僕の青春

花園眠莉

僕の青春

 高校二年生の初め、僕に青い春が訪れた。最初は所謂一目惚れだった。ふわふわとした柔らかい声とキラキラとした長い髪に僕の心は奪われた。彼女の名前は日高優さん。その名の通り陽だまりのように優しい。こんな僕にも笑顔で話しかけてくれた。それをきっかけに少しずつ彼女と話すようになった。話していくと段々と色々な面が見えてきた。


 家が遠いから朝の時間がないのにメイクを毎日してきていること。ご飯を一生懸命もぐもぐしているから食べるのが遅いこと。ものすごい負けず嫌いだからその分沢山努力していること。歩く時にぴょこぴょこという効果音が似合いそうなこと。可愛いものが大好きなこと。泣く時は目が溶けてしまいそうなこと。どうしようもなく可愛いなと思っても本人に伝えられない。


 気がつけば五月の中旬に差し掛かっていた。相変わらず僕と日高さんの距離感は変わらないままで、学校でタイミングが合えば話しているだけ。近づきたいけれどどう近づけばいいのかわからない。彼女は周りと馴染んで沢山の人に囲まれている。その人達に混ざって話す勇気など僕は持ち合わせていない。もし、持っていたら彼女と更に仲良く慣れていたのかもしれない。


 ある六月の日、僕は失恋した。日高さんに恋人ができた。直接言われたわけじゃないけれど恋人特有の甘ったるい雰囲気を感じた。相手は市村尋也。身長が高くていつも眠たそうな放送部員。ずっと彼女のことを見ていたのに気が付かなかった。


僕は日高優さんの「おはよう。」と笑いかけてくれるところに恋をした。


僕は日高優さんの努力家で自分に厳しいところに恋をした。


僕は日高優さんの泣くほど悔しがるところに恋をした。


僕は日高優さんの他人のために行動できるところに恋をした。


僕は日高優さんの誰かを思いやれるところに恋をした。


僕は日高優さんという素敵な人を好きになれたことに感謝している。


僕に恋という二文字を教えてくれたことに感謝している。


もうこれ以上好きになれる人が現れないのではと思うほど貴女に恋をした。


日高優さんの全てが好きだ。


……だから彼氏と幸せそうな笑顔を浮かべる姿も好きだ。


もっと僕に勇気があれば告白できていたのかな。


……でも日高さんは頑張ってアピールして市村と付き合ったんだもんな。


勝てないか。


おめでとう、僕の青春をかけて好きになった人。

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