いっことよしくん物語 ~小料理屋編~
がんぶり
第1話 出逢い
よしくんが、この「小料理 いっこ」の提灯に誘われて毎晩通い詰めるようになって半月が過ぎました。
47年前の学生時代にいっことよしくんは、あることがきっかけで出逢い、短い期間でしたが友達のお付き合いをしました。
その後、二人は喧嘩別れをした訳でも無く別々の道を歩んでいました。
そして、半年前によしくんが仕事の関係で東京から神戸に異動し、いっこが三木に住んでいたことを思い出しました。
よしくんは、日毎にいっこへの思いが募り、当時のいっこの家の電話番号を頼りに緑ヶ丘駅周辺を探し回りました。
当時いっこを紹介してくれたいっこの友達は、
「いっこの家は、お店してるの。 この電話番号は、お店の電話だから電話しないでね」
ということでした。
よしくんは、いっことの連絡はいっこの友達を介して行いました。
だから、47年経った今は電話番号も変わってしまい全く分からない状態です。
「お店してたのなら、三木の商店街組合に何か手掛かりが残っていないだろうか?」
と思い、商店街組合に問い合わせても分かりません。
もちろん、今でもいっこが三木に住んでいるかどうかも分かりません。
よしくんは、最後の手段として、いっこが学生だったときの学校にメールを出しました。
いっこの学校は、女子大学だったし、不審に思われないだろうか?
そもそも、卒業生と連絡を取りたいなんて問い合わせに応じてくれるのか?
よしくんが、勇気を振り絞ったメールは、功を奏し、しばらくして、いっこからよしくんのスマホに留守電が入りました。
「よしくんですか? いっこです。 お電話お待ちしています」
よしくんは、飛び上がるほど喜びました。
いっこの47年前当時と変わらない可愛い声によしくんは、涙が出そうでした。
阪神淡路震災で最悪の想定もしていたため、いっこが生きていてくれただけでも凄く嬉しかったのです。
よしくんは、すぐさま、いっこに折り返しの電話を入れました。
いっこは、47年前当時と同じ神戸に住んでいるとのことでした。
いっこの名字は、変わったものの、今は、神出の雌岡山の麓で小さな小料理屋を営んでいるということでした。
47年間にいっこに何があったのかは分かりません。
よしくんだって47年間の間には、いろんな事があったのだから。
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