鈴の音が鳴る方へ

ミカタリア

第1話 鈴の音は私を導く

 女子高に通う"御神凛花みかみ りんか"

容姿端麗で性格も明るく誰にでも優しく接しており

学校内でも人気を誇っていた彼女

凛とした佇まいで歩く姿は見たものを魅了するほどだった。


そんな彼女の密かに好きなことがある

それはバトル漫画や戦闘物のアニメだ

特に刀を持ったキャラクターが好きで憧れていた

近所の演劇の殺陣を専門にしている所に習いに行くほどだった。


「あ!りんかちゃーん!」


校門を出た先で後ろから誰かに呼ばれた

手を振りながらこちらに走ってくるのは

幼馴染の城金咲希しろがね さきだった。


「待ってよー!りんかちゃん!

今日は一緒に行くって約束したのになんで先に行っちゃうの!」

息を切らしながら下を向いて言った。


今日は週に三回通っている演劇教室の日であり彼女も同じく

演劇教室に通う生徒だった。


「遅いよ咲希ちゃん! 教室前で待っていたらクラスメイトからもう教室を出たと

聞いたから仕方なく一人で帰ってたのに!」


「だって今日、日直で日誌を職員室に持って行かないといけなくて

それで遅くなっちゃったんだよ!

(まぁ…今日遅刻した事で怒られていて長引いたんだけどさ…?)」

明後日の方を向いて小さく言い訳をしていた。


「それで遅くなっちゃんだね

 でも遅刻なんて今日に始まったことじゃないんじゃないの?」


「えっとですね…先日あと一回遅刻したら反省文を書かせると言われてましてー

 遅刻しないように気をつけよう!って思ってたんですけどぉ…

 早速初日に寝坊で遅刻して、それで余計に怒られてました…」


「あはは…咲希ちゃんらしいね…でも咲希ちゃんって昔から朝苦手だよねー

 中学の時は家まで迎えに行っていた時にいつもお母さんから

『まだ寝てるからちょっと待ってねー』と何回言われたこと…」


「だって だって!お布団ちゃんが離してくれないんだもん!」

自信を持って言っている咲希だが凛花はやれやれと肩をすぼめていた。


「ここで話していてもあれだからそろそろ行きましょ?」

そうして二人は演劇教室に向かうのであった。


「私はこっちの部屋だからまた終わったら一緒に帰ろうね!」


「うん、またね!りんかちゃん!」


凛花は殺陣専門コースで、咲希は演技専門コースで分かれている

二人は手を降ってそれぞれの部屋に向かった。



二時間後ーー



「お疲れ様!りんかちゃーん!こっちだよー!」

外で先に待っていた咲希が手を降っていた。


「お疲れ様だよー咲希ちゃん 前回私は休んでいたから

 久しぶりの稽古で疲れちゃったよ…あ、これどうぞ」

自販機で買ったチョコアイスを咲希に手渡した。


「えー!りんかちゃんありがとー!

 でもね私もりんかちゃんの為にアイス買っちゃったんだー!」

咲希はバニラアイスを凛花に手渡した。


なんとお互いにアイスを買っており

 二人の手には自分のを含め同じアイスが二つになってしまった。


「お互いアイスを買っちゃたから同じアイスが二つになっちゃったねー

 良かったら私のバニラと咲希ちゃんチョコ交換しない?」


「それいいねー!久しぶりにバニラ食べたいと思ってたところだったんだー!

 でも二つも食べれるかなー?」


お互いに一つアイスを交換して

近くの公園のベンチに座ってアイスを食べることにした。


夕暮れの少し暗くなってきた公園でアイスを食べながら二人は駄弁っていた。

たまに靡く風が心地よく感じた。


そろそろ帰ろうかと話していた時に

茂みの中から一匹の猫が二人の前に現れた。


その猫は白銀の毛並みで鈴が付いている首輪を付けていた。


「見てみて!りんかちゃん!猫ちゃんがいるよ!かわいいー!」


「毛並みも綺麗で可愛いねー!」


二人とも可愛い猫に興味津々だった。


「でもあの猫ちゃん首輪つけてるねー

何処かのお家の子かなー?迷子になっちゃったのかな?」


「ほんとだね!首輪に名前とか書いてるのかなー?」


そう話していると猫はこちらの目の前に歩いてきた。


「わぁ!猫ちゃんがこっちに来てるよ!!

 とことこ歩いて可愛いねー!」


名前や連絡先が書いていないか確認するために手を伸ばした

そして凛花が猫の首輪を触ろうとしたその時ーー



猫が身震いをして首輪に付いていた鈴が


    "ちりりん"と鳴った。



すると辺りは光に包まれ、気づけば二人は

知らない場所にいた。


先に目覚めたのは凛花だった。

辺りを見渡すが全てが真っ白の何もない世界だった。

そして振り返ると咲希が倒れていた。


「咲希ちゃん!大丈夫!?目を覚まして!」

凛花は焦ったように咲希の肩をゆすった。


「んんー?ここはどこぉ?」

寝起きの様に目を擦りながら辺りを見渡した。


「良かった!無事なんだね咲希ちゃん!」

心配していた凛花はほっとして落ち着いた。


「りんかちゃんおはよぉー

 ふあぁぁ…ってどこなのここ!?なんで真っ白!?」

ようやく自分が知らない場にいる事に気が付いた。


「咲希ちゃん落ち着いて!私たちどうやら知らない場所に

 来てしまったみたいなの・・・」

不安そうな表情で咲希に説明をする。


「えぇ!?そうなの!?確か私たち公園でアイスを食べてたところだったよね?

 それがどうなったらこうなるの!!」

理解が追い付かなく混乱してしまった。


「私たちあの“猫”に触れようとしたんだよね

 まさかそれが原因で…!?」

思い当たる節がそれしかなかった


「それじゃあこれは異世界転移ってやつ!?」

凛花と同じくアニメや漫画が好きな咲希は

少し驚いたように言った。


そう話していると目の前に白い霧が立ち込めた。


「そうこれは君たちの世界でいう異世界転移というものさ」

そう喋ったのはなんと先ほど公園で出会った猫だった。


「「えぇ!?猫ちゃんが喋った!?!?」」

二人とも同じリアクションをしてしまった。


「はは…君たちは本当に仲がよいのだね

 羨ましい限りだよ」

猫は二人を見てほほ笑んだ。


「そんなことよりここはどこなんですか?

 そして喋る猫ちゃんは何者なんですか?」

急に冷静になった凛花は猫に質問をした。


「おっと、これは失礼 まだ名乗っていなかったね

私の名は"エルフィ"世界の秩序を守るのが役目の

 君たちの世界でいう"神"の様な存在だ」


「エルちゃんは神様なの!?

 えー!凄い!私 神様に会っちゃたんだ!」

目を輝かせる咲希であった。


「エルちゃん?もう勝手にあだ名つけちゃって…

 ところでエルフィさん?質問があるんだけどいいかな?」


「なんだい?私が答えられる範囲でなら何でも答えようじゃないか」


「まずは、どうして私たちは異世界転移をしたの?

 それにここはどこなの?」

真剣な眼差しで質問をした。


「いいでしょう全てお話しましょう

 まずここへ連れてきたのは私の力で

 言わばここは精神世界とでも言っておきましょう

 ここに連れてきた理由は"世界を救って貰うため"

 この世界は君たちがいた世界とは全く異なったもので

 魔物がはびこる世界で人々はそれに対抗すべく

 剣や魔法を使って魔物と戦っていく世界である」


「つまり私たちは世界を救う為にここに呼ばれたんだね

 それで具体的には何をすればいいの?」

普段からアニメなどで展開が読めてしまっているためか

かなり淡々としている。


「話が早くて助かるよ、君たちにはこれから

 その世界で冒険者として魔物と戦い

 そして最終的に"邪神"と呼ばれる存在を倒してほしいのだ」


「その、邪神っていうのはエルちゃんでは倒せないのー?」

咲希は純粋な質問をした。


「本来であれば私が倒したい所だが訳があってそれができないのだよ

 詳しくは言えないが私自身が世界に干渉するのには限度があり

 今のように異世界からの人間を転移させることで精一杯なのだ」


「なるほど…(これはよくある異世界ものなのね…!)

 でも魔物と戦うと言っても私たちにそんな力ないですよ?

 どうやって戦えばいいんですか?」


「確かにーでもこういう場合は何か力が貰えるパターンじゃない!?」

咲希は前のめりになってエルフィに聞いた。


「察しがいい事だ

 今から異世界で戦うための"スキル"を私からプレゼントしよう

 だが悪いがこれも制約があり自分の中の潜在能力を格段に伸ばすスキルや

 それに関連したスキルを与えることしか出来ないが分かってほしい」


「潜在能力…?私はどんなスキルが貰えるのだろう?」

不安の気持ちもあったが今は正直ワクワクする気持ちが先だってしまっている。


「すまないがそろそろお別れの時間だ…

 スキルに関しては無効の世界に着いてから

 "ステータス"と心で唱えると見れるからそこで確認してほしい

 まだできていない話はまたいつかの機会に話そう

 勝手ではあるが世界をどうか救ってほしい」


そう言った直後に辺りはまた光に飲み込まれ

気付けば二人は森の中に座り込んでいた。


「これって夢じゃないんだよね?

 私たち本当に異世界に来ちゃったの!?」

少し嬉しそうに笑みを浮かべる凛花であった。


これから二人の世界を救う物語がはじまるのであった。



                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                            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