二:新たなビジネス展開


 パイとデルタは、ホバードローンスクーターの試作品を使って、次の段階へとビジネスを広げることを考えていた。ネオ・トヨスの裏路地で集まる人々の中には、スリーエーに不満を持つ者たちも少なくなかった。そんな彼らにとって、スリーエーから奪った物資を改良して提供することは、ささやかな抵抗の一環として受け入れられていた。


「これを使って、自由に移動できるようになれば、奴らの目を気にせず生活できるやろ」パイはホバードローンスクーターを指差しながら言った。「これなら、追っ手からも逃げやすくなるし、何よりカッコええやろ?」

 デルタは微笑んだ。「確かに、便利そうですわね。ただ、見つかった時のリスクはありますわ。安全に使ってもらうためにも、購入者には使用方法と注意点をよく説明しないといけませんわね」

「そうやな、それも含めてビジネスや。うちが説明するから、デルタはデモンストレーション頼むわ」パイは笑顔でデルタにウインクをした。


 二人は、ホバードローンスクーターの性能を路地裏でデモンストレーションし始めた。デルタがホバードローンスクーターに乗り、狭い路地を自在に滑空する姿は、見物人たちの注目を集めた。その姿に、集まった人々から歓声が上がった。

「すごい! あんなにスムーズに動けるなんて!」

「スリーエーから奪った物資で、こんなことができるなんてな……」

 パイは群衆に向かって声を張り上げた。「さあさあ、みんな見ての通りや! これが新時代の移動手段、ホバードローンスクーターや! スリーエーから自由を取り戻すための一歩を踏み出そうやないか!」

 群衆の中から数名が興味を示し、実際にスクーターに乗って試してみたいと申し出た。パイはその一人一人に丁寧に説明をしながら、彼らが安全に使えるようサポートした。

 デルタは少し不安げにパイの様子を見守っていたが、彼女の説得力ある話しぶりに安心感を覚えた。「パイさん、思ったよりも人々の反応が良いですわね。これならビジネスとしても成り立ちそうですわ」

 パイは自信満々に頷いた。「そやろ? うちはただ物を売ってるんやない、みんなに希望を提供しとるんや。だからこそ、こんなにも支持を得られるんやと思うで」

 デルタも頷いた。「わたくしたちの力で、少しでも人々の役に立てるなら……それは素晴らしいことですわね」


 二人は笑顔で視線を交わし合った。こうして、彼女たちのビジネスは少しずつ成長し、人々の生活に溶け込んでいった。しかし、彼女たちの活動がスリーエーの目に留まる日は近づいていたのだった。

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