第33話

目を覚ました彼は、ベッドの端で身を守るようにして縮こまりながら、ガタガタと身を震わせて怯えていた。



無理もないだろう。



見知らぬ場所に見知らぬ人。



異常なくらいに人に怯える彼が今までどんな扱いを受けてきたのか、予想がついてしまう。





『お腹、空いたでしょう?』



怖がらせないように屈んで彼の目線に合わせると、ぎこちなく微笑んだ。



彼は私の顔を不思議そうにじっと見つめてる。



もしかして生まれて初めてかもしれない自分の笑顔が相当不気味だったのかと落胆したが、彼の目は〝そんな表情は初めて見た〟とでも言いたげできょとんと首を傾げていた。



やがて気を失う前の出来事を思い出したのか、彼の体の震えがおさまった頃を見計らって質素ながらも食事を用意すると、やはり不思議そうな顔をしながらも受け取ってくれた。



辿々しい動作で料理を口にすると、目を瞬かせながらまじまじと料理を凝視する。






『美味しい?』




言葉の意味が分からないのか、困ったように眉を顰めるが私の表情から何となく察してくれたのか何度も何度も頷いてくれた。



途端に空腹を思い出したように料理をかきこむと、時折むせながらも食べ終えた。



最後に出来立ての温かいスープを用意すると、味わうように目を閉じながら静かに涙を流していた。

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