クラスの気になる女の娘(こ)!
崔 梨遙(再)
1話完結:1600字
僕は中学から女子と接点の無い暗黒時代を過ごしてきた。そして、高校に入ったが既に3年生。高校1年生の時の、僕の“高校時代に彼女を作る!”という決意も時間切れになりそうだった。季節は秋、というか冬。
「なあ、崔」
級友が声をかけてきた。
「なんや?」
「坂上、また男と別れたらしいぞ」
「マジ? あいつ、これで何人の男をふったんやろ?」
「それを言うなら、“これで何人の男と付き合ったんや?”やろ?」
「崔、坂上やったら付き合えるんとちゃうか?」
「付き合われへんわ、僕がふられる」
「チャレンジしてみろや、崔、以前に、“学校の少ない人数の女子の中で、しいて好みのタイプを言うなら坂上や”みたいなこと言ってたやろ?」
「それはそうやけど」
「ほな、坂上が“付き合ってくれ!”って言ったらどうする?」
「そんなん……付き合うに決まってるやんけ!」
「ほな、行けや! こういう時に行くのが崔やろ?」
「そんなん……行くっちゅうねん!」
僕はまず、坂上の隣に座った。坂上は少し驚いたようだったが、何も言わなかった。坂上は身長146センチ、小柄でかわいい、というか僕の好みだ。だが、体育の時に、坂上は結構胸があることはチェック済みだった。坂上が無言なので(そりゃそうか、いきなり隣に座られてもね)、僕の方から話しかけた。共通の話題として、“好きなバンドの話”を選んだ。僕はバンドには詳しいという自信があった。マニアックなバンドまで知っている。坂上が好きなバンドは、マニアックな京都のバンドだった。僕はCD(アルバム)を3枚持っていた。
「好きやねんけど、あんまりCD売ってへんねん」
「ああ、小さな店では売ってへんねん、僕、アルバム3枚持ってるからあげるわ」
翌日。
「はい、あげる。感想を聞きたいから、休み時間にでも聞いてや」
その頃、坂上は女子の中では浮いていて、1人で休憩時間を過ごすことが多かった。僕は、コンパクトなCDプレイヤーも渡した。
「この曲、好きかも」
「なんて曲?」
「〇〇〇〇」
「ああ、サビが〇〇〇〇~♪の曲やな、僕も好きな曲やわ」
これは? もしかして、親しくなってるんじゃないのー?
「崔、帰ろうや」
「ええけど、僕、今日は寄り道するで」
「何を買うん?」
「坂上へのプレゼント」
そう! 僕は貢ぐことにしたのだ。僕のいた高校は苦学生も多い、裕福な家庭は少ない。僕の家も裕福ではない。しかし、僕はずっとバイトをしていた。他の学生(ライバル)と比べ、小遣いには困っていない。
級友に付き合って貰い、坂上が某漫画家の大ファンだと聞いたので、某漫画の主人公がプリントされたトレーナーを買って、翌日、坂上に渡した。坂上は流石に驚き、
「高かったやろ? これを受け取るのは申し訳無いわ」
と言ったが、
「受け取ってもらわな困る。サイズが合わないから、僕は着られへん」
と言ったので、気を遣わせてしまったが受け取ってもらえた。時間が無いのだ。クリスマスが近い! 僕は仏教徒だが、このイベントを外すことは出来ない。
終業式、僕は坂上に小箱を渡した。坂上が開けると、箱の中にはネックレス!
「何? これ」
「クリスマスプレゼント」
「まだクリスマスちゃうやんか」
「クリスマスは学校で渡されへんから、早めに!」
「これは流石に受け取ることは出来へんわ」
「なんで?」
「彼氏でもないのに」
「ほな、僕を彼氏にしてや」
「それは出来へんわ」
「なんで?」
「崔君はなぁ……好みのタイプとちゃうねん」
僕は気絶しそうになったが耐えた。
「わかった。でも、ネックレスは受け取ってや。坂上に渡そうと思って買ったから」
「わかった……ありがとう」
僕はカバンを担いで教室を出た。
「崔!」
「今は何も言わんといてくれ!」
まだだ、泣くのはまだ早い。泣くのは自宅の布団に潜り込んでからだ。
やっぱり、高校を卒業するまでは暗黒時代だった。思い出したくないのに、どうしてだか忘れることが出来ない。
クラスの気になる女の娘(こ)! 崔 梨遙(再) @sairiyousai
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