第8話

離れてなるものかと顔を胸元に埋めれば雛世くんの香水の匂いがして深呼吸を繰り返した。




落ち着くかもしれない。





「清白、会社での俺は清白にとって鬼かもしれないけど」



「かもじゃない。鬼」



「いやまあ仕事だから。そこは目を瞑ってよ」



「分かってるけどムカつくもんはムカつく」



「かわりに家で甘やかしてるだろ」



「自分が甘やかしたいだけのくせして」



「バレたか」





抱き締められていた手が緩んで、おいでと手を引いてソファに誘導される。





膝の上に座らされてこめかみに目尻に頬に順番にキスをして。





「こっちもして」



「仰せのままに」





最後にしてもらえなかった唇へのキスをおねだりすれば、喰むような齧るような少し意地悪なキスが降ってくる。

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