第15話 班決まってロクなことない
「今からダンジョン実習だ。4人一組の班を組め。さっさとしろ」
相変わらずコンプラ無視から始まる担任のラスボス先生からの指示で、俺達一年G組の生徒達がそれぞれ動き出す。
「あ、あの、フィリップ王子」
隣の席の魔王四天王がひとり、黄緑色の状態異常さんこと、ハイネ・フリードリッヒが俺を呼んだ。
「ボクと一緒に──」
「ハイネ!」
彼が言い終わる前に、魔王四天王がひとり、橙色の甲冑の王道ツンデレさんこと、ティファニー・アトラスが彼を呼んだ。
「ひぃ……」
「なに怯えてんのよ。さっさと組むわよ」
「ぼ、ボクは……」
ハイネが俺を助けて欲しそうな目で見てくる。その視線に気が付いたティファニーの視線もこちらへとやって来る。
「ふん。あんたなんか入れてあげないわよ」
辛辣な言葉を受け取ったあとに、髪の毛をいじりながら小さく言ってくる。
「ま、まぁ。あんたがどうしてもって言うなら? 入れてあげても良いけど」
「おおー!」
俺はついつい拍手を彼女へ送ってしまう。
「は、は? なに?」
「いや、見事な王道ツンデレをもらって感動してんだよ」
最近、ツンデレナイばかりだったからな。
やはりツンデレは良い。敵キャラだけど、ツンデレは良いぞ。
「なにそれ、意味わかんない」
とか言いつつ、拍手をもらって嬉しそうにしているの王道ツンデレみたいで良き。
「それでどうするの? 組むの? 組まないの?」
「遠慮しとくー」
「むぅ」
ティファニーは頬を膨らませると、「ふんっ」と拗ねた顔を見した。
「こっちだってお断りよ。ほら、さっさと行くわよ、ハイネ」
「や、やめてくれー! ボクは、ボクは王子と──助けてくださいっ! 王子──!!」
「なに処刑台に連れていかれるかのようなセリフ吐いてんのよ。さっさと歩け」
「いやだあああ!」
ハイネの意見は無視されて彼は強制的に魔王四天王と組まされていた。
俺と組んでストレス緩和をしたかったのだろうな。板挟みの中間管理職みたいなポジションだろうからさぞ辛かろうに。
「南無……」
「それで、あと2人はどうします?」
「うぉ」
いきなり目の前にカルティエが現れて、さぞ当然かのような質問を投げてくる。
「おのれは忍者か」
「にんにん。くのいちメイドのルティ参上♪」
指を立てて忍者みたいなポーズで返してくる。
あー、あのクールなカルティエはどこへやら。ま、これはこれでかわいいんだけどね。
「つうか、俺とルティが組むことは決まってるのね」
「人間って息しないと死ぬよね、と同じくらい当たり前のことをおっしゃいますね」
「つまり息をするくらいに俺とルティが一緒なのは当然ということか」
「そういうことです」
「ま、俺もルティと組みたかったから来てくれて嬉しいよ」
「おっと。ご主人様からのデレを頂きました。ということは明日には結婚ですね。わかります」
「すぐ話を飛躍させるな。そんなことより、あとふたりはどうする?」
尋ねると、カルティエとは違う方向から声が聞こえてくる。
「そうだね。あと1人はどうしようか」
「うぉ」
声の方を見ると、中ボスさんよろしくの黒髪ロングの赤い瞳をした美少女、シャネル・プルミエールがいつの間にか背後に立っていた。
「おのれはアサシンかっ」
「必殺仕事人のシャネル・プルミエール見参♪ お命頂戴します♪」
「お前の場合は洒落にならんからやめろ」
「?」
首を傾げているのがちょっと怖いよ、中ボスさん。
「というか、シャネル。なにを勝手に私達と同じ班になろうとしているのですか」
「だめ? ルティちゃん」
上目遣いでうるうるの瞳を使ってシャネルがカルティエを見る。
「うっ」
どうやら美少女に美少女の上目遣いは効くようだ。
「か、勘違いしないでください。シャネルと一緒になれて嬉しいんですからね」
なるほど。この世界のカルティエは仲が良い奴にだけツンデレナイを発動するみたいだな。
「やたー♪」
幼い喜び方をするシャネルにカルティエが釘をさす。
「しかし、また泥棒ネコを発動させた場合は容赦しません」
それを言われたシャネルは、澄ました顔をしてカルティエに言ってのける。
「だったら泥棒ネコさせなければ良いんじゃない?」
「さてはあなた、また……」
「さぁ、どうでしょうねぇ」
「あなたは先生のことが気にっているのでしょ! ボソッとかっこいいって言っていたのを知っているのですからね!」
「ぎくっ」
あ、ここにも擬音を口にするタイプのヒロインがいたか。
「あ、あれはつい声に出たと言うか、自分でもわかりませんけど、わかりませんけど!」
魔王の配下というのがこびりついてんのかね。
「自分でもわからないのが恋、というものですよシャネル。ご主人様と私はあなたの恋を全力で応援します」
「やめて! 違うから! 多分違うから!」
「多分とは曖昧ですねー」
この2人って仲良いなぁ。
「悪いが、あと1人は決まってるんだ」
そう言って俺はエルメスの方へ向かった。
「エルメス。あのクソ先公を一緒にギャフンと言わせてやろうぜ」
エルメスの前に立ち、俺は手を差し伸ばした。
「お、お願い、します」
すんなりと俺の手を握ってくれるところを見ると、心の中では散々に言われたことを見返してやりたいってことなんだろうな。
「暴れてやろう」
「はい」
こうして俺達のパーティが決まった。
「ルティちゃん。あれが本当の泥棒ネコなのでは?」
「間違いありませんね」
「ひぃ……」
このパーティで大丈夫だろうか。
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