第13話 この学園で過ごす未来に不安しかないんですけども
オメガ・グローブマスターはブレイブアンドレアのラスボスである。
ブルーブラックの長髪に切長な目をしたイケメン。
数百年前、勇者によって倒さられた魔王の意思を継ぎ、世界を我が物へとすべく突如として現れた現代の魔王。
元は人間であり、魔の道を極める路の途中、魔の深い闇に触れ、先代の魔王の秘術を見つけ出したとかなんとか。それを使って禍々しいザ・魔王に変身する。
プルミエールを襲ったあとは俺達勇者パーティを直々に葬るために何度か動いていたらしいけど、すれ違いが多くて萎えちゃったみたい。あとは四天王に全振りのダメ上司振りを発動。
勇者パーティとはほとんど絡みがないままに戦闘に突入。
戦闘の最中、自分は人間のせいで恋人を失ったみたいなことを言っていたが、絡みが無さすぎて正直薄味だったね。
シャネルの方が、かため、濃いめ、多めの三段致死活用もりもりのストーリーだったから、彼女の方がラスボス向きだったな。
ま、ラスボスよりも中ボスとの因縁の方が濃いってのは他のゲームでもあるからね。ラスボスさん引きこもりであまり出番なしってのはあるよね。
そんなラスボスさんが目の前にいるんですけど。
「今日からお前らの担任になるオメガ・グローブマスターだ」
ラスボスさん俺らの担任なんですけど。
「早速だが出席を取る」
ラスボスさん、出席を取ろうとしているんですけど。
「かっこいい……」
あー、シャネルがぼやいているー。そりゃそうだよね。きみ、元々は魔王に絆されて俺達を殺そうとしてたもんね。
「綺麗だ……」
「イケメンね」
「良き」
黄緑と橙色と水色の甲冑達も声を漏らす。そうだね、キミたちは魔王の配下だもんね。
「けっ。イケスカねぇ」
そうだね、黒の甲冑くん、きみは裏ボスだもんね。
「そこのお前らうるせぇぞ。地獄の雷を味わいたいみたいだな」
ラスボスさん、自分の生徒へ勇者を苦しめた雷を出す時のセリフを吐いてくるんですけど。
「「「「きゃー♡」」」」」
魔王の配下達から黄色い声が上がっているんですけど。
これ、俺の学園生活というか、俺の未来は大丈夫なのか?
♢
なんとか初日は何事もなく学園を終えた。
俺達入学生はケープコッド寮にて寮の説明を聞いた。説明は以前に寮長さんがしてくれたものと同じだった。
「それぞれのクラスのポストに手を触れるだけで自分の部屋に運んでくれますですじゃ。では、まずはレディファーストということで、女子生徒から先に行ってくださいですじゃ」
そういえば寮長さんと校長って喋り方似てるよなーとか思っているところで。
『あ、やべっ……』
なんか、真実の鏡と同じような声が聞こえた気がするが……気のせいか?
「お待たせしましたじゃ。次は男子生徒諸君、寮に戻って欲しいですじゃ」
次いで男子達が部屋に戻って行く。
『あ、王子っすよね?』
なんか青いポストが絡んできた。
「あ、ああ」
『失敗は許されない、失敗は許されない……』
「あれ? こんなに汚い青だっけ? もっと綺麗な青だった気がするんだけど……」
『き、気のせいってばよ。めっちゃ緊張して青くなってるとかじゃないってばよ。ささっ王子様。あっしに手を触れてくだせぇ。いきますよぉ』
なんで俺の時だけやる気出してんだろうとか思う暇もなく俺は自分の部屋にワープした。
「おかえりなさいませ、ご主人様」
部屋にワープした瞬間、いつものメイド服を着たカルティエが出迎えてくれる。
「ちょっと待て。なんでルティがいるんだよ」
「ご主人様のメイドだからです」
「お前も部屋が割り振られてるだろ」
「さぁ。私はここに運ばれましたけどねー」
ぷゅーぷゅーと下手くそな口笛を吹いてやがる。
あ、うん。わかったわ。ポストがきったねぇ青色になった理由。
「お前、ポスト脅してここに運ばせたろ?」
「ぎくっ」
「擬音を口にするタイプのヒロインほどわかりやすいものはない」
「ち、違いますよー。あれじゃないですか? ご主人様と私は運命の赤い糸で繋がってるてきな感じのやつですよ、はい」
「きったねぇ青色だったけどな。ま、今はなんでも良いや……明日からは自分の部屋に戻れよ……」
俺は部屋にある備え付けのベッドに寝転がる。寮のベッドだが、寝心地は悪くないってところだ。
「はぁ……つかれた……」
俺が魔法学園に通うことで魔王が誕生しないとたかをくくっていたが、まさか担任になって誕生するとか予想できないじゃん。しかも配下もいるし……あー、くそ、これからどうなんだよ。
「ご主人様。お使いくださいませ」
そう言いながらカルティエがベッドに腰掛けて膝枕をしてくれる。
昔から知っているカルティエの優しい香りが鼻筋を通り、脳内がリフレッシュする。頭に感じる膝はメイド服越しだけど柔らかく、極上の感触であった。
「本日はおつかれのご様子ですね」
「まぁ、色々とな」
「不安、ですか?」
「わかるか?」
「何年、ご主人様と同じとお思いですか? ご主人様のことなどなにもかもお見通しですよ」
「お見通しか……」
「流石になにに対して不安かはわかりませんが、大丈夫ですよ」
優しく微笑みながら俺の頭を撫でてくれる。
「ご主人様にはルティがいます」
「そう……だな……正直、俺とルティがいれば……なにも不安なことなんて、ない……」
カルティエが撫でてくれたおかげで、俺の眠気は限界が来てしまう。
そのまま俺はカルティエの膝の中で深い眠りについた。
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