第14話 これ採っても良いんですか?
妙なダンジョンだが、手に入るものは回収しておく。武器も素材も未知のものなので、ディスカバリー・レンズでも識別不能だ。
だが、俺には異世界で手に入れた鑑定スキルがある。これなら多分……よし、ちゃんと見れた。
――――
食の神の化身グラトニーが愛用する槍。所有者は食撃魔法を使えるようになる。
――――
食撃魔法って……アレか。食い物を攻撃に使うなよ……!
見た目は明らかにふざけてるのに名前が無駄にカッコいいのも腹立つな。レア度EXってアースシアでも数回しか見た事ないぞ。
「これは魔縮石ですね……なんか白く輝いているんですけど」
こっちはディスカバリー・レンズでスキャン。
――――
【魔縮石・大(白)】 単価:時価】
――――
「時価……」
分かる。これ絶対高いやつだ。
――――
『やっぱりエクストラダンジョンは頭おかしいなw』
『これでもマイルドな方だぞ。まともを期待してはならない』
『ハクちゃんの呆気に取られた顔でご飯何杯でも食える』
『おおおお、白い魔縮石だ!! 低く見てもウン十万は行くぞこれ!』
『って事はあのデブはBランク上位の強さはあるよな……』
『マジでハクちゃんの強さが分からんwww』
『少なくともFランやEランにいていいレベルじゃないな』
『Bランクに飛び級しても良いよね』
『迷府にそんな融通は効きそうにないのが……海外なら、バンバン成り上がれるのに』
『半日足らずでボス撃破、エクストラダンジョン発見、エクストラボス撃破、未知の武器……うん、普通に表彰もんだろw
『新装備とネコミミフードのせいでハロウィンの仮装にしか見えない』
『わ か る』
『去年姪っ子がしてた仮装を思い出した。ハクちゃんって妙に母性をくすぐられるんだよな』
『幼いからじゃね? 多分ヨルちゃんより年下だぞ』
『実際、何歳なんだろ? 少なくとも都内の中学では見かけないなぁ』
『まさかの小学生? それとも高校生?』
『どっちでも可愛いからヨシ!!』
――――
訳の分からないボスのせいで、視聴者がついてこれてるか心配だったが、むしろこれが当たり前らしい。エクストラダンジョン……色んな意味で恐ろしい場所だ。
年齢? 魔王だから多分三桁、四桁は余裕かと。
「ダンジョンキーはゲットしましたが、まだ見てない所があるので見ておこうと思います……ウィン、行くよ」
「ケフ……あ、うん!」
デブリッチ――もとい、グラトニーを食してご満悦のウィン。
探索を再開するが、他の魔物の気配は全くなかった。ただ、皿の上には多種多様な料理が出来立てで並んでいる。今まさによそわれたような感じだが、その仕組みは謎の極みだ。
ディスカバリー・レンズの情報では、実食可能な高級な魔物食材が使われているらしい。そのお値段は……凄いとしか。
それをここで食べられると言うのなら、確かに破格のダンジョンだな。ダンジョンキーの高騰も納得だ。
――――
『骨山に来た。もう行列が出来てるんだけど? お前ら平日だろ』
『そういうお前も平日に来てるじゃねぇかwww』
『草。視聴者以外の連中も来てそう』
『リッチにぶちのめされるか、熱凶させて死にかけるにお前らの魂かけるわ』
『俺も来てみたけど、いる奴ら魔法職ばっかでマジ草。まだ条件は確定してないのに』
『食材目当てで入ろうとしてるけど、あのデブリッチBランク上位暫定だろ。死にたいのかな?』
『どれだけBランクに届いてる奴がいるのか……』
『骨山の難易度見直されるし、入るなら今しかないわな~』
『魔法使いばかりでPT組んでるアホもいてワロタ』
『まあ、熱凶させなければFランクだから(震え声)』
――――
えー……外はなんか偉い騒ぎになってるようだ。つーか、そんなに俺は注目されてるのか? 視聴者数を見ると――。
「うぇ⁉ 同接一万!?」
は? ど、どゆことですか?
始めた時は60人くらいだったよなぁ!?
――――
『え、今更⁉』
『全然気づいてなかったのかwww』
『抜けてるなぁ……』
『みんなハクちゃんの事、見てるよぉ^^』
『ウィンちゃんも見ろ』
『これで収益化も投げコメも出来るねぇ』
『チャンネル登録6000人超えてるよ』
『SNSで告知アカウント作った方がいいかもね』
『二日でこれはマジで凄い』
『ワイ、古参。名乗っておいて良かったwww』
『二日で古参とは一体』
――――
す、スゲー……ネットの世界って……超。
「皆さん、ありがとうございます!」
そりゃいずれは、と思ってたけどこんな短期間で登り詰めるとは想像してなかった。収益化の条件もクリアしたようなので、後で申請しておかないと。
「ハクア様~、あそこに何かあるよ」
コメントとやり取りしていると、ウィンに肩をチョイチョイ突かれた。
「ん、どうした?」
「あれ! なんか凄いキラキラしてる!」
「え?」
俺が視線をやると、配信ドローンもそちらへフォーカスする。
「木、か?」
デカい台所の世界に一本の木が生えていた。枝には赤・橙・黄・緑・青・藍・紫の七つの木の実がぶら下がっている。
また食材か。
ディスカバリー・レンズに読み取らせた。
――――
【全能の木】 単価:測定不能
特殊効果:各ステータスを永続的に上げる木の実を一か月サイクルで実らせる。
――――
「は?」
あまりの事に素で声を漏らしてしまう。
いや、これ要はドーピングアイテム、だよな。単価が測定不能って……。
チラリ、とコメントを見ると案の定、物凄い速度で流れていた。俺の動体視力なら追い付けるけど、殆どが意味のない叫びや「やべぇ」、「どうなってんのぉ?」、「!?」と言ったモノばかりだ。
俺も分かる。これはガチでヤベェもんだって。
ど、どうすんだ? 流石にこれは……採って良い物じゃないよな? 調査が入るまで現状維持させて……いや、でも入るにはベリアルリッチを条件付きで倒さないとだめだし……
「あの……、これ採っても良いんですか?」
――――
『良い』
『おk』
『絶対取るべき。誰もが欲しがる。遠慮なんてしちゃだめ』
『どうせ一か月サイクルで採れるんだからモーマンタイ』
『採る』
『採らないでどうするんだよw』
『ハクちゃん、マジで身バレには気を付けて』
『外の連中はベリアルリッチの熱凶化が出来なくて沼ってるし、今の内に採っちゃえ採っちゃえw』
『全能の木って、世界に六本しかなかったよな』
『内、四つがエクストラダンジョンね。入る条件が厳しいからダンジョンキー所有者の独占状態』
『残りは予約制だけど、向こう数十年先まで一杯だってさww』
『七本目かー。でもここも入るの、絶望的に厳しそうだな(笑)』
――――
法律では、ダンジョン内の拾得物の権利は発見者になる。つまり俺が木の実を拾っても問題ないわけだが……効果が凄すぎる上に、同接一万の大観衆に見られながらの採取は流石に躊躇う。
採るけどさ。
「ウィン、後で食べるか?」
「良いの?」
「もちろん」
俺が食っても意味ないだろう。あったとしても、木の実を食した際に増える増加量は1で固定のようだ。
それでもレベルアップなしで全ての能力を向上させられるのは、あまりにも強すぎる。最早、値段も付けられないのかオークションに出回る事さえない。単価が測定不能になるのも当然だ。
「ありがとう、ハクア様!」
ベリアルリッチの熱凶化から始まり、エクストラダンジョンとダンジョンキー、グラトニーと
「――では、そろそろダンジョンから出ようと思います。外が凄そうなので」
ダンジョンキーを使えば即外に出られる。受付で清算したいんだけど……、出来るかなぁこれ。
「今日は沢山来ていただき、本当にありがとうございました! 次の配信は告知用のデイッターアカウントを作ってお知らせしたいと思います! 良かったらフォローの程、お願いします!」
こうしてあまりにも濃すぎる二日目の配信が終わるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます