第二話 白 霞、恋心に悩む事。
夜。
(あたしは
……どうしたら良いだろう?)
だから、唐の国外には、出れない。
たとえ、
(
(
そんな短い間、恋仲になれても、あたしは満足できるんだろうか?
きっと、
心の支えにするほどに。
どうしようもなく怖い。
あたしは一人になる。恋仲になったあとに訪れる寂しさ。あたしは耐えられる気がしない。)
寝台に腰掛けた
(なんと大人とは弱いのだろう!
天真爛漫に恋を楽しみ、恋した男の胸に飛び込むのに、こんなに
……実際に飛び込んだのは
(十五歳の時は、無邪気だった。何も怖くなかった。自分が弱いだなんて、思いもしなかった。
あの若さは、どこに行ったのだろう?)
ふと、手鏡が目についた。
そこには、三十歳、年相応の女がいた。
目尻は、若い頃よりさがっている。
顎の輪郭も、垂れて丸くなっている。
なにより、毛穴が開いた。
肌質が、若い子とは違う。輝くような若い子とは……。
(
きっと好意を……。
いや、どうだろう?
彼にはあれで、日本に恋する女がいるのだ。
関係性は友人なのだ。
(どうして人は年をとるのだろう?
……
三十歳の
光り輝く若さを持った、十五歳の女として。
あの頃の
(あの姿で会いたかった。)
そしたら、いくらか、
(
あたしは、
「う……うわぁ……。」
たまらず、
「うぁぁぁぁぁ……。」
(このように想像したって何の意味があるの。時は戻らない。ここにいるのは三十歳の
あたしはきっと、彼に何も言えない。恋人になってほしいと言えない。一人になるのが怖いから。せいぜい、今、ぎくしゃくしてる状態から仲直りして、良き友人としておつきあいするだけよ。
そして
あたしは長安で、この先も、母親と、お見合いしたくない、と押し問答をしながら暮らしていくんだわ。
そうやって生きて、年をとっていくんだわ。
どうして
そこまで考えて、
───彼が中身がかっこいい人だから。
と、自分の頭のなかで、回答が聞こえた。
「あたしのバカ!」
理性では、どうしようもない恋など諦めたほうが良い、とわかっているのに、はっきり自覚した恋心は、明瞭に彼に恋してる、と主張をする。
* * *
馬と同様の扱いをされる
そして、たとえ
経典、財宝、唐で学びを終えた留学生や唐から日本に行きたいと表明した人材。全てを運ぶには船は狭すぎる。
遣唐使船はいつも、行きも帰りも、船の限界まで積荷を積み込む。
婢を乗せるくらいなら、経典を乗せる。
それが日本の遣唐使船だ、ということを、この時の
つまり、唐女の
わからぬまま、
(
と思ってしまう。
恋焦がれる男の顔を見たい、それは女の本能である。
翌日。
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