BITCH ―ビッチ—

ユウ

プロローグ




 深夜と呼ぶには、まだ少し早い時間。



 数回鳴ったのちに途切れる、呼び出し音。



 こちらが何かを言う前に、スマホから聞こえてくるのは、「どうしようもねえ奴」とも「しょうがねえな」とも取れる感じの溜息。



 そして。



「……彼氏に、振られた……」


『ご愁傷様』


 あたしが涙ながらに訴えると、慣れ親しんだ言葉と共に、少し笑ったような、男特有の低い声が聞こえてくる。



「どこがいい?」


 次の言葉を言おうとしたあたしに、かけられる言葉。



 当たり前のように紡がれる言葉が、とっても心に沁みるから。



「いつものラブホ……」


 更に涙が出た。



 寂しいのは嫌い。



 ぽっかり空いてる心の穴が、ひと時でも埋まるなら、何だっていい。



 寂しさを感じない為には何だってする。



 寂しさを紛らわせてくれるなら誰だっていい。



 ずっとずっと変わらない。



 寂しいのは大嫌い。





 そんな寂しがり屋なあたしの事を、周りの人は「ビッチ」と言う。

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