命の恩人として彼を要求します。

夜賀 響

出会い1

「おい!大人しくしろ!!」


「…やめっ、…だれかっ・・・!」


学校帰りの公園で砂場で遊んでいたら、なにやら大人が子供を叱っているような声が聞こえた。


声のする方に近づくと、同い年くらいの男の子が黒い服を身にまとった複数の大人に無理やり車に乗せられようとしていた。


これはもしかして、よくテレビでみる誘拐現場ってやつ!?


なんとかして助けなくちゃ!


・・・と思ったけど小学生の私が出ていったところで大の大人に敵うわけがない。


うーん、と項垂れた私の視線にうつったのは、ランドセルに付けていた防犯ブザー。


私がその紐を勢いよく引っ張ると、うるさいくらいの音が鳴り響いた。


「誰か―!!だれか助けてください!!不審者です!!」


私がそう叫ぶと、近所に住んでいる人や、歩いていた人がちらほら集まってくる。


「おい!お前たち何をしている!!」


ラッキーなことに、いつもこの辺を巡回している警官の人まで来てくれた。


「っち、一旦逃げるぞ!!」

「おい待て!!」


男の子を置いて、大人たちは車で逃走。


とりあえず誘拐は阻止できたみたいだ。


というか夕方とはいえこんな明るいうちに、住宅街の公園で誘拐しようとする方がある意味すごいけど……。


先程誘拐されかけた男の子は地面に座りこみ、俯いている。


「ねえ、大丈夫?」


近付いてそう声をかけた私に、男の子が顔を上げた瞬間、頭に衝撃が走った。


「…き……っ綺麗~!!!」


まるでおとぎ話に出てくる天使のような白い肌に色素の薄い茶色の瞳。そして美少女とも美少年ともとれる顔立ち。


持っていたバックが黒かったし髪も短かったから勝手に男の子だと思っちゃったけど、もしかして女の子なのかな?


「……あ、あの…?」


困ったような声が聞こえ、凝視しすぎていたことに気づく。


「ご、ごめんなさい!あんまりにも綺麗だったからびっくりしちゃって」


「い、いえ・・・あの、危ない所を助けていただき、ありがとうございました」


「ううん!無事で良かったよ!私、羽野はのあさひ!小学3年生だよ」


「僕は岳千寺がくせんじ 夜琉よるといいます。羽野さんとは同い年です」



「そっか!おうちはこのへん?」


「いえ…。歩いて帰ろうとしたら道に迷ってしまって」


この子しっかりしてそうだけど、もしかして方向音痴なのかな?


なんて思っていると、駆けつけてくれた警官の人がやってきて、とりあえず警察署のほうで保護するとか。私は家がすぐ近くだったし当事者ではなかったからここでお別れすることになった。


「じゃあねー!今度からは、防犯ブザーちゃんと持ってた方がいいよー!!」


彼、いや彼女?にそう言ってバイバイして帰った。


はあー。近所にあんな綺麗な子がいたなんて知らなかったなあ。


またあの子に会えるかな……。


今度会えたら友達になれたらいいなぁ。

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