第17話 邪神教団との戦い(後編)
遠方の地ザド島国にある邪神教団本部施設、それを破壊した超大樹ユグドラシルの枝の上でおれたちと教団幹部の魔導師どもは攻防戦を繰り広げていた。
教団幹部A「ふおおおおっ!?」
教団幹部B「撃て、撃て!!」
魔導師どもが防御魔法を解いて火炎弾や石のつぶてを放ち攻撃してくるのでおれはやつらの頭上に指でいくつもの円を描いてやった。
ミキオ「マジックボックス、オープン」
やつらは防御魔法を解いているため、面白いように吸い込まれていく。マジックボックスの中は時間の停止した別次元、通称“無明空間”なので彼らも入った瞬間に細胞の活動が停止し、生体活動が凍結した状態になるのだ。いくつものマジックボックスが開いては閉じ、あっという間に魔導師は一掃された。
ミキオ「イージーモードだな」
ザザ「いや、そりゃお前がバケモノだからな!」
ひとをバケモノ扱いとは失礼な。もっと他の表現があるだろう。そう思っていると瓦礫の下からひときわ大きなエネルギー球が浮上してきた。その中央にはさえない中年の小男が法衣を着て立っている。
教祖「…ユグドラシルを召喚させるとは信じられないね…理由はわからないが、どうやらまあまあのレベルの召喚士がここに来てるみたいだね」
ザザ「もしかしてラスボス?」
ミキオ「お前がこの教団の教祖か、名前は?」
教祖「言わないよ。どうせそれが召喚魔法の発動条件だったりするんだろ。君こそ何者だ、何故こんなことをする? 目的はカネか? 教団の秘宝か?」
ミキオ「単にムカついたからだ」
教祖「何を子供じみたことを…」
ミキオ「お前を許す気はない、おとなしく捕獲されろ。このまま攻撃すればお前は肉体を損なって苦しみながら死ぬ。いま降参しておれのマジックボックスに収まってくれれば生命活動は凍結されるが少なくとも死ぬことはない」
教祖「…なめられたもんだね、どうも…」
クロロン「やばいよミキオ、あいつこそが転移魔法の大魔導師だ!」
パチン! 教祖らしきおっさんが指を鳴らすと、緑色のビームがおれたちの周囲に正円を描き転移魔法発動のシークエンスが始まった。
ザザ「うわあっ!?」
次の瞬間、おれたちは氷山が山脈の如く居並ぶ極寒の地に出現していた。
アルフォード「こ、ここは!?」
ザザ「さ、寒っ!」
教祖「北極だよ、見ればわかるだろう」
影騎士「無詠唱でこの人数を北極まで転移させるとは…!」
教祖「君らが何者かはもうどうでもいい、ここで凍えて死にたまえ。僕はお先に失礼させて頂くよ、さらば」
パチン! 教祖らしきおっさんが再び指を鳴らし、転移魔法発動のシークエンスが始まった。今度は円を小さく描き、自身の体だけを包んでいる。消えゆくおっさんを見ながらおれは赤のサモンカードを北極の大地に置いた。
ミキオ「エル・ビドォ・シン・レグレム、我が意に応えここに出でよ、汝、邪神教団幹部のチビのおっさん!」
しゅばっ! カードの魔法陣から紫色の炎が上がり、中から教祖らしきおっさんが出現した。
教祖「な、何!? 戻ってきた…そんなバカな!?」
ミキオ「おれはどうやら最上級召還士らしくてな。結構アバウトなコマンドでも召還できるんだ」
教祖「…く、油断したな…念には念を入れて魔法障壁を張っておくべきだったよ。それじゃあ最上級召還士サンに敬意を表し、ここで大邪神様の人身御供になってもらおうか!! ケル・エヴェド・ゼル・ギル・ゾロード! 邪神救世光!!」
バシュバシュバシュ!おっさんが魔法杖を高く掲げると光球が出現し、その球から無数の光弾が放射されおれたちを襲ってきた。
ミキオ「マジックボックス、オープン」
すかさずおれは人差し指で空中に巨大な輪を縦に描きマジックボックスを開いた。光弾はすべてマジックボックスの“無明空間”の中に消えていく。
教祖「な、何なんだこいつは…意味不明だね、付き合ってられないよ!」
パチン! おっさんが再び指を弾き、転移魔法のシークエンスが始まった。
影騎士「く、また転移を!」
ザザ「逃げられるぞ、ミキオ!!」
おれは凍てつく北極の大地に青のアンチサモンカードを置いた。
ミキオ「逃がすわけがない。ベーア・ゼア・ガレマ・ザルド・レウ・ベアタム、我ら4人、意の侭にそこに顕現せよ、邪神教団幹部のチビのおっさんの近く」
教祖「ハアッ、ハアッ…南方大陸ジオエーツのミオ・クオ高原、に転移できた筈だ…何が最上級召還士だ、今度は魔法障壁をフルシールドにしてるからさすがに召還させられないだろう…」
爽やかな風の吹く温暖な高原で安心していた教祖らしきおっさんの目の前におれたちは黄色い炎を伴って出現した。
教祖「な、何だと!?」
アルフォード「さ、寒かった…」
ザザ「死ぬかと思ったぞ、コノヤロー!!」
ミキオ「何度やっても同じだ、観念しろ」
教祖「どうやってここに!? 転移魔法…いや、まさか“逆召喚”か!?」
ミキオ「正解」
教祖「く、禁断の魔法を簡単に…いや、だが、さっきから何度も召喚魔法を使っているようだけど、逆召喚なんてハイレベル魔法をこんな複数人数に使ってしまったらもう君のMPは残ってないんじゃないのか?」
ミキオ「かもな、だがそれはお前も同じだろう。もう3回も転移魔法を使っているぞ」
教祖「ハハハハハ! あいにくだけど、僕には攻撃魔法もあるんだ、まだここで君たちをひねり潰すくらいのMPは残っているんだよ!」
ミキオ「…残念だったな、おれはMPゼロでもお前を倒せる。もうお前のタイムアップのカウントは始まっている」
おれがそう言い切ると、もう教祖らしきおっさんの身体は足元から消えかかっていた。
教祖「何をわけのわからないことを…な、馬鹿な!? これは一体!?」
ミキオ「北極でお前を召喚した時に5分後の返還先のコマンドをマジックボックス内部の“無明空間”に指定しておいた。あれから既に5分間が経過した。お前は絶対に抵抗できない神々の秘術によって永遠に時間の停止した世界に行くことになる」
教祖「く、くうううっ!! そんな! そんな馬鹿なあああぁっっ!!!!」
教祖とおぼしき小男のおっさんは消えた。言った通りマジックボックスの“無明空間”に行ったのだろう。これでやつは俺が取り出すまで永遠に時間停止の牢獄から出てくることはない。
ザザ「決まったな、ミキオ!」
影騎士「おぬしがここまでの強者とはな」
アルフォード「さあ帰ろう、フレンダたちが待っているぞ」
ミキオ「残念ながら、もうMPもHPも空っぽだ…8時間熟睡すれば回復するから、それまで待て…」
おれは猛烈な疲労感と睡魔に襲われ、その場に倒れた。
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