ウチの学校に現れる美少女幽霊がなぜか俺に付き纏う件について

@screamblood

第1話 オカルト少女は幽霊を望む

俺の通う高校では、一つの噂が一世を、学校中を風靡している。


その噂というのは、クラスのボッチ的な存在である俺の耳にも入ってきた。


"蛍月"の見える夜、学校の屋上で幽霊に会えるのだと。


***


俺のクラスには、所謂"学校一のマドンナ"と呼ばれる生徒がいる。枝毛の一つもない艶やかななロングの黒髪を靡かせ、端正な顔立ちながら、その顔をふにゃりと歪ませて微笑む女の子。


男女問わず絶対的な人気を博すのは至極当然のことであった。


しかしその人気ゆえというべきか、ほとんどの男子生徒は眺めるだけに留まっている。


つまるところ彼女は高嶺の花なのだ。


されど、男子にも時折庇護欲を掻き立てられる仕草をするから、ほとんどの男子生徒はその心を悩ませている。


そんなお淑やかで、愛嬌もあり、容姿もよく、おまけに文武の両方に才を持つ完璧女子"神崎 美波"。


その完璧女子神崎にも一つ欠点というべきか。人には言えない秘密を隠している。


***


それは放課後のこと。


誰もいない教室に夕陽の差し込むロマンティックな光景が、それとは掛け離れた俺の心にダイレクトアタックを仕掛けているのでいち早く帰ろうとした時のことだった。


「新島くん、ちょっといい?」


会話の流れから察せると思うが、俺の名を呼ぶその声の主は例の神崎である。


「すみません、僕またなにかやっちゃいましたか?」

「ちょっと、どこぞの無自覚最強主人公の真似やめて気色悪い。それに使い方大間違いだから」

「すみませんでした」


「鳥肌が立つわ」と身震いする神崎はありえないほど冷たい目で俺を見ていた。


そんな目で見られるとぼく石になっちゃいます。


「誰がメデューサよ。いくらぼっちの新島くんといえど、あの噂くらいは知ってるわよね?」

「そのディスいる……? それにナチュラル心読むのやめてください」


どうにもこの話に乗ると嫌な予感がする。なので、巧みに話を逸らすことにした。


「知ってるのか知らないのか、それだけ答えなさい」


無理でした。


「知ってます」


入学式と同じくらいの気の入った返事に、むふりと神崎は満足げに笑ってそそくさと荷物を触り始める。


「だったら話は早いわね。今晩0時前、学校の正門集合。じゃ!」

「いや、なにが「じゃ!」だよ!? まだ俺、理解も納得もしてないんですが!?」


早々と荷物をまとめ、立ち去ろうとした神崎が「はぁ」と深々とため息を吐いて振り返る。


「新島くんがくるまでずっと正門前で待ってるから」

「ず、ずるいぞそんなのっ」

「知らないわよ! それじゃあね!」


そう俺にだけ馴れ馴れしい神崎は、もう一つ俺にしかみせない顔があった。


「幽霊、今日こそ見つけてやるわ……」


メラメラと燃える熱意を纏いながら神崎は教室を出ていく。


そう、神崎はオカルトマニアだった。それも超がつくほどの生粋のオカルトマニア。


こうして夜中に駆り出されるのは今回が初めてというわけでもない。ある夜は墓場に呼び出され、ある夜は廃校に、はたまた何の変わり種なのか謎の島にまで呼び出されたのだ。


一人取り残された俺は、どこから入ってきたのかもわからない隙間風に凍えさせられるのだった。

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