63話

第63話

その喫茶店に入った。


「二年ぶりよ。楓ちゃんはどう?」


 玲子は足を組んだ。楓は、笑いながら、照れくさそうに言った。


「宏雪と付き合っています」


「そうか、今でも付き合っているね。でも、駿君に会っている?」


「会っていないよ。玲子先輩」

「まだ、許せないの。楓ちゃん」


「まだ、許せないとか違うの。ただ、駿には頑張ってほしいし、

 それぞれの道は、違っていたしね。駿を好きになった事は、

 後悔してないし。後悔はしたくないの。あんな別れ方をしたけど、

 二人にとっては、良かったと思っているんだ。良い思い出なんだ」


 楓は、きっぱりと言った。二人は、色んな話をして、喫茶店を出た。


 二人は、それぞれに歩いて行った。


 それから、数日後。桜道の桜が、満開になっていた。宏雪と楓は、

 手を繋いで歩いた。


「宏雪、この間、玲子先輩に会ったの。早く大学に行こう。わぁ、

 桜が奇麗だね」


 楓は風で吹く髪を手で抑えた。宏雪は楓に近づきながら、歩いていく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る