第24話 ラスボス彼女の生存ルートは今後の展開にかなり大きな影響を及ぼす。よね? ね?
「やめて! オーちゃん!!」
貨物倉庫に響き渡るレスティの声。
カルティエの麻痺が解け、回復魔法をかけたから声が出るようになったのだろう。
回復魔法持ちのアタッカータイプがいて助かった。流石俺の推しメイド。
「レスティ。止めてくれるな。こいつらはお前を攫った悪党だ。勇者の一族の仮面を被った魔王だ」
魔王はお前だよ。
「違うの! この人達は私を助けてくれたのよ!」
「しかし、こいつら以外に人影はなし。それに血まみれの制服がなによりの証拠ではないか」
「冷静になってオーちゃん。私の血は宝石になるでしょ。その人達の血は私を攫った人達の血。この人達が強過ぎて攫った犯人達は木っ端微塵になったの」
必死に説得してくれるレスティに対し、ラスボス先生は持っていた魔王の剣をしまった。
「……頭に血がのぼり過ぎていたようだ。冷静になればわかることであったな。すまない」
どうやらレスティの言葉が届いたようで、ラスボス先生は頭を下げてくれる。
「まぁ次からソフトクリームを買う時は気を付けてくれればそれで良いですよ」
「あ?」
ギロリと魔王が睨みを効かせてくる。
「勘違いするなゴミクズ。今回は私に非があるが、だからと言っておちょくって来るのならお前を木っ端微塵にしてやるぞ」
「またまたぁ。可愛い生徒にそんなことしないでしょー」
「勇者の末裔。お前を見ていると何故だが無性に腹が立つ。可愛いと思ったことなどレスティ以外にありえない」
「おっさんのデレとかいらねぇ」
「ふんっ。詫びだ。レスティの宝石はお前らにやる。行くぞ、レスティ」
怒りながら回れ右をして歩き出すラスボス先生。
「あ、待ってよ、オーちゃん」
それに続こうとしてレスティが歩みを始めるが、俺の前で立ち止まった。
「ありがとうございました。私の名はレスティ。今後ともお見知り置きを。またあなた様方とのご縁がありますように」
そう言い残して、早足でラスボス先生に追いついた。
「はぁぁぁぁぁぁ──」
俺はその場で倒れ込んでしまう。
「しんど……」
めっちゃ疲れた。死を覚悟した。まじでもう終わったと思った。
もうラスボス戦かという緊張の中での戦い。その緊張が切れた今、操り人形の糸が切れたみたいに倒れ込んでしまう。
「大丈夫ですか? ご主人様」
「なんとか生きてるなぁ」
今回は色々と収穫があった。
まず大きいのは、ラスボスが魔王の原因となったレスティの生存。これはかなり大きいと思う。これにより魔王が誕生しなければ俺は死なずに済むはずだ。たまたまのイベントとはいえ、かなり大きな功績といえよう。
次にレベルだ。
ゲーム世界に転生はしたが、自分のレベルがわからない。
ろくに魔物を倒してレベリングしていなかったが、カルティエとシャネル、それとエルメスの好感度が高かったからなんとかなるとたかを括っていたが、ラスボス第一形態には手も足も出ない程度。
程度から言うとブレイブアンドレアの中盤くらいのレベルかな。
それと、カルティエの好感度MAXでも俺のレベルが上がることがわかったのもわかった。
これ、カルティエの好感度を上げ続ければ俺のレベルがカンストするってことだよね? ね? はい、きたこれ、チート乙。とりあえずレベルカンスト定期でエンディングを迎えた方がなにかと安心だもんね。
「これは……一体なんだ!?」
扉の方でモブの声が聞こえてきた。
「っべ。カルティエ、ずらかるぞ。あ、レスティの宝石はきっちり貰っとけ。金になる。金はなにかといるからな」
「なんだか、私達が悪党みたいですね」
「そんなことはない。勇者は他人の家に押し入り、勝手にタンス開けたり、壺投げたりするからな」
「ただの犯罪者ですよ?」
「勇者の特権と呼べ。ほらほら、無駄口叩いてないで、さっさと拾ってずらかるぞ」
「あいあいさー」
やっぱりノリの良いメイドと共に貨物倉庫からモブ達にバレずにずらかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます