12. 雨と記憶

雨と記憶

この前から、ずっと考えてる。

俺は、凍ノ瀬いのせが好きなのかどうか。


考えてる、んだけど……。



やっぱりよく分からない。



ーーーーーーーーーーーーーーーー



「……くん、はるくん!」

「……ああ、かえで。どうしたんだ?」

「次移動教室だけど、晴くん行かないの?」

「……あ。」

気が付くと、楓とあおいが教科書を持って俺を待っていた。

「……悪ぃ、ぼーっとしてた。」

「何かあったのか?」

「いや、何でもねぇよ。それより早く行こうぜ。」

「うん!……あ、すみません!」

「いえ、こちらこそごめんなさい。」

「ふ、藤宮ふじみやさん……!」


歩き出そうと前を向いた楓がぶつかったのは、藤宮だった。楓は顔を赤くして、必死に藤宮に謝っている。

楓は多分、藤宮のことが好きなんだろう。彼女の前だといつも、明らかに様子がおかしくなる。


俺はそんな二人を見ている蒼に視線を向けた。予想通り、蒼は切なくて仕方がないとでも言いたげな表情を浮かべている。


蒼はおそらく、楓のことが好きなんだと思う。普段はあまり表には出さないが、それでも楓と一緒にいるときはすごく幸せそうな顔をする。そして、楓と藤宮のことを見ている時は、すごく辛そうな顔をする。


俺には、この二人の想いは恋愛感情のように見える。相手のことがたまらなく好きで、相手をとても大切に思っていて、自分では抑えることのできない感情。



……じゃあ、俺はどうなんだ?

俺のこの想いは、二人みたいな真剣な想いなのか?



「……って、いつまでそうしてんだよ。早く行かねぇと授業始まっちまうぞ。」

現実的なタイムリミットが迫り、一旦考えるのは保留にした。


と言っても、これ以上考えても答えが出るとは思えねぇけど。



友情としてか、恋愛としてか。





…………どうやったら分かるんだ……?

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