第二幕 

プール開き /雪原萌柚side

狐さんの結婚式に出席してから一日が経ち、今日は六月二〇日。


今日から私の学校ではプールの授業が始まる。


温水プールだから、十二月もまた授業をやるらしいけれど。


とりあえず夏休みまで、体育の授業は水泳に置き換わるそうだ。


入学してからずっと、このプールの授業を楽しみにしていたけれど、今は憂鬱でしかない。


なんでかって、理由は決まってる。


友達がいないからだ。


友達がいないと、本当になにも行動できないの、わかる?


移動教室でさえびくびくしなくちゃいけないの。


「ねえ、そこのあなた。髪の毛、制服の後ろのボタンに絡まってるわよ」


後ろから声をかけられ、慌てて振り向く。


「わ、美人さんだぁ…」


思わず心の中の声が漏れ出てしまう。


栗色の髪に、アーモンド型のようなぱっちりとした吊り目。


華奢で、高級な猫みたいな女の子がそこに立っていた。


靴下のラインが緑色だから、同じ学年の子っぽい。


わたしと同じ歳で、こんなに完成された顔をしているなんて。


「うちが、美人…?ありがとう」


ふふっと笑った顔も美人だ。


「それで、髪の毛、絡まってるの取るから。向こう向いてて」


「わかった。ありがとう!!」


彼女と反対方向を向き、ボタンに絡まった髪の毛を解いてもらった。


「ありがとうございました!」


勢いよく頭を下げてお礼を言うと、ふふっと笑われた。


「じゃあ、また、あとでね。雪原さん」


なんで、名前を知っているんだろう…?


その疑問は、後々解決されることになる。


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あやかしからず!〜魔物探偵団『マモたん』はじめました!!〜 雪加 吟 @inukai_31

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