第73話

用事があるからと、一之瀬組に着くなり無名は出掛けてしまった。



その姿を名残惜しく見送りながら、心細くも時雨の待つ部屋へと向かう。



襖に手を掛けながらも、開けることを何度も躊躇した。



それでも、大きく息を吸い込み勇気を振り絞って開く。






ーーすると、予想とは違った光景がそこに広がっていた。





規則正しく聞こえてくる寝息。



そっと閉じられた瞳。



眉間に寄せられたシワ。




どうやら、寝ているようだった。





気配を消しながらそっと近づく。



蹲み込んで、その寝顔を眺める。



同い年なのに、大人びて感じることが多いが、こうして見るとあどけなくも見える。



眉間の寄せられたシワに触れる。



寝苦しいのか、それとも癖になっているのか。



年を取ったら残ってしまうかもしれない。



せっかく綺麗な顔をしているのにと残念がっていると、何の前触れもなくその瞳が開かれた。

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