第21話 デートは本当になにが起こるかわからない

 前方を歩く美形カップル。


 女性の方はピンク色のショートヘア。時折風で靡く髪を耳にかける仕草をする時、尖った耳が見えた。エルフだろう。


 男性の方は綺麗な長髪を靡かせて、なんとも幸せそうに歩いている。


「あらあら。先生は学校では絶対に見せないようなだらしない顔をしていますね」


「生徒にはツンデレで彼女にはデレデレってか。良い大人のくせに」


「しかしご主人様。先生のデートを尾行しているのがバレた時、私達はどうなるのでしょうか」


「多分、死ぬ」


「ですよねー」


「でも、こんな展開を放っておいた方が後悔しそうだ。あの長髪ツンデレおじさんがどんなデートをするのか気になって夜しか寝れない」


「それは大変ですね。お昼に15分程度昼寝することで、目覚めた後に爽快感や集中力が向上することが期待されています」


「思ってた返しと違うんですけど」


「今後、夜しか眠れないのであれば私はご主人様の部屋でレゲエダンスを披露します」


「もうね、色々とツッコミが渋滞するから深くは言わんよ。それよりも大人デートの尾行とシャレこもうぜ」


「御意」


 そんなわけで、ラスボス先生とレスティと呼ばれたエルフの美女とのデートを尾行させてもらうことにする。今後、ラスボス先生がコンプラアウト発言をする度にこのネタを披露して黙らせてやるからだ。覚悟しろよラスボス。


 しかし、あのレスティという恋人というのはおそらくだが、ラスボスが魔王になった元凶といえるだろう。ラスボスの設定の中に、人間のせいで恋人を失った、みたいな薄っぺらい設定があったもんな。



「しっかしまぁ……あの先生は恋人のことが大好きみたいだな」


 ここまでの尾行を振り返ってみる。


 まず初めに、アクセサリーショップをイチャイチャしながら見て回っていた。


 これが似合う。あれが似合う。それが似合う。そんなことを言いながら色々と試着して、最後にはペアのアクセサリーを購入していた。


 次にディナーへとシャレこんでいた。オシャレなフルコースを堪能し、恋人との食事を楽しんでいた。


 最後のしめくくりは観覧車。


 ケープコッド公国は魔法の国で、テーマパークみたいな国である。街には色々な娯楽施設があり、世界一高い観覧車も存在する。


 それに先に乗り込んだ二人に続き、俺達もせっかくだし乗ろうってことで観覧車に乗った次第である。


「終始楽しそうでしたね。先生」


 対面で座るカルティエが先程の二人の顔を思い出しているのか、羨むような声を出した。


「ほんと、大好きな恋人とのデートを見せられたって感じで野次馬てきには面白味はなかったな」


 なんか特に脅迫できるような変な性癖のデートでもなかったしな。


「野次馬としては面白くありませんでしたが、結局、ご主人様とデートしている感じで私は楽しかったですよ」


「野次馬だろうがなんだろうが、ルティとならなんだって楽しいよなー」


 ふと本音が出てしまうと、カルティエも油断していたみたい。顔を真っ赤にして隣に座る。


 ガコンと観覧車が傾いてしまう。


「おい、ルティ。こんな高いところで動いたら怖いだろうが」


「申し訳ございません。ルティのご主人様への愛がオーバーリミットしました。しばらく離れることはできません」


「なんだよ、それ」


「いや、今の何気ないナチュラルな発言はルティには効きました。効果抜群です」


「昔からルティと一緒で、今までも、これからもルティといるのが楽しいってのは間違いないだろ」


「オーバーキルしてくるご主人様には天罰です。観覧車が終わった後もギュッとしなければなりません」


「そりゃまた甘ったるい罰なこって」


 内面にやにやしながらも照れ笑いを浮かべて観覧車から外の景色を見てみる。


 夜のケープコッドの夜景。視線を下ろすと、待ち行く人達の姿が──。


「なぁルティ」


「はい」


「天罰は後で受けるからさ、あれ見てくれよ」


 ちょっとマジなトーンで言ってのけると、空気が読める系メイドのカルティエは俺が指差した地上に目をやる。


「明らかに先生の彼女が数人に誘拐されていますね」


「……」


「……」


「「やっばっ!!」」


 俺達は観覧車の窓のぶち壊した。


 パリンと観覧車の窓を壊して、ガラス破片と共に俺達は地上に降りる。


 俺もカルティエもレベルが高いからか、トントントンと忍者みたいに簡単に降りることができた。


「どっちだっけ!?」


「こっちです!!」


 俺達は大慌てでラスボス先生の恋人のもとへと向かった。

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