一角獣のため息

根ヶ地部 皆人

一角獣のため息

 平々凡々たる馬が嘆く。

 俺に角があったなら、あらがうすべがあるならば、人間どもにまたがられ、たれて駆けることもなかろうに。


 二本角の牛が嘆く。

 俺の角がもっと鋭く、そして長くあるのなら、人間どもに飼いならされたり、取って食われることもなかろうに。


 三本角の龍が嘆く。

 俺の角がもっと軽く、しなやかで強靭だったなら、天から降る星を受け止め跳ね返し、同胞たちを守ったろうに。


 一本角の獣が

 一本角の化物けもの

 いっぽんづののけものが

 いっぽんづの のけもの が


 嘆息たんそく

 嘲笑あざわら

 また嘆息して

 夢の奥

 嘘偽うそいつわりの果て

 紗幕しゃまくかげの向こうから

 ああそれでもおまえたちは、と恨めしげにいなないた。

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一角獣のため息 根ヶ地部 皆人 @Kikyo_Futaba

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