エリート厨二病患者の迷宮探索

結城 優希

第1話 エリート厨二病患者出陣

 「ダンジョンがこの世界に現れたのは……って回想してみたいなぁ〜」と、とある大学院生が妄想していたある日の夕方。突如として全人類の脳内に言語の壁を超越した"ことば"が響いた。


 "おらんとこの次元とお隣さんとこの次元がぶつかっちまったけん、でんじょんつう穴が出来ちまったんだぁ。変に触っちめぇと、おらんとこの次元が崩れちまうけん後はおめぇら下等生物で何とかしてけろ。おめぇら下等生物でも上手くできるよう加護をやったっけ色々試しながらやってけろ。"


全人類「訛りすぎでは!?」


 その頃テンプレ回想をするという夢を叶えていた件の成年、黒爪 狼牙くろつめ ろうがは家へと大急ぎで帰っていた。この男、そのままでんじょん(?)に突入しないタイプの考えなしである。


 ここで彼が趣味で揃えたダンジョン探索セットを一部紹介しよう。

 ・居合刀(真剣)五本

 ・ヘッドライト

 ・寝袋

 ・リュックサック

 ・簡易栄養食1週間分

 ・鉛筆&ノート

 ・水20L


 彼はこんなにもしっかりと、そして大量に用意していた。故に……


「無理。重すぎる。」


 こうなった。エリート厨二病患者の彼は有事(主にファンタジー方面)の際に戦える用にと居合の道場に通っていた。かなりガチで。そして段位持ちだ。とは言えそんな重い物を背負って戦うことなど想定していない。


 そこはエリート厨二病患者。エリートな彼はすぐさま切り替えて居合刀一本を腰に佩いて警察にバレないようにコソコソと混乱に乗じて家を後にしようとした。銃刀法違反で捕まるわけにはいかないからだ。謎の声とその後の世界の変化によって混乱しているとはいえモタモタしていればこの状況もいずれは落ち着きこの千載一遇のチャンスを逃すことになってしまうだろう。故に彼は急ぐ。


 急いで家を出ると庭にダンジョンが出来ていた。


「は?は!俺の祭壇がダンジョンに!?気持ち悪いと近所の人たちからの苦情もあったしそろそろ片付けようと思っていたんだが……これは重畳。バレずに突入できて最高じゃないか。」


 庭に出来ていた穴に躊躇うことなく突入する彼。入った瞬間彼の脳内にはあるメッセージが届けられた。


 "Welcome to this dangeon.you are the first explorer."


「ダンジョンじゃなくてデンジョンじゃねぇか!なんだよデンジョンって!」

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