第24話 押し問答
「ふむ。もう、平和に解決は難しそうだな。だが、出来る限り大きくならないようこちらも動こう」
「そうね。こちらはまず、守備を強めましょう」
どうしよう、私のせいかもしれないのに、何も出来ない。
――――いや、"かも"、ではない。
私のせいだ。
私が嫁いでしまったから、桔梗家が鬼神家に矛先を向けてしまった。
狙いは、恐らく私。私を陥れようとしているに違いない。
何か嫌なことがあれば、私で発散していた美晴姉様。
私のことが恥だと言って、何もさせなかった母。
私を陥れようとしているのは、明白。
そもそも、雅様を寝取ろうとまでしようとしているのだ。ここまでするのも納得だ。
…………酷すぎる。
私だけに迷惑がかかるのならそれでいい。
でも、雅様や鬼神家に多大なる迷惑をかけるのは、許せない。
それも、三ツ境国と言う他の国を巻き込んでまでなんて……。
「どうした、美月」
「雅様。今回の事、私もっ――」
「駄目だ」
――――なっ!!
うぅっ、そうですよね。
さっきまで話しておられましたもんね。
私がこのような危険な事に参加するのが嫌で、私に力が宿らないことを喜んでいた。
私を大事に思ってくださっている。それはわかっているのです。
でも、私のせいだと言うのに、私が何もしないなんて、そんなのは嫌ですよ。
「でも、雅様。私は――……」
「美月、まさかだと思うが、今回の事態は自分のせいだと思っていないか?」
っ。…………何も言えない。
そう思っているから。
でも、ここで頷いてしまえば、雅様は絶対に否定する。
私のせいではないと、納得するまで私に伝えてくれるでしょう。
でも、これは私の罪。
不吉である私が幸せになってしまった、罪なんです。
私みたいな不吉な女が幸せになってしまったため、鬼神家を巻き込んでしまった。
なので、守られているだけでは駄目なんです。私も何かしなければ……。
「美月……」
父様が心配そうに私を見る。
事態が事態だ、何も言えないのだろう。
否定も肯定もしない私を見て、雅様はなんと思ったのでしょうか。
「――――まったく、だから言ったのだ。貴様は優しすぎると」
「いえ、そんなことは……」
「だが、こればかりは願いを叶えられん。美月には、危険な目に合ってほしくないのだ」
やはり、そうですよね。
ですが、今回は折れる訳にはいきません。
すいません、雅様、本当に、すいません。
私は、言い返させていただきます!
「でも、私も今は鍛錬をしております。守られているばかりではありません」
「聞いていたか? 危険な目に合ってほしくないのだ」
「? ですので……」
「少しでも危険と感じる場所に出したくないのだ。強くなったからと言って、絶対に負けないとは限らん。かすり傷だけでも嫌なんだ。その可能性が少しでもある所に送り込むわけにはいかん」
えぇっと、つまり。
私が強くなったとしても、戦場には出させたくないということで、いいのでしょうか。
ほんの少しでも、嫌なんだ……。
う、嬉しいけれども、これで引いてはいけない!
「それでも!!」
「駄目だ」
「うっ……」
もう、何も言わせてくれない……。
でも、でも……。
モゴモゴしていると、響さんが苦笑いを浮かべながら手を上げた。
「雅、ここまで言っているんだし、少し考えてもいいんじゃないかしら」
「駄目だ。絶対に駄目だ」
「そこまで?」
「そこまでだ。少しでも俺様の前で傷を付けてみろ、失神するぞ、俺様が」
「貴方がなのね」
響さんが呆れてため息を吐いてしまった。
雅様は腕を組んで、堂々と言い切ってしまったし……。
これでは、私がなんと言おうと駄目ですね。
「で、では、戦場に出なければいいんですよね?」
「そうだ」
「なら、裏方なら動いてもよろしいでしょうか? それなら怪我をしません」
「駄目だ」
「な、なぜ…………」
これだと怪我をしないのに……。
「少しでも関われば気になって、結局前線に出たがるだろう」
「うっ……。で、でも、でも!!!」
絶対、何かお手伝いしたいんです。
何もしないで守られているだけは、嫌なんです。
私のせいで、私の罪だから。
「――――わかった。なら、約束してくれ」
「や、約束?」
「絶対に危険な事をしない、危険な所に行かない。そして、自分を責めない」
っ!
自分を、責めない……。
ばれている。
私がなぜここまで粘るのか。
私が、何を思っているのか。
「それが約束出来ないのであれば、今回は何もせず、俺様に守られていろ」
………………………………。
「わ、かりました」
「責めるなよ、約束だからな」
「はい…………」
それでも、私の罪は消えませんが……。
目線を合わせない私に、雅様は頭を抱えてしまった。
うぅ、ごめんなさい、私のせいで、本当に……。
「…………なぜ、そこまで自分を責めるのだ」
それは……。
「私が、不吉だからです」
私がこの家に嫁いでしまったから、不吉な私が来てしまったから、鬼神家は今回のように危険にさらされている。
「不吉だから、鬼神家は危険な目に合ってしまったんです。元々、私がここに来なければ良かったんです。嫁がなければ、戦争なんて起きなかった。嫁いでしまったから、雅様がせっかく平和的に三ツ境国と同盟を組もうとしていたのに亀裂を――――」
――――あ、あれ?
雅様に顔を向けると、見えたのは、私のおでこに添えられている、なんか、怪しい形を作っている、手。
「――――馬鹿者」
「え?」
――――バチン!
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