帝国最強の人類兵器、戦記記録

第1話 帝国禁忌の切り札

暗闇が支配する円卓の空間に13人の者達が席に着く。

穴が空いた天井から差し込まれる月光が円卓を照らしつけ、光が強まったタイミングで会議が行われた。


「良くぞ集まってくれた。十二使徒アンチテーゼよ」

「皇帝陛下の命とあれば我々はいつでも馳せ参じます」

「「「皇帝陛下の逢瀬のままに」」」

「うむ。それでは本題に入ろう。我がアザーペント大帝国は非常に戦況と経済活動共に不利な状況下である。支援国も限界ギリギリ。このままでは敗北するのは時間の問題だ。そこで」


一泊置いてそれを口にする。


「SSS級極死刑囚、人類兵器シルバーの釈放、重ねて戦場投下する事にした」


その一言に場の静寂が破壊される。

すると、十二使徒アンチテーゼの一人が声を上げる。


「皇帝陛下!もう一度ご検討願います。確かに史上最年少熾天使にして国家を単独転覆させた実績を持つとはいえ、人類兵器シルバーは、我が侵略帝国軍10万人を同胞を殲滅したのですぞ!」

「おい第二使徒。皇帝陛下の御意見だぞ」

「だがしかしだな」

「第二使徒は古くて情弱過ぎますわね。本当に私たちと同じ使徒ですの?」

「第七使徒風情がつけあがるなよ」

「黙れ第二使徒。皇帝の手が見えぬのか」


皇帝は手をグーにして天に振りかざす。

そして再び場は静寂を取り戻す。

振り上げた手を下げてから皇帝は言葉を紡ぐ。


「第二使徒の言い分はもっともだ。一度裏切られた者を信じがたいのは皆同じこと。だが、シルバー投下以外の方法では我が帝国は戦況を返せないのた。それに、彼が自軍を殲滅した理由は不当な侵略に加え捕虜命令ではなく殺害命令を出した事だ。他国からすれば大義は彼の方にあった」


その発言に第二使徒は沈黙せざるを得なかった。

そして、会議は終わり、人類兵器釈放と投下が決定され。

僕、シルバー・アルハイゼンは外にでた。


『………』

「2年間も幽閉されて言葉も話せねぇか?」

『話せるよ上司。ただ外に出れるとは思ってなかったから驚いてたんだ』

「それもそうか」


このご年輩の人はエルマー・ドゥワァさん。

僕の直属上司だ。

自軍を殲滅した時は色々と迷惑をかけてしまった相手である。


『……僕のせいで色々すみませんでした』

「いや良い。シルバーを利用してスピード出世したツケがあの時に来ただけだ。それよりこれ」


そう言って二つのグローブを出す。


天使魔道手袋シエル堕天魔道手袋ルシファだ。どうやらお前以外は使いこなせないらしくてな。使徒に保管を命じられてたんだ」

閻魔魔道手袋サタン天神魔道手袋ウリエルは人の手に?』

「いや、あの手袋はお前以外の奴が触れると拒絶して試みた何人もの軍人の片手を消し飛ばすんだ。だから、危険すぎて第一使徒が保管している」

『そうか、ありがとう上司』

「良いってことよ。それより久々の戦場、気をつけろよ。この後すぐに準備してガルド最終前線に投下だ」

『わかった』

「あとお前の階級は形上は熾天使セラフィムだが、実際は大天使アルカイだから」

『一番下じゃないだけマシだ』

「変わらねぇな」


そうして僕は上司と暑い握手をしてわかれた。




ーーーアザーペント大帝国 軍階級ーーー


十二使徒アンチテーゼ…軍の最高責任者にして司令塔・軍幹部。

熾天使…帝国軍の最高戦力者。

智天使…精鋭部隊。

座天使…大隊員長。

主天使…大隊員。

力天使…中隊長。

能天使…中隊員。

権天使…小隊長。

大天使…小隊員。

天使…雑用担当・新兵。

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