嗤う、ざまぁの種

DITinoue(上楽竜文)

序章

クスリの語り

 がしゃ、がしゃ、と、恐竜が歩いているかのような地面の揺れが止まった。

 刹那、ばりばりばり、と、同類たちが一気に、小さくなってしまった身体に圧し掛かってくる。


 そんなことしてたら、殺られるよりも前に身体が割れちまうだろうによ。


「お母さん……?」


 ガチャリ、と音が聞こえた。

 心臓をきゅんと掴まれるような、甘ったるい高い声。


「ああ……私ならもういい……」


 三百六十度視界は真っ暗だが、その中でも枯れ木のように瘦せ細った魔女のような老婆を思い起こすことが出来るカラカラの声。

「良くない。アタシが、ダメだもん」

 じゅるじゅる、と鼻を大きく啜る音。


「だから、頑張って、お母さんが復活するお薬の元を手に入れてきた」

 

 全身が、一気に自分の下にいる同類に押し付けられる。一瞬だけ、ジェットコースターのように、重力が突然強くなったようなものだ。

 かと思えば一気にフワリと身体が浮き、もう一度下にいる同類に強く叩きつけられる。

 上から、バラバラと同類が降ってきた。

「何だい……、これは」


「これは、粉々にしてやって、それを飲めば身体が一気に回復するっていう魔法のお薬になるもの」


 声のトーンが一気に明るくなった。

 それと同時に、この身体を取り囲む同類どもが、皆一様にブルリと震えた。


 ビビったって、どーせこの身体じゃあ一瞬で跡形も無く他のやつと混ざっちまうだろうが。


「本当に……? そんな、魔法のようなことが、あるものなのかねぇ?」


 ゴホッ、ゴホッと大きな咳。

「お母さん?!」

「ああ、だいじょ……グホグホッ。ごめんね、せっかくの薬も……」

「ダメダメ! もうちょっとだけ我慢してくれたら、すぐに良くしてあげるから!」

 大きな重力がかかったかと思うと、視界に、僅かだが光が差した。

 光が差したというのに、同類どもはこれまでとは比べ物にならないほど激しく揺れ始める。

 その甲斐も無く、上の方にいた者から順番に、ザラザラと皮が音を立てて落ちていく。

 間もなく、この身体も容器に流れ着いた。


 バキ


 どこかの誰かの身体が突如として砕ける音がした。


 おい、この中のどこかにいる、埃まみれのデカ眼鏡陰キャ、お前は、一体なにを思ってんだ?

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