友達
小智塚乃々
第1話 ヨシヒコ
友達が欲しいだけ。友達が欲しいだけなんです。友達が。
ただ欲しいだけなんです。友達がほしい。一人でいるとなぜか辛いんです。辛い時はいつも一人でいるだけかもしれません。どうなんでしょうか。
願っていると友達ができた。
よしひこくんだ。よしひこくんは遠い街でヘリコプターを操縦しているらしい。
「よしひこくん、こんにちは」
「こんにちは。今日は何してるの?」
「なんにもしなかったよ」
「何にもしないってことはないでしょう。なにしてるの?」
「今日は本を読んだよ。本の作者を感じるくらい丁寧に読んだつもりさ」
僕はヨシヒコに赤い本を見せる。この赤みは絨毯の赤みで温かみがある。血の色だ。
「本はどうだった?」
「本はね。面白かったよ。内容というより、本から感じた人が面白かったんだ。」
「本から人を感じるとどうなんだい?」
「本から人を感じるとね温かいんだ。人が近くにいなくても暖かい。人が近くにいなくても暖かいんだよ。」
ヨシヒコはこう返す。
「人が近くにいるのはダメなの?」
僕は返す。
「人が近くにいてくれたらそれはいいことだよ。でもね僕の近くには誰もいないんだ。僕が遠ざけてるんだ。でも離れていても本から感じるよ。」
「そうか。面白かったよ。じゃあ帰るね。」
ヨシヒコはヘリコプターに乗って帰った。遠い街へかえった。夕暮れどき、水平線の彼方で黄色くひかる雲に向かってヘリコプターは飛んでゆく。ヨシヒコとはもう会えないと思う。僕はまた一人友達がいなくなった。僕の明日はどうなるだろうか。
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