第45話





ただでさえ免疫力の低い人間が、付きっきりで病人の看病をしていたらどうなるかなど、考えなくても分かるだろう。


移した無名はすっかり本調子に戻り、逆に移された私はというと、40度近い高熱を出して寝込んでしまっている。



意識が朦朧とする中、私の顔を覗き込んだ無名の顔が忘れられない。



酷く申し訳なさそうで、それでいて心優しい無名は不可抗力ながらも私に病気を移してしまったことに傷付いてるようだった。



何度も何度も謝罪する無名に、〝大丈夫だよ〟と〝気にしないで〟と一言でもいいから声を掛けてあげたかったのに。



今の私には、握られた手を握り返すだけの力も残ってはいなかった。

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