水季と晴人
水晴 季
1. 水季と新学期
水季と新学期
私たちは、生まれた時からすぐ近くにいた。
親同士の仲が良くて、姉同士の仲も良かったから、よくお互いの家を行き来して遊んだ。幼稚園から高校一年生までは、ずっとクラスが同じだった。
でも、お互いなんだか恥ずかしくて、学校ではあまり話せなかった。
これから始まるのは、そんな私たちの物語。
――――――――――――――――
「いってきまーす。」
春になり、私は高校二年生になった。
通う学校が変わるわけじゃないけど、クラスは去年と変わるわけで、なんだか緊張して落ち着かない。
いつもと変わらない道を歩くと、見慣れた学校が見えてきた。昇降口へと向かい、掲示板に張り出されているクラス表の前に立つ。
(えっと、凍ノ瀬……
名字があ行である良さは、クラス表で早く名前を見つけられることだと思う。
(今年は2組か……あ、)
(灯野も同じだ。)
(そっか、今年も同じか……。ちょっとだけ、安心したかも。)
今までクラスが同じだったからといって、常に一緒にいたわけではない。それでも今までと変わらない部分に、少し安心した。
その後、他の友人の名前も発見し、さっきまでの緊張は収まっていた。
(2年2組は……ここだ。)
ドアを開けて教室に入り、黒板に貼られた座席表を確認しに行く。自分の席の位置を、振り返りながら照らし合わせた。この高校はなぜか席順が出席番号順ではないため、どこが自分の席なのか分かりにくい。
(……ん?)
もう一度座席表を確認したが、自分が間違っているわけではなかった。
本来であれば、自分の席であるはずの場所へと歩いて行く。
「……そこ、私の席なんだけど……。」
「……えっ。」
私の席に座っていたのは、灯野だった。
「は、え、席?」
「うん。私、前から4番目だから……。」
灯野はすぐに座席表を確認しに行った。
「一つ見間違ってた、悪い。」
「うん。」
ようやく自分の席に座ることができ、一息つく。
「今年も同じクラスだったな。」
背後から声をかけられ、心臓が飛び跳ねそうになった。
いつもは、声をかけてこないのに。
「そ、そうだね。」
「今年もよろしくな。」
「うん。」
一分にも満たなかった会話。
でも、それは明らかに今までとは違うものだったわけで。
もしかしたら今年は、いつも通りじゃないのかもしれない。
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