第18話 夏休みは終わりました②

「二年前。信号待ちのときに後ろの人が騒いでいて、ぶつかって道路に押し出されたときに、君が俺を支えてくれた。お礼を言う前に去られてしまったけど、制服姿から探したんだ。まさか同じ高校に来るとは思ってなかったから」

 二年前。確かに今散る運命にない魂が危険にさらされて、思わず手を差し出した記憶はある。

 そのときの心のざわめきは、魂の危険を察知したからだと考えていたけど、違ったみたいだった。


「そうだったの。なに?お礼を改めて言うの?」

「違う。命を救ってくれた人が思っていたよりも不思議な人だったことに対して、驚いているんだ」

「人間ってそれぞれ個性があるじゃない」


 九条のことでなくのかなって勝手に考えてたけどそうでもないみたいだ。一体この人は何が言いたいんだろう。

「そんな不思議な命の恩人が、九条サンの寂しさに気が付いてお昼誘ったのかと思たんだ」

「私は聖人君子じゃないわよ」

 どちらかと言えば命を奪う側の人間だったし。

 もしかして宮本先輩は九条のことを前から知っていたのかしら?そんな口ぶりに聞こえてくる。


「実は二人、付き合ってたの?」

それなら常に傍にいてあげればいいじゃない。学年が違うかもしれないけど。

自分の考えに、心臓に何か重しをのせたような感覚になる。何なんだろう。二人といるのは嫌いじゃなかったのに、受け入れられない感情が渦巻いている。


「違う。子どもの頃仲が良かったんだ。再会したら昔の笑顔が見えなくて、気になったんだ」

「ごめんなさい。正直に話すと、意図がみえないんだけど」

 少し腰を浮かせ、ズボンのポケットから何かを取り出した。

 ぐじゃっと降り曲がった白い封筒には私の名前が書かれている。

「多分先生から九条サンの事何も聞かされてないだろ?母親同士が仲良くてコレ預かって来たんだ」

「手紙?」

「そう、九条サンの部屋を片付けてたら出てきたんだって」


 受け取った手紙の文字は、整っていて、優しい字だなって思った。

 宮本先輩は、前髪をぐじゃっと、かきむしる。

「九条サンと夏休み一回だけあったんだ」

「うん」

 まるで死神の前に立つ、生前の懺悔をする人のように思えてしまった。私にとっては慣れ親しんだ空気。過去を振り返ることで前に進める。宮本先輩は何か前に進みたい事でもあるのかな。


 二人が知り合いだったのが驚きだった。そこで私に手紙が来るなんて想像できない。

 ひどく静かな空間に感じた。ゆっくり絞り出すように話し出す宮本先輩。 

「同級生に、九条サンと同じ中学だった奴がいて、そいつらが噂していたことを俺は真に受けてた。実際に三人でお昼食べてるときに九条サン途中から俺にばっかり話しかけてきてただろ?」

 好きになった相手にする態度だなって、私にはそこまでする原動力が分からなかった。冷めてみてたかもしれない。自分もアピールしたい程の感情を自分の中にたぎらせてないから、すごいなって思っちゃった。

「俺は昔みたいにまた話したいって思ってたし、九条サンのことは好きとかそう言う気持ちはなかったんだ」


 チラッと私のことをみる。瞳に宿る熱は、どこかで見たことがある。

 九条が宮本先輩に向けていた視線。

 彼が私に会うたびに向けていた視線。

 どうして今そんな視線を私に向けられるの?私は貴方のこと特別かもしれないけど、どこまで好きか明確な答えが出せていない状況なのに。

「ハッキリと九条さんから告白されたの?」

 好きとか嫌いって、そんなに重要なことかしら。

 私は愛を知りにきていて、嫌いでも付き合える気はするし何がそんなに悩むことなのかな?


「……さっき話した、夏休みに一回だけ会ったって言ったろ?そのときに告白された」

 ドクンと、自分の心臓の音が宮本先輩に聞こえちゃうんじゃないかって思った。大人しそうにみえて、好きな人ができると挑戦的になった彼女。

 私には真似できる自信はない。芳田のが私に近い面がある気がした。最低限のコミュニケーションでよくて、自分をよく見せるために相手にすり寄ることはしない印象だった。

 どう、言葉をかけてあげるのが最善なのかな?好きな人も居ないし、好きになりたいってだけだから。

 いや違う。好き嫌いは関係ない。私が知りたいのはどんなに生まれ変わっても変わらず愛を語れる彼の感性。

 それならば、私が一番意識して関わらないといけないのは九条や吉田じゃなくて宮本先輩、本人だったのかもしれない。


「……自分が九条さんを振ったから、いなくなったって思ってるの?」

 静かな声が出た気がした。心臓は短距離走を全力疾走したくらいにドキドキしている割に、感情は落ち着いてきている。

 宮本先輩は泣きそうな顔をしている。初めて階段下から声をかけてきた自信あふれる姿じゃない。学校一モテてるって印象ではなかった。

「好きじゃない、どちらかといえば妹みたいな感じでいたから、告白されて正直困ったんだ。俺が好きなのは……」

「それは、愛じゃないの?」


 愛には種類が、あると教えてもらってるから。家族愛、友愛。男女の仲だと恋愛って表現になる。

 愛おしいと好きと、愛してるって違うからかしら?

 ラブとライクの違いみたいな感じなのかな??

「ちょい、俺がいい事を言おうとしたのに、どうして止めるんだ?」

「いいことって何よ。九条さんに対しての感情を伝えたらいなくなったから悩んでるんじゃないの」

 友達だと周囲から思われている相手が天に召されたのに、私は自由にしすぎかもしれない。

 悲しいはわからない。終わったから始まれる人生で、これから先を彼女は楽しく生きてくれればいいなって思ってしまう。


 死神に戻れば九条の魂を探すことができる。久しぶりに見た夢で予感があった。多分私は思ってるよりも早く戻ることになるって。

「加賀美サンは誰かに恋したことないの?」

「失礼なこと聞くわね。無いわ。知らないからこそ私は人が人を愛することを知りたくて今を生きてるの」

「好きな人、いないのか」

 宮本先輩の声が段々力がなくなっていく。質問をしたのは向こうなのにどうして気まずい雰囲気を出してくるのよ。


「好きと愛してるは違うと思ってるの。だから私は特に好きって感じる人はいないわ」

 愛してみたい人は目の前にいるんだけど。今それを口に出すのは不謹慎のような気がしてしまった。

「なんだか悩んでるのが馬鹿みたいになった」

「何よそれ。私のこと馬鹿にしてるのよね」

 弟以外でこんなに長く話したのは久しぶりかもしれない。思い返せば2人きりであったこともないから、宮本先輩が本当はどうして私たちのお昼に声をかけてきたのか知りたい。

 知るのは今のタイミングしかないと、直感が告げている。受け取った九条からの手紙をみたら私はココからいなくならないといけない気がする。最期に楽しいお話をする時間くらい欲しいと人間らしく願ってしまう。


「馬鹿にしてない。加賀美サンって滅茶苦茶人間らしさがなかったけど、口に出さないだけで考えてるんだなって」

「人間だし考えて生きてますけど」

 細かくいえば今だけ人間。初めてウサギに会ったときはまだ心が成熟してなかったから、悲しいって分からなかった。自分の鎌で魂を斬り裂くのは私の存在する意義だった。

 やるべきことをやらないなら生きている、存在する必要はない。存在を否定された神様は生まれ変わりを要求される。

「例えばもし今、加賀美サンが告白されたら受け入れるのかな」

「相手によるわね」


 そう、本当に相手によるのだ。嫌いな人間じゃなかったら受け入れるかもしれない。好きになれるかもしれない可能性が残ってるならそれにかけてみたいのだ。

「そうか、相手によるのか。じゃぁさ、最期に教えてよ。どうして九条サンにもう会えないのに悲しそうな顔しないの」

「終わりははじまりだからに決まってるじゃない?それに宮本先輩。九条さんはもしかしたら私なんかと仲良くしたくないかもしれないわ。そう考えると悲しむのは間違ってるのかなって思わない」

 独りが嫌と泣いていたウサギは、九条に転生してからも変っていない。

ただ私が声をかけたタイミングが悪かっただけかもしれない。私が関わらなければ宮本先輩は九条さんに心を奪われたかもしれない。


 そう考えたら私はただのお邪魔虫だったってことよね。

 弟にだって呆れられるくらい、冷めているんだもの。血の繋がりがあるからかろうじて構ってもらっているだけだと落ち込んでしまうときもあったりするのは、秘密だ。生まれた瞬間から見ている魂の成長はとても嬉しい。


「加賀美サンって思ってたよりも数十倍気持ちに疎いんだね」

 冷めていると言われたことはあるけど、疎いと言われたのは初めてかもしれない。さっき宮本先輩が言いかけていたのって、告白ってやつなのかな?ドラマとかで見たことのある流れに似ていた気がした。聞くにしても九条からの手紙を読んでからじゃないと受け取れない言葉のような気がしていた。

「人間の営みって難しいのね。どうして感情を表に出せないのかしら」

 私は受け取った手紙の封を開けるためにビリビリ破り始める。何が書かれていたとしても受け止める。 二回もウサギの魂の行く末に関わったんだもの。それが礼儀のような気がした。


「お前も人間だろうって」

 私が開封の儀を始めたからか、立ち上がろうとする宮本先輩のワイシャツの裾を引っ張った。

「今は人間かもしれないわね」

「ちょ、いきなり引っ張るな」

 その場に転がるようにしゃがんだ宮本先輩。睨みつけてくる瞳さえも憎らしく感じない。

 手紙を開けながら、九条はウサギだった頃を思い出したのか気になってしまった。

 魂の巡り合わせで偶然にも出会い恋に落ちるなんてことがあったらロマンティックじゃない。

 もしかしたら九条は鎌で斬られた過去を夢に見たりしているのかな。全くあり得ないことではないと思う。

 そばに在りたいと願った相手に理由もなく刻まれた魂が傷を負わないわけがない。

 九条が寂しがり屋の性格だったのは私が全面的に悪かったのかもしれない。


「加賀美サン俺を転ばせた理由を教えてくれないか」

 口を尖らせる姿に、年上の男の人なんだよなって自問自答する。

 私に対して変わっていると言いながらも、宮本先輩も普通じゃない気がした。普通だったら私みたいな人間に構わないと思う。家族のような血の繋がりだと仕方なく接さないといけない面もあるけど。


「転ばせたって失礼ね。私は九条さんの手紙を一緒に見たいと思ったから引き留めただけよ」

「いいのか。加賀美サン宛てってことは俺が見たらまずいんじゃないか」

「気になってるんじゃないの?例えば宮本先輩に手紙が書かれてたとしても私は見ようとは思わないし。見せて言わないから安心して」

「どうして俺にも手紙があるって思ったんだ」

 宮本先輩の動きが止まる。思っていたよりも本当に分かりやすい人だ。


「第一に思ったのは私の手紙を“見せろ”って騒がなかったから。後は、私に手紙を書くくらいなら分かりやすいくらいに好きですアピールをしていた相手に書いていないほうが少ないかなって。私に書くよりも、好きな人に最後気持ちを伝えたいのが人間じゃないかな」

 そういう人間達なら数多く見てきたから自信を持って言える。例えば急にいなくなって寂しがるだろうから一言残して来た人に言いたいだとか、喧嘩をしてきたのが最後の会話だから弁解だけでもさせて欲しいっていう人もいた。


 事前に分かっていたら人間は営みを忘れてしまう。だから急に訪れるようにしているんだよ。って誰かが言っていた。私よりも高位の神様の言葉だった気がしたけど。

「後悔って後に悔やむと書くのよね」

「突然なんなんだよ」

 不機嫌そうな声。転ばされたことに対してそんなに不満だったのかな。

「貴方の感じていることが普通ってことよ」

「……お前俺よりも年下だよな?どうして偉そうに言うんだ」

「偉そうかしら?知っていることを言っただけなんだけど」


 手紙は開封が終わり、私はザっと全部に目を通す。

 宮本先輩を好きになったことに対する懺悔と、自分がちっぽけな存在すぎて悲しくて打ちひしがれている内容。

 恋心を懺悔する意味が分からなかった。気持ちは止められないものだと聞いている。両親の結婚も最初反対されていたって言っていた。認めてもらうまでにだいぶ時間がかかったし、否定してきた奴らをギャフンと言わせるためにビックリするくらい幸せになるんだって決めてると言っていた。


 お父さんがお酒に酔ったときにこぼしただけだから、お母さんには確認はしていないけど。

 手紙を読み終え宮本先輩の方に差し出すと、宮本先輩のすい視線が揺れる。

「無表情で読めるってすごいな、俺が読んじゃ駄目だろ」

 と言いながらも視線は手紙に集中している。

 私は宮本先輩にこそ見て欲しいって思ったから、更に突きつけるように差し出した。


「感情を込めて書いたからって、相手に自分の感情全部が伝わる訳じゃない。簡単に言うと“独りでいても凛とした雰囲気がかっこよくて、好きでした”って。私は自分で選んで独りになってるからな」

 本当は一人じゃないときも欲しいって考えてるんだけどね。

 家族にすら愛していると、自信を持って言えない私。

 他人に、心を許して恋をするかもしれない。

 他人のほうが私の心の奥底をしっかりと理解しているような気がした。多くの言葉を交わしていないはずなのに。


「お前、内容勝手に話すなよ」

「言い訳が欲しいなら、私に無理やり読まされたってことにすればいいじゃない」

 私の言葉に宮本先輩は、おずおずと手紙に手を伸ばし、それを読み始める。

 百面相とまではいかないけど、これまでの彼の印象からして、怖い顔をしている。

 やっぱり宮本先輩も読みたかったんじゃないの。彼女からの手紙に何が書かれているのか。

 私を責める内容ではなく始終「自分」を責めるような内容で、何をそこまで追い詰めさせてしまったのか、想像ができなかった。


 この手紙を読んだ宮本先輩の反応で色々分かることがあるのかなって、思っている。

 ザワザワと胸のあたりが落ち着かない。何だろう。もう、ココにはいられなくなる、気がした。タイムリミットはすぐそこに来ているような、そんな感覚。

 何事もなければ私は八十歳くらいまで生きる予定だったのに。


「こんなに悩んでたなんて、俺知らなかった」

「同情で告白をOKなんてしたらそれこそ彼女の心を侮辱したことになるからね」

 拭うこともなく泣き始める宮本先輩。私はポケットに入っていたハンカチを取り出す。

「綺麗だからこれで涙を拭いて」


 躊躇うように一瞬涙をそのまま手でゴシゴシこするが伸びるだけ。

 誰かのために泣けるのは、純粋な人の証拠だと思っているから、このままでいて欲しい。

「ありがとう、洗って返すね」

「別にハンカチはいっぱいあるから大丈夫よ」

 学校一イケメンと騒がれている人は、思っていたよりも涙もろくて愛い奴なのかもしれない。


「九条サンの手紙には“好きになってごめんね”ってあるけど」

 ハンカチで鼻をかむ勢いの宮本先輩。相手が何を伝えたかったのか、私には理解しがたかった。

「ねぇ、自分の気持ちを謝るのってどんな感覚なの?」

 別に私は愛する気持ちを否定している訳じゃないし、好きなら好きと自信を持つべきだと思っている。

 両想いにはなれなくても、その想いは自分のモノなんだから。

「お前なぁ。恋焦がれたりない、んだよな。そんな真っすぐな瞳で見るな。気持ちは溢れているのにそれを相手に打ち明けられない。自分の気持ちを否定されるのが怖い、とかじゃないかな。一般的な感覚として」


 気持ちが溢れていて、それを否定されたくない……。

 私は一度も九条の考えを否定したつもりはなかった。感覚の違いから思い違いをさせてしまったなら、全面的に悪いのは私じゃないか。

「私は、学校での時間には明確な終わりがあるから。振られたりしてもいい思い出って考えるようにしていたの。それより先の世界のが長くて広くて、迷子になってしまうから」

 天命まで生きるとしたら、どうしたら自分が一番楽しい時間を過ごせるのか考えたい。悩みながら生きているほうが、生を身近に感じられる気がするんだけど。


「加賀美サン思っていたよりもしっかりした考え方してるのね。人生何回目ですか?」

「褒め言葉として受け取るわ。人間の人生は一度目よ」

 嘘は言っていない。それに神様に戻るのだから最初で最後の人生。

 もっと噛みしめて生きていればよかったのかもしれない。

「褒めてないし。それに含みのある言い方が滅茶苦茶気になる」

 宮本先輩の声に元気が戻って来た。

 良かった。彼には元気でいて欲しい。私のことで何か悩むだなんてことあって欲しくない。


「だって、私は私だもの。他の誰でもないの。今を生きている時間を有意義にできるかどうかは自分次第。九条さんが終わりにしてしまったのは残念だったけど……」



『ぴえぇぇぇぇぇ』

 声が聞こえた。懐かしいこの泣き声はもう聞くことが無いって思っていたのに。私の最初のお友達の声。

『ぴぇぇぇぇぇぇん助けて、助けてかみさまぁぁぁぁぁ』

 どうして神様と呼ぶのかしら。

 どうして今あの子の声が私の耳にじかに聞こえてくるのかしら。

 書かれた手紙を見つめる。今私の代わりに神様をしている人がいる。私と縁が結ばれていたからもしかしたら神様(仮)の所に行ってしまったのかもしれない。

 ぞわっと、背中の毛が立った気がした。

 嫌な予感がしていたけど、これか。



 私は立ちあがり、スカートから埃をパタパタ落とす。

 正装に着替えることができないけど、綺麗にしておきたい。ここでの最期の姿になるだろうから。

「ごめん、宮本先輩。私行かないと」

「どこに?」

 宮本先輩は涙が落ち着いて、イケメンとまでは言えないけど、爽やか子犬系男子くらいには見える。このままここにいたら私は恋を、「愛している」の本当の意味を知れたかもしれない。


 それよりも泣いているあの子の声が私の背中を押す。

 “助けに行かないと”って。

 私は屋上のドアのカギを神の力でこじ開ける。宮本先輩の手にはハンカチが握られたまま。

「そのハンカチ返さなくていいです。捨ててください」

 振り返って見せた笑顔は一番綺麗に見えましたか?

 答えを着たら離れがたくなるかもしれないから、聞かないでおくけど。


「おい、屋上立ち入り禁止邪」

 引き留める宮本先輩の声。お母さんに今日のご飯も美味しかったよって言えばよかったな。お父さんに花嫁姿を見せたかった。和義が成人したら一緒にお酒を飲んでみたかった。

 全部全部、憧れる気持ちを持った私の願望。死を目前とした人たちがいつも口走る「後悔」の気持ち。

 だから、目の前にいる彼にだけは伝えてもいいかな?


 最初で最後の愛の告白。


「私は貴方を愛したいんです。そのために生まれて来たけど、分からなかった。だから次に会ったときに教えてください。・・・・・・さようなら」


 私は屋上のフェンスを勢いをつけて飛び越えた。

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