ともだち
原氷
第1話
部屋の中、薄暗がりの空気は煙草の煙とともに静かに漂っていた。青白い煙が薄い光に溶け込み、まるで時間そのものがゆっくりとその輪郭を変えているかのようだった。主人公はソファの隅に身を委ね、思い出の渦に飲み込まれながら、亡き友の面影を追っていた。
友の笑い声が、かすかな耳鳴りのように心の奥で響いている。彼の明るい瞳、無邪気な仕草、そしてふとした瞬間に見せる深い思索。彼と過ごした日々は、もはや夢の中の出来事のように朧げで、手のひらで掴むことのできない幻影のようだった。
煙草の火がかすかに燃え盛る。彼は、かつてこの同じ場所で、一緒に笑い合った瞬間を思い返す。あの時の彼の口元の弧、無邪気な提案に乗って夜遅くまで語り合ったこと。共に分かち合った無数の小さな瞬間が、今ではひとつの大きな感情となって胸を締め付ける。煙草の煙が彼の名前を呼び起こし、柔らかな記憶の糸を紡いでいく。
外の風景は無情に変わり続けている。街の喧騒や季節の移ろいは、彼にとっての永遠の安らぎを奪っていく。しかしこの狭い部屋の中で、彼の思い出だけが静かに息づいている。空気は重く、彼はその中で孤独を感じながらも、友の存在を心に留め続ける。
煙草の灰がゆっくりと落ちていく。彼は再び火をつけ、その熱を感じながら、過ぎ去った時間の中に自らを見いだそうとする。死は彼を奪ったが、思い出は決して消え去ることがない。友の声は、煙のように、ただかすかに、しかし確かに、彼の心の中で生き続けている。
深い沈黙の中で、彼は静かに微笑み、彼の存在を感じる。煙が空に溶けていくのと同じように、友の記憶もまた、この部屋の中で永遠に生き続けるのだと、彼は信じて疑わなかった。
ともだち 原氷 @ryouyin
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