1-2 迷い人の行き先 2
魔法の扱いを確認して、それ以外の魔法も彼の知っているものと同じようで、他の魔法を試しても、同じように水、土、風が手元で作られていた。試しに発動した魔法を解除すると、全て粒子に戻っていく。それ以外には属性はないようで、完全に彼の知識と同じ魔法の仕組みをとっているようだった。
そして、魔法だけではなく、彼はもう一つ自覚しているものがあった。それは超能力だ。彼は自身の超能力を試してみる。彼がこの世界に来る前に持っていた超能力はあらゆる武器を創造することができる超能力であった。武器と入っているが、盾なども作ることができることから、戦闘で身を守るものも作れるのかもしれない。彼はまだ盾を創造することしかしておらず、鎧などは作ったことはないし、これからも作ることはないだろう。魔法のある世界でただの鎧を身に着けていても、相手の魔法を回避できないだけで、被害の方が大きくなると考えていた。そして、あらゆる武器と言っているが、創造する武器の構造を理解していなければならず、銃のような複雑なものは作成できない。彼が作ることができる複雑な武器といえば、ボウガンくらいのもので、それ以上に行動な武器を作ることはできていなかった。
彼はとりあえず、この森の中で万が一、戦闘を開始してもすぐに対応できるように片手で持てる剣と盾を創造しようと、手元にそれらを想像する。彼の右手に剣が創造されて、左手には彼の手首からひじ辺りまでの直径を持つ丸い盾が出現していた。それを握り、彼は剣を軽く振るった。作り出した剣も彼の創造しようとしたもの通りのもので、感覚も変わっていないように感じる。そのまま、彼はそこらにある草に向けて、剣を振るってみると、草は切れて、切れた破片が地面に落ちた。今手に持っている武器があれば、前と同じように戦闘を行うことはできそうだった。
彼は自身の体や魔法、超能力を確かめ終わると、どこに進むべきかと周りを見渡す。だが、先ほど見た時と同じで、情報が増えることはなかった。
周りは穏やかに見えるが、森の中である以上は魔獣を警戒するべきだろう。この周囲の見た目ではあるが、強い魔獣がいるかどうかも全くわからないのだ。彼はその穏やな森の中を警戒しながらゆっくりと進む。どんな魔獣がいつ襲ってくるかもわからないのだ。警戒せずに、魔獣にやられて死んでしまうなんてことになれば笑えないだろう。
彼は森の中をしばらく進むと、森から出られそうな場所を見つけた。木々の密度が薄く、その先は草原のようになっているように見えた。彼はとりあえず、森から出宇ることにした。森の中でも明るいとはいえ、草原などの見渡しやすい場所でない以上は、不意打ちを食らう可能性があるのだ。草原であれば、近づいてくるものは敵でも味方でも発見できるだろう。見えないのは地面から来るものくらいなものだが、それは草原でなくとも同じことである。
そうして、森の外に出ようと思ったのだが、今の今まで彼の進行方向には草木が茂って歩く邪魔をしていたのだが、森から出る少し手前で誰かがその場所を通過したように草がかき分けられているのを発見した。森の中に自分以外の誰かがいるのかもしれないと思ったが、自身の知り合いであるはずもないし、森の中に入るということは、それなりに自衛の手段が何かを持っているはずだと考えていた。彼はそれに付いてはそれ以上気にしても意味のないことだと思い、そのまま森を出た。
森を出ると、そこは草原であった。森を背後にしてそこそこ見渡すことができるくらいには広い草原で、その草原には魔獣のようなものが徘徊しているようだった。それがいる場所は彼から離れているため、彼に気が付くこともなく、草原を歩いている。彼が発見した魔獣は森の中に入っていくと、草木によって見えなくなった。その魔獣も小型の犬のような見た目で、強そうには見えなかった。討伐する必要もなさそうなくらいには弱そうである。彼はその魔獣が去っていた場所から視線を外して、他に何かないかと辺りを見回してみる。
すると、森の沿うように何か建物が集まっている場所があった。その建物が今も使われているのかはわからないが、そこに言葉の通じる人がいればいいなと思いながらその建物が集まっている場所に移動することにした。彼のいる位置からはすぐ着くというような距離ではないように見える。走ってもそこそこ時間がかかるだろう。だが、森に沿って移動すれば、その建物が見えなくなることもないはずだ。
彼は森の中から魔獣が出てくるかもしれないと警戒はしつつ、のどかな雰囲気に充てられて多少油断も交じり、村の方へと歩き出した。
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