぱらいはかなわない。
威勢ばかりが強い。
浅太郎は苦笑いしながら、六人の後ろ姿を見送った。
おりからの秋風が、紅殻色に白地の模様が染め抜かれた大暖簾を、はたはたとはためかせる。
葛山さまだけは、酔っていなかったような……。
いつにも増して葛山の顔色が優れなかったことが気になった。
四
明くる朝、浅太郎が八木邸の台所で独り、冷めた菜っ葉汁と握り飯の遅い朝飯を摂っていると、
「飯など食っておる場合ではない。一大事だ。えらい騒ぎになっておる」
見たことがないほど蒼白な顔をした沖田が、浅太郎を呼びに来た。
飯を頬張りながら八木邸の玄関先まで出た浅太郎に、
「大変なのだ。反乱だ、反乱。いや謀反だ」
沖田は激した口調で唾を飛ばした。
坊城通を隔てた前川邸の屯所内からは、蜂の巣を突いたような騒ぎが外まで漏れ出している。
「何どすえ。さっぱりわかりまへんがな」
浅太郎も、まがまがしい空気を感じ取った。
「永倉さんを筆頭に、原田さんや斎藤さんまでが、今朝早く会津藩公用方の小林久太郎殿に面会を求め、会津侯に建白書を提出したんだ」
沖田は表情と声を強張らせながら一気に捲し立てる。
「こともあろうに《近藤勇局長の非行》なる、五ヶ条もの偽りを書き連ねた建白書なんだ。幹部が局長の処分を会津侯に直訴するなんて、新撰組はお仕舞いだ。瓦解してしまう」
眉間に縦皺を寄せた沖田の顔つきが悲壮さを増した。
「建白書には《五ヶ条について近藤局長が一ヶ条でも申し開きできれば、六名は切腹して相果てる。逆に近藤局長が申し開きできなければ、すみやかに切腹を仰せ付けくださるよう》と書かれていたそうだ」
沖田は頭を抱え、石畳の上を熊のようにぐるぐる歩き回った。
突然の知らせに実感が湧かないものの、浅太郎も言いようのない絶望に胸をさいなまれた。
「六名となると……」
昨晩の角屋での異様な光景が、脳裏に鮮明に蘇ってきた。
「ほかは島田さまと尾関さまと……葛山さまですか」
葛山の名の部分だけ、気道を締め上げられたように声が詰まり震えた。
「建白書の文面は葛山の筆だそうだ。あやつめ、戻って来おったら、ただでは置かぬ。日頃から妙に暗い男だったが、とんでもない暴挙を扇動しおって」
沖田の頭の中では、建白書を認めただけの理由で葛山が首謀者とされていた。
「ほんで今、六人の方々は、いずこにおられるのですか」
額に冷や汗が滲み出し、息苦しさを覚えた。
「大いに驚かれた会津侯は屯所まで使いを出され、近藤先生を召された。近藤先生は騎乗にて早々に黒谷まで出向かれたが……。はてさて今頃は、どのような事態に至っておるものか見当もつかぬ」
沖田は庭の松の木に拳を打ち付けた。
樹皮がぱらぱらと砕け散る。
たちまち沖田の拳が紅く染まった。
拳の骨も砕けよとばかりに、沖田はなおも幹に拳をぶち当てた。
「土方さまは、どうしたはりますか」
沖田を落ち着かせようと、努めて冷静な言葉で問いかけた。
「土方さんは部屋に閉じこもったきりだ。拙者は居ても立ってもおられず屯所を飛び出してまいったが。何をどうするにも、まったく知恵が回らぬ」
沖田の動揺ぶりは尋常ではなかった。
いままで沖田を、いかなる運命でも受け流せられる《柳に雪折れなし》な人物だと思っていたが、やはり普通の人間だった。
今しも近藤が腹を切らされているかも知れない。
あるいは葛山ら六名が打ち揃って腹を切っているのではないか、と思えば、浅太郎も平静でいられなかった。
「近藤先生あっての新撰組だからね。近藤先生に、もしものことがあれば……」
沖田の顔は紅くなったり蒼くなったりを繰り返した。
「会津侯は清廉潔白なうえに、情の深いお方と聞きます。きっと仲を取り持ってくださいます」
浅太郎は沖田の周章狼狽ぶりに、気休めを口にした。
「おお、そうだな。会津侯は新撰組の瓦解を見逃されるようなお方ではない」
沖田はたちまち納得した。
どす黒い顔に赤みがほんの少し蘇る。
だが問題は単純ではない。
近藤の切腹はあり得ないだろうが、近藤と土方は、隊の名において永倉ら六名を処罰するだろう。
永倉らが隊に戻れば、全員が揃って腹を切らされるに違いない。
永倉、原田、斎藤らの覇気に満ちた若々しい顔が次々目の前に浮かんだ。
永倉らは意地を通すためなら喜んで腹を切るのだろう。
だが……。
影の薄い葛山の寂しげな顔を思い浮かべれば、浅太郎の心は大波に乗る板子のように揺れ動いた。
葛山は、ただ巻き込まれただけではないか。
永倉、原田、斎藤ら五名のうちに教養人らしき人材はいない。
葛山の水茎は、如月宛の文を盗み見て知っていた。
能筆で文才もあり、忌々しく思った記憶があった。
永倉らは、建白書を書かせるために、葛山を無理矢理、仲間に取り込んだに違いなかった。
昨日見かけた折りの葛山は、意気軒昂な五人とは、まるで顔つきが違っていたではないか。
浅太郎の内なる感情が、紅色の花総のように乱れた。
五
折からの強風に煽られた炎のごとく、不安が体の中心から末端へと燃え広がる。
浅太郎は沖田とともに、意味もなく四条通と綾小路通間の坊城通を行きつ戻りつした。
大気は肌寒いほどにもかかわらず、嫌な汗がだらだらと顔の輪郭を流れ落ちた。
「もう一時(いっとき)は過ぎておる。遅いではないか」
沖田の顔色は時が移るに従って鈍色が濃くなった。
浅太郎の顔は蒼白を通り越してどんな色になっているか、自分でも想像もつかなかった。
「ここは西の外れどすさかいな。東の端にある黒谷はんからは距離がありますよって、戻らはるだけでも、だいぶと時が掛かりますえ」
浅太郎は自分に向かって言い聞かせるように答えた。
話すだけで息が上がる。
「近藤先生は騎乗で駆けつけられたのだぞ。馬で駈け戻られれば瞬時の距離ではないか。つまりは近藤先生が既に腹を召されたのでは……。いやいや、そんなはずは断じてない」
沖田の声も別人のごとく沈鬱だった。
永倉や原田らは死地を潜り抜けて来た戦友であるにもかかわらず、沖田は近藤の命運しか心配していなかった。
新撰組は所詮は烏合の衆である。
一団となって熱い気持ちで突き進むうちはよいが、ひとたび矛盾が生じればたちまち熱は冷めて、左右反目嫉視して啀み合うしかない。
田畑の中にある坊城通は行き交うひともなく、依然として静かだった。
壬生菜畑の青々とした中に混じった田圃では、頭を垂れた稲穂の波がざわめくばかりである。
不安のどん底を感じて居ても立ってもいられない。
爪先立ちして四条通を西方向に眺めても、誰一人として戻る気配はなかった。
刻々と不安の洪水が水位を増してくる。
葛山は浅太郎の命の恩人に違いないが……。
魂がどこかへ飛んでしまうほど取り乱しているのは何故なのか。
胸の奥で騒いでるのは、浅太郎の中に押し込められてる浅葱だと、ようやく合点が行った。
浅葱は最初から葛山さまを好きだったのだ。
自分の気持ちに気付かないまま、葛山さまを気に懸けたり責めたりしていたに相違ない。
葛山の急を聞いて、浅葱は自分の奥底に眠ってた気持ちを悟ったのだ。
浅葱に問いかけ、確かめてみたいものの、できようはずもなかった。
だが、このように浅葱の気持ちがわかるのは、どういうわけか。
浅葱の心が浅太郎の心の領域まで浸潤していた。
黒と白、赤と青のごとく乖離していた二つの色彩が混ざり合いつつある。
二人は結局、一人でしかなかった。
誰の中にも仏と鬼――正邪の心が棲んでいる。
浅太郎と浅葱は、双子に生まれ損なったわけではなかった。
二つの心が少しばかり懸け離れ過ぎて、本当は一つの心なのに二つだと思い込んでいたのではないか。
心が男女に別れていたから、体まで男になったり女になったりしたのだ。
歌舞伎の龕灯返で、唐突に場面転換するように、ぱたぱたと謎が解けていく。
自分と浅葱は一人だったのか。
今はまだ解け合っていないにせよ、葛山の件を糸口に浅葱と浅太郎は一つに収斂されていくのではないか。
浅葱の心が泣き叫ぶ。
立っていられぬほどの目眩を感じよろめいた。
その刹那。
四条通と交差する辻から坊城通に、騎乗した人影が現れた。
馬上の人は近藤だった。
「近藤先生。ご無事でしたか」
奇妙に甲高い声とともに沖田は、主人の帰還を待ちわびた忠犬のごとく駈け寄った。
「うむ。大事ない」
近藤の姿は普段より一回り小さく感じられ、顔色は、俄の病でも発したかのように優れなかった。
「あ、あの……」
浅太郎は声が掠れて、言葉にならなかった。
近藤に理があるとされ、葛山らは黒谷の金戒光明寺で切腹したのだ。
目の前が真っ暗になった。
心ノ臓が躍り上がり、声も出ずに立ち竦んだ。
背中を走る神経の束を逆撫でされるような衝撃とともに、体の内側にぴきぴきと氷が張り詰めていく。
浅太郎は崩折れそうになる体を懸命に堪えた。
「で……。六名は、やはり……腹を切りおったのですか」
仲間の生死を訊ねる沖田の声は、悲痛な色を帯びていた。
「ははは。馬鹿を申すな。ただの行き違い、誤解じゃ。拙者以下七名は、会津侯より直々に盃を賜り、以降は遺恨の一切なきよう仰せつけられた。六名も納得致し、ほどなく駕籠にて帰局するはずじゃ」
小者に馬の轡を取らせ、近藤は貫禄有る仕草で馬を下りた。
浅太郎は、人形浄瑠璃の途中で人形遣いが突然いなくなった人形のように、へなへなと坊城通の真ん中にへたり込んだ。
良かったな。
なあ、浅葱。
浅葱の喜びの萌葱色が波紋のように広がり、浅太郎は色彩が解け合う心地よさを感じていた。
六
近藤さまの留守を見計らった、土方の画策に違いない。
早朝稽古のおりに沖田から《今宵、葛山が切腹する》と聞かされた浅太郎は、木刀を放り出し、稽古着のまま屯所に駆け込んだ。
屯所内にずかずか上がり込むや、土方の部屋を目がけて廊下を走った。
「土方さま。今になって、どないなことどす」
障子を力一杯がらりと開けた。
「浅太郎ではないか。いかが致した」
文机に向かって何かしたためていた土方が静かに目を上げた。
「葛山さまだけ処分するて、なんでどすか。肝心の永倉さまはお咎めものうて、近藤さまに随行して江戸へ出立しはったちゅうのに。うちは納得いきまへん」
敷居の前で仁王立ちになったまま問い詰めた。
土方は目をすっと細めた。
黒目がちの大きな目が狡猾な狐の目に豹変して見えた。
「どないなわけどすか。納得いくように話しとくれやす」
座敷に入って膝を折った浅太郎は、ずいと土方の前ににじり寄った。
「葛山は夕刻までの間、心静かに過ごしたいと申して、人払いのうえ一室に閉じこもっておる。今夕、日没を期して腹を切るそうだ」
土方の言葉がどうも噛み合わない。
「『切るそうだ』とは、どないな意味どす」
浅太郎の声は怒りで甲高くなった。
「局長出立直後に葛山当人が拙者の部屋に参って自ら申告致した。《局長がおられれば止められる。局長の不在を好機として実行せん》とな」
言いながら土方は襟元を糺し、姿勢を改めた。
「葛山は《近藤さまは謹慎で済ますおつもりだが、生ぬるい処分では隊として示しがつかぬ》と申してな。固い決意であった」
大きく一呼吸吐き出して、土方は紅く肉厚な唇を舌で湿した。
「葛山はな。《永倉、原田、斎藤は大幹部ゆえ、亡くしたなら隊の損失は計り知れぬ。尾関、島田も古参の功労者である。しかるに身共は隊に入って日も浅く軽い身である。首謀者として腹を切れば万事が丸く収まる》と申すのだ。まこと、葛山は武士の鑑だ。我が身を犠牲として新撰組の瓦解を防がんとするは、あっぱれな漢ではないか」
一気に語り終えた土方の黒い瞳には、光るものがあった。
土方も処分に苦慮していた。
葛山の願ってもない申し出に感謝している。
葛山の心意気に感動している。
もはや浅太郎の出る幕はなかった。
「そうどしたか。うちは、てっきり……。失礼の段、お詫び申し上げます」
浅太郎は感じ入って頭を下げた。
葛山は、如月の最後の言葉に応えようとした。
義のために自らを犠牲にする好機を待っていた。
新撰組に入隊した動機も、死に場所を求めてゆえだった。
虚無的とも思える葛山の薄い笑顔が、脳裏に蘇ってくる。
葛山さまは、うちの命の心配をしてくれはったけど、ご自分は命の捨てどころばっかし探してはった。
納得せざるを得ない気持ちと同時に、絶望が足下から大蛇のように絡みつき、息もできぬほど締め付けた。
大蛇は浅葱の情念なのだろう。
目の前のすべてがぐらぐら大きく揺れ、すべてが色を喪失して暗転した。
ならばせめて……。
生まれて初めて、浅葱と入れ替わりたいと、浅太郎は切に願った。
七
土方の居室を辞した浅太郎は、坊城通を南へ下った。
左手に寺が建ち並ぶ一角を除けば、島原までは茫洋とした田畑ばかりが続く。
この季節の島原は、碧と黄金色の海に浮かぶ小島だった。
浅太郎はお高の家ではなく、三崎屋に戻った。
じりじりしながら待つしかなかった。
浅葱に変化できれば、即座に屯所まで駆けつけねばならない。
浅葱の衣類の揃った三崎屋で待つ必要があった。
「どないしはったんどす。浅ぼん。そないな蒼い顔しはって」
仲居頭のお峰には答えず、台所庭を突っ切った。
顔色はなく目も据わっているに違いない。
立ち働く下女中たちが顔を引き攣らせ、慌てて道を空けた。
直後に思い出したようにぺこぺこお辞儀をする。
茫洋とした心持ちの浅太郎は、会津に伝わる張り子の首振り人形――あかべこが並んでいるような錯覚に襲われた。
外縁から上がって、母屋の奥にある浅葱の部屋に向かった。
「もう時間がおへん。なんとか早ぅ浅葱に戻れんやろか」
口に出して呟いた《戻る》の一語に、胸を突かれた。
体の主は、うちやのおて浅葱やていうのんか。
部屋に入って障子を閉め、一人きりになった浅太郎は、畳の上にぺたりと座り込んだ。
浅葱になる切っ掛けさえわかれば……。
心の奥に仕舞い込まれた過去の抽斗をあちこち開け回るが、手がかりは見つからない。
生まれてこのかた、浅葱になったり浅太郎になったり、定まらぬ体は気まぐれだった。
「浅太郎、どないしたんえ」
お峰の注進を受けたお信が、しゅるしゅるという裾捌きの音とともにやってきて、障子の向こうから声を掛けた。
障子をがらりと開けると、お信の白い顔が目の前にあった。
剃り跡も青々とした眉を八の字に寄せている。
お信の後ろには、これまた眉間に皺を寄せたお峰の姿が見えた。
「どないもない。いつもの気鬱やがな」
素っ気ない返答にお信は「ほうかいな。ほうかいな」と、たちまち安堵の色を見せた。
「お峰が『なんや浅ぼんの様子が変どす』て言うもんやさかい。うちまでえらい心配を……」
浅太郎は話を皆まで聞かず、お信の鼻先で障子をぴしゃりと閉めた。
そや。そや。
思い直した浅太郎は、障子をもう一度がらりと開いた。
「お母はん。すまんけど駕籠を一挺、頼んどいてんか。出かける刻限はまだわからんよってに、待たしといて欲しいねん」
島原から壬生までは十町ほどもあり、浅葱の姿で走っていくには遠い。
「これ、浅太郎。浅葱に戻ってから何処へ行くつもりどすか」
またもお信の顔が曇った。
お信は近頃、とみに目尻の皺が増え、目の下の隈も濃くなった。
「お母はんは心配せんかてよろしおす。この前みたいに間者の真似事するやて無鉄砲なことするかいな。これからは、せいだい親孝行するよってにな」
殊勝な気持ちになって、空手形を口にした。
「ほんでからお父はんにも……」
重右衛門にも何か伝えたくなったが、言葉が思いつかなかった。
次に会うおりに面と向かって言えばよい。
「今朝は何や様子がおかしいえ。けど、知らんうちにそんだけ大人になったんかいな」
お信が泣き笑いのような笑みで目尻に思い切り皺を寄せ、浅太郎の肩を何度も撫でた。
後ろでお峰も目を細め、大仰に何度も頷いている。
「うちが障子を開けて呼ぶまでは誰も来させんといてな。頼むえ」
浅太郎はお信の目の前で再び障子を閉めた。
今度は優しく……。
お信とお峰がひそひそ話しながら裾を引きずる音とともに立ち去ると、部屋は急に静かになった。
浅太郎は改めて浅葱の部屋を見渡した。
豪華な調度に囲まれた六畳の間には塵の一つさえも落ちていない。
部屋の真ん中で、浅太郎は独りぽつんと立ち尽くした。
浅葱の小袖に袖を通してみたら浅葱に戻らへんやろか。
衣紋掛けに架けられた小袖を手に取って羽織ってみた。
鏡台の前にぺたりと座って覆いをめくり、磨かれたてられて一点の曇りもない鏡面に顔を映した。
「なあ浅葱。外に出てきたいんやろ。うちも浅葱を引っ張り出すよう念じるさかい、浅葱も頑張って内側から殻を破ってみいや」
浅葱が懸命に内側から胸を叩く痛みが伝わってくる。
「そうや。その調子や。浅葱。こっちへ出て来(き)ぃ。うちと交替しよ」
浅葱に向かって懸命に呼び掛けた。
だが体は答えてくれない。
なんでやねん。
うちの体やのに。
いっぺんくらい言うこと聞いてえな。
六畳の間は、いつしか大海となっていた。
荒れた暗い海に浮かぶ小舟は、木の葉のように玩ばれる。
浅太郎は、我が身に懇願し続けた。
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