第五回
メンテナンスがあるから、僕はログアウトしてゲームを終了した。今日は早めに寝よう……はぁ。
早く寝たせいで、すごく早く目が覚めた。目覚まし時計を見ると、普段よりたったの5分しか早くない!
いつも通りに身支度をして、朝食とお弁当を準備する。そうすると、ようやくお父さんとお母さんが起きてきた。挨拶を交わして、僕は家を出た。
いつも通り、裕貴と亜美がすでに待っていた。裕貴と亜美は僕の幼馴染で、僕たちは幼稚園の頃からの付き合いだし、毎年のように同じクラスになっている。亜美はいつも「これは運命というより呪縛だね」って笑うけど。
裕貴と亜美はネットゲーム廃人で、ほとんどのゲームは亜美が先に始めて、僕たちもその後でプレイするようになる。だけど、明らかに亜美は僕たちよりゲームに費やす時間が長いのに、成績も僕たちより良いんだ。正直、不公平だよ! でも、僕がそう言うたびに、二人とも『まずは鏡を見ろよ』って言うんだ。なんなんだよ。
裕貴が近づいてきて、僕の肩をポンと叩きながら言った。「災難だったな。」
僕は昨夜、ゲームを手に入れたことやゲーム内での出来事を二人に全部話していたから、状況はわかっていたんだ。
「で、下は無事だった?」
亜美がいたずらっぽく笑いながら言った。普段は優等生っぽい亜美だけど、僕たちの前では下ネタをよく言うんだ。これを他の人が知ったら驚くだろうな。
「無事だよ。僕、ログアウトしてすぐに確認したんだから。」
「それは良かったね。」
でも、その声色に全然「良かった」感はなかった……
「そんなこと言わないでくれよ。あそこぶつかっただけでも超痛かったんだから、切られたら……」
「女子だってわかるよ、だからさっきはごめんね、紫苑。女でも股間蹴られたら痛いに決まってるでしょ。」
「本当に? でも、漫画だと……」
「あそこは神経が集まってるから、当然感じるんだよ。感覚が敏感なら、痛みも同じだって。」
「さすがエロ優等生。」
電車に乗ってからも、僕たちはさっきの話を続けた。
「で、二人はどんな感じ?」
「順調だよ。最高レベルのスキルがもう3レベルになった。」
「僕と同じだね。」
「マジか。」
「【武侠奇縁】は初心者クエストクリアした時点で3レベルになるんだよ。」
「いいなぁ……俺たちはまだ2級だよ。」
「で、二人の職業は?」
「『奇幻秘境』もスキル制だから職業はないんだ。でも俺はタンク、重戦士とかやるつもりだ。」
「私はこの可憐な女子だから、当然後衛の魔法使いでしょ!」
『可憐』なんて言葉を聞いて、僕と裕貴は一緒に亜美をじっと見つめた。
「何よ~!本当に可憐なんだから!」
いや、こっちをそんな目で見ても無駄だよ…… 僕だってもう、あの「スカート似合わない」発言の結果を覚えてるからね……
学校に着いて、靴を履き替えた後、僕たちは教室に向かった。たぶん小学校の時に初めて会ったあの日からだろうけど、今の高校2年生になるまで、僕たちはずっと同じクラスなんだ。これって、運命を超えて呪縛だよね。
教室では、みんなが新しいVRMMOについて話していた。僕と同じように間違って買った子もいて、その子は【星海の夜】っていうSF系のVRMMORPGを手に入れたんだって。その他の三作との大きな違いは、【星海の夜】では宇宙船を作って、異なる惑星間を移動したり、宇宙戦をしたりできるところだってさ。
それ、めっちゃ楽しそうじゃん! まさに男の子の夢だよ! なんで僕のは【武侠奇縁】なんだよ!
あ、そういえば【荒漠恋曲】って【武侠奇縁】より人気ないっぽいよね? 少なくともクラスでは誰もやってないみたいだし。いや、ただ恥ずかしいだけかな?
ホームルームの時、担任の先生がその話題を取り上げてきた。しかも、先生がプレイしてるのは【荒漠恋曲】だって。意外すぎる……
いや、別に、こっちをそんなに睨まないでください、先生。西部劇が男のロマンだって? 僕にはわかりませんよ…… 僕たちはまだガキですから。
ついに放課後。僕たちだけじゃなく、帰宅部の生徒たちもみんな急いで家に帰って、新しいVRMMOを続けたくてたまらない様子だ。裕貴と亜美と別れる時、亜美が心のこもってない優しい声で一言言ってきた。
「頑張ってね、紫・苑・お・嬢・様!」
亜美の悪意満々の笑顔、ムカつくなぁ。たぶん、僕が追いかけて殴るのを恐れて、言い終わる前に全速力で家に走り込んでいった。残された裕貴は僕の肩を軽く叩きながら一言。
「お前、頑張れよ。」
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