モブプリンセスの私が恋したのは、悪役令嬢に絶対殺される第二王子でした!?

彗星桜

プロローグ

 リリアンナ・スライプス。今年で16歳。


 伯爵家の長女にあたる私には特に目立った特技は無いが、お母様に似たそれなりに整った顔、平均より少し高い頭脳と運動能力を持ち合わせていたので、人生において困ったことはほとんどない。


 伯爵家としての公務に務めるお父様。

 それを支えるように仲睦まじくお父様に語りかけるお母様。

 私よりも凄く頭が冴える次期当主のお兄さまに囲まれて過ごす毎日はとても充実していた。


 確かに童話に出てくるようなプリンセス達には少しだけ劣っているかもしれないが、私はこのまま平穏な幸せな人生を謳歌していきたい。



 …そう思えていたのもに会うまでのことだった。


 私の人生にいきなり現れて、一目見ただけで私の心を撃ち抜いてしまった本物の王子様。

 私はこの国の第二王子 ──トルテ・ラリエール様に恋をしてしまったのだ。


「あーー!もう!絶対に上手く行く訳がないじゃないっ!」


 私は枕を抱き抱えながら少しだけ声を荒らげて自分の気持ちを吐き出した。


「そうね確かに私も伯爵家令嬢よ?チャンスは他の方よりは多いわ。でも、でも!私王子様を射抜ける程の魅力はないものっ!」


 はぁっとため息をついて、私は机の上に置いてあった童話になんとなく手を伸ばした。

 幼い時から持っているその本の名前は『脇役姫と王子様』。

 ざっくりと内容を説明すると、王子様に恋に落ちた脇役姫が王子様と結ばれる話だ。


「現実はここまで上手くいかないわよね。…よし!切り替えないと!そろそろお母様もお父様の執務室から出てくる頃だろうし」


 私がベッドから足を踏み出そうとした瞬間、思いっきり足を踏み外した。


「きゃあっ!」


 そのままゴチン、と頭と地べたがぶつかる音がした後私の視界は真っ暗になった。


 ※ ※ ※


 ──暗い?ここはどこなの?


 私の視界はやっぱり暗いままだった。

 辺りを見渡しても、黒、黒、黒。


 ──というかなんで声がでないのよ!


 何度も声を出そうとしても、真っ暗な世界に吸い込まれていく。そんな感覚だ。

 どうしようか考えていると、いきなり私の視界の中に大きなスクリーンが現れた。


『トルテ様…!トルテ様お声を聞かせてください!』


 私とそっくりな声と同時に流れてきた映像に私は絶句することしか出来なかった。


 ──どういうこと?なんで…。


 そこには氷の剣で腹を貫かれたトルテ様と、泣きじゃくる私が映っていた。


『トルテ様っ!私が、私のせいで』


『──っ、違う。お前の、せいではっ、ないっ、!』


『いい気味ですわね、トルテ・ラリエール。貴方は邪魔なの。第一王子、スワン・ラリエール様にとってね』


 スクリーンに映ったのは白髪の同じ年頃の女だった。

 どこかで見たことがあるような気もするが、いまいち思い出せない。


『じゃあさよなら』


 その言葉を最後に白髪の女は姿を消した。


『トルテ様ぁぁあ!!嫌だ!嫌よ!!もう繰り返したくないのっ!』


 私と同じ姿をした女はまるで悲鳴のような声で泣き叫んでいた。


 ──繰り返したくないって…


『次は』


 女と私の目が合った。


『次は間違えないで』


 その言葉を聞いた瞬間、私の頭の中の音声と映像がまた途絶えた。


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 基本的に毎週木曜日更新にして行きたいなと思っています。(時間はまだ不確定です)

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